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紙ペットとお年玉発掘大作戦

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紙ペットとお年玉発掘大作戦

リアクション

「逃げますよ、ヌイ!」
「こわいのやだデス! にげるデス!」
 今井卓也とヌイ・トスプは予想以上の速さで前進するチョクシンガニから逃げる。
 ヌイ・トスプの腕の中には紙狼のメイが抱かれている。
「……逃げきれませんね……。仕方ないですね、迎えうちます!」
 今井卓也は、ヌイ・トスプを庇うように立ってメイスを構えた。巨大なチョクシンガニが迫りつつある。
「メイをいじめちゃダメなのデス!」
 ヌイ・トスプはメイをぎゅっと抱きしめて護る。しかしその茶色の瞳は涙にぬれ、今井卓也の背に隠れて震えている。
 さらに【隠れ身】を使用して固まっている。
「くっ……」
 チョクシンガニはハサミを振り動かし、二人に迫る――。
 瞬間、巨大チョクシンガニに【氷術】と【アシッドミスト】が炸裂。
「大丈夫か?」
「怪我はありませんか?」
 魔法を放ち、駆け寄ってきたのは本郷涼介と沢渡真言。
 更に二人のパートナーであるクレア・ワイズマンとティティナ・アリセが【爆炎波】と【至れり尽くせり】で畳みかける。
 チョクシンガニは、ひっくり返って動かなくなった。
「ありがとうございます。助かりました」
 今井卓也達は頭を下げた。二人を助けた四人は微笑んだ。
「無事で何よりです」
「さて、折角だし、接触させようぜ」
 本郷涼介の呼び掛けに応じ、紙ペット達がふれあう。一際まぶしい光が、三匹を包んだ。
「ゥオオオォン!」
 紙狼が走りだし、小石の近くを掘る仕草を始めた。
「ここほるデス!」
 一個目を掘り返した今井卓也に倣い、ヌイ・トスプがせっせと土を掘り返す。
 木製の宝箱が姿を現した。
「卓也、おとし玉デス!」
 嬉しそうに手渡され、今井卓也はこくりと頷き宝箱を開けた。
 中には、狼のぬいぐるみが入っていた。
「そっちも、見つけたんだな」
「私達も見つけましたよ」
 本郷涼介と沢渡真言が、二人に駆け寄る。
「いただきましたわ」
「私も貰ったよ!」
 ティティナ・アリセとクレア・ワイズマンが得た宝を掲げる。二人が得たのは猫の人形と、鉄製の盾だった。

「ふぅ……なんとか戦闘は避けられたな」
「一時はどうなることかと思ったわ」
 高月芳樹とアメリア・ストークスは荒い息を整えつつ紙隼を見上げる。
 アメリア・ストークスの【隠れ身】は効果が切れかかっている。
 ちょうど宝箱を掘り返した直後に、チョクシンガニを発見し、逃げてきたところだった。
「宝箱を開ける暇もなかったぜ」
「本当。ね、開けてみましょうよ」
「そうだな」
 小脇に抱えていた宝箱を、高月芳樹が両手に持つ……その瞬間、宝が攫われていった。
「え……?」
「貰っちゃうよ!」
 カリート・バルバロッサが【隠れ身】の効果を切らし、紙トカゲを頭に乗せた姿を現した。即座に身を翻し、去っていく。
「待っ――」
「……命令を遂行する」
 追いかけようとした二人の目前に、コートを着たゲーリー・サルヴァトーレが立ちはだかる。
 黒い拳を二人に突き出した。
「おっと!」
「危ないっ!」
 力強い拳は、高月芳樹達に避けられ空を切る。
「戦うしかないか……!」
 高月芳樹とアメリア・ストークスはアーミーショットガンとライトブレードをそれぞれ構え、攻撃を繰り出そうとした。
「もういいよ、ゲイル!」
 と、どこからかカリート・バルバロッサの声。
「……任務完了」
 ゲーリー・サルヴァトーレは上げかけた拳を下げ、くるりと身を翻した。
「……仕方ないか」
「紙隼を、誰かと接触させないといけないわね……」
 二人は奪われた宝を諦め、歩きだした。

「ふふっ、この調子で二つめ狙っちゃおうじゃん」
 紙トカゲを撫でたカリート・バルバロッサは、周囲に視線を走らせる。その黒い瞳は、一組のカップルを捉えた。
「次は、あの二人かな」
「今掘り出します!」
「ありがとう大和」
 遠野歌菜の輝く笑みに応え、譲葉大和が紙狼の示す場所を掘る。木製の宝箱はすぐに姿を現した。彼女に宝箱を渡す譲葉大和の肩に、紙鷹が下りてきた。
「? どうしたんです?」
 紙鷹は一声鳴いて、【隠れ身】を使用し近付いてくるカリート・バルバロッサに、鋭い爪を突き付けた。
「痛っ!」
 隠れていたカリート・バルバロッサが姿を現した。遠野歌菜と譲葉大和の冷たい笑みが、彼に向けられる。
「邪魔する人には、キツクお仕置きです!」
 遠野歌菜はハルバードを構える。
「っ! ゲイル!」
「……命令を遂行する」
 カリート・バルバロッサに応じ、ゲーリー・サルヴァトーレが向かってきた。
「手加減しませんよっ」
 遠野歌菜はゲーリー・サルヴァトーレに向かい、ハルバードを振り上げた。
「貫け! エルヴィッシュスティンガー!」
「……!」
 エルフの一突き……【ヒロイックアサルト】の「エルヴィッシュスティンガー」により、激痛と麻痺がロボットの体に走る。
「反省、してくださいね?」
 輝くような笑みで、遠野歌菜がハルバードを突き付けた。その背後で譲葉大和がカリート・バルバロッサと対峙していた。
「ふふふ、歌菜との一時を邪魔した罪、どう裁きましょうかねぇ?」
 試作型星槍を片手に持ったまま、譲葉大和は眼鏡を外した。
 同時に【鬼眼】が発動。悪とは違う、純粋な怒りと痛めつけることの喜びに満ちた瞳が向けられる。
 味わったことのない恐怖に、カリート・バルバロッサは後退した。
「げ、ゲーリー、逃げちゃおうか……?」
 問いかけたその時には、カリート・バルバロッサが尻尾をまいて逃げて行った。
「……了解した」
 ゲーリー・サルヴァトーレは、まだ痺れている体を引きずりながら彼を追いかけた。
「おやおや、口ほどにもありませんねぇ?」
 譲葉大和は眼鏡をかけなおし、遠野歌菜に笑みを向けた。
「もっとオシオキすればよかったかな?」
「それより先程手に入れた宝を是非、開けてみてください」
「うん!」
 遠野歌菜は宝箱を開く。その中には銀の銃が入っていた。
「わ、すごい!」
 彼女の喜びの笑みに、譲葉大和も笑顔になった。
 喜ぶ二人を背に、カリート・バルバロッサが肩を落として歩く。
「……普通に宝探しするかー」
 煙草をふかしながら紙トカゲを放る。
「ゲイル、行く――あれ、ゲイル?」
「帰る」
 宝箱を片手に、ゲーリー・サルヴァトーレが身を翻した。
「っ、おい!」
 呼びかけにも応じない。仕方なく紙トカゲを振り返ると、紙トカゲは尾で地面を叩いていた……。