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【学校紹介】李梅琳式ブートキャンプ

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第四章:長い戦いの終わりに

 一夜が明けたシャンバラ大荒野をサイオニックの玉風 やませ(たまかぜ・やませ)とソルジャーの東風谷 白虎(こちや・びゃっこ)が小高い丘の上から見下ろしている。
 ホークアイを使って訓練の様子を見守っていたやませが、手にもったあんぱんをかじる。
「教導団の新人訓練だというから見学しに来たが……拍子抜けだな」
 やませの隣に立つ白虎がポツリと呟く。
「え〜、じゃあ何で一緒に来たのよ〜(もぐもぐ)」
「やませ一人で見学に行かせるのは、何となく不安だったんだ。昨日も、在校生と間違われて戦闘を仕掛けられただろう?」
「大丈夫だよ〜。イザとなったらサイコキネシスで戦えばいいんだし〜(もぐもぐ)」
 やませを冷ややかに見つめる白虎。
「メロンパンやあんぱんをリロードしている時だったらどうする?」
「う〜、それは困るかも〜(もぐもぐ)」
 相変わらずあんぱんを食べ続けるやませに、深い溜息をつく白虎。
 ごっくんとあんぱんを飲み込んだやませが、うーんと伸びをする。
「一通り見学もしましたし、少しオアシスで休んでから帰りましょうか〜」
「オアシスがどこにあるのか知っているのか?」
「……知らない〜」
 ガクリと肩を落とすやませの横で、白虎が素早くシャンバラ大荒野の地図を開いた、まさにその時、彼らが立つ丘のふもとで在校生と新入生の戦闘が始まり、爆音と共に丘が少し揺れ出す。
「おおお〜!?」
 バランスを崩すやませを、地図でオアシスの場所を指でやませに示した白虎が引きずっていくのであった。


 シャンバラ大荒野を用心しながら進む亜衣達の一団の中にレオンはいた。
 地平線に下がりかけた太陽を見て、レオンが溜息を漏らす。
「もうすぐ、訓練も終了だな……結局オレは腕輪一個も取れてないよなぁ」
「レオン、油断しちゃ駄目よ? こういう時が一番危険なんだから?」
 キリリとした顔でそう言うのは先頭をきって歩く亜衣である。
「でも、同時にチャンスでもあるよ、お姉ちゃん?」
 そう言って亜衣に笑うのは双子の妹である麻衣である。
「そうそう、赤い腕輪なら二つ集めればいいんだし……」
「同じ事考えて、私達が持ってる腕輪を狙う在校生がいるって考えられない、美悠?」
 会話をする彼女達の上空にいた幻舟が滑空してくる。
「亜衣殿」
「何? おばあちゃん?」
「前方に在校生を発見しましたのですじゃ!」
「一人?」
「うむ……ですが……」
「チャンスよ! 亜衣!」
 亜衣に元気よく駆け寄った麗夢が言う。
「腕輪奪えるチャンスよ! ホラ、赤い腕輪なら亜衣はもう一つで訓練終了じゃない?」
「私が訓練終わったら、この一団誰がリーダーシップとるのよ……」
 亜衣がジト目で麗夢を見る。
 レオンと黒龍が合流する前は、女性同士で5名のパーティであったため、リーダー役の亜衣は相当苦労をしたらしいという事を、無言で歩く黒龍は薄々感じ取っていた。
「とにかく、腕輪取るわよ! 亜衣、レオン、行くわよ〜!!」
「バカ、ちょっと待ってよ!!」
 駆け出す麗夢を追い出す亜衣。


「……あんたかい」
 亜衣が先程までとは違う疲れた顔で肩を落とす。
「わー、金平糖に、チョコレートもあるー!」
 テンションが上がる麗夢の前に商品を並べて商売をしているのは、ナイトのハインリヒ・ヴェーゼル(はいんりひ・う゛ぇーぜる)であった。
「よく、この暑さでチョコレートが溶けないもんだな」
 シゲシゲと目の前の商品を見ていたレオンが手を伸ばすと、素早くハインリヒがその手を払いのける。
「レオン殿、わたくしは女生徒専門の商売人でございます」
「何ぃー!! お金なら払うぜ?」
 ノンノンと、指を振るハインリヒ。
「代金は女生徒の携帯番号とメアドで、承っております」
 そういったハインリヒがチラリと亜衣を見て、
「一応、お前も新入生で女子生徒だからな……特別に……」
「私いらない」
 プイとそっぽを向く亜衣。
「損な性格だな、お前も……」
「みんな、さっさと行こう! ハインリヒは腕輪持ってないから」
「でもお姉ちゃん、疲れた時の甘い物ってすっごく魅力的だと思わない?」
「麻衣? あんたねぇ……もういい、私、先に行くよ!」
 そう言って一人歩き出す亜衣。
「おい、単独行動は危険だって言ったろ?」
 ハインリヒがそう言うも亜衣は聞く耳を持たない。
 亜衣とハインリヒのやりとりに一同が苦笑する中、レオンの傍を一筋の風が通りすぎていく。
 ハッとした顔のレオンが亜衣に叫ぶ。
「亜衣!! ヤバい、戻れ!!」
「え……?」
 振り向く亜衣の目の前に、バーストダッシュで接近してきたセイバーの中原 一徒(なかはら・かずと)が突然現れる。
「一人になるのを待ってたんだ! やるしかないぜ!」
 一徒の黒い瞳がギラリと光り、フランキスカが振り下ろされる。
「くっ!!」
 一徒の一撃目をホーリーメイスで受け止める亜衣。
 だが、腕力にモノを言わせた一徒の一撃は、亜衣のホーリーメイスを弾き飛ばす。
「しまっ……!?」
 亜衣には一徒の一挙一動が、不気味なスローモーションに見えていた。もちろん、一徒がソニックブレードの態勢に入った事も……。
「オラァァァッ!!」

――ズッシャァァァーーッ!!

間近で一徒のソニックブレードを受けた亜衣が荒野に吹き飛ばされ、転がっていく。
「お姉ちゃん!!」
「亜衣!!」
「亜衣殿!!」
 皆が一斉に声を上げた時には、既に亜衣の喉元には一徒のフランキスカが突きつけられていた。
「あんたら、動くなよ? 訓練とはいえ、これは戦争なんだぜ? 戦場ではこいつはもう死体なんだ。それを助けるってのはおかしいぜ?」
 そう言いながら、倒れた亜衣の腕輪を取ろうとする。
「ま、待て……」
 途切れ途切れの意識の中で亜衣が自分の持つ腕輪を手で抑える。
「あんた、まだ動けるのか? 新入生なのに大した精神力だぜ」
「ま……だ、負け、るか……」
「残念ながらあんたの負けだよ。もうちょっと用心深く行動すべきだったな」
 そう言いながら一徒は亜衣の手をどけて、亜衣の腕に付けられていた赤い腕輪と青い腕輪を取る。
「うしっ! これで、俺も訓練クリアだぜ!!」
 立ち上がり思わずガッツポーズをする一徒を、レオン達はただ見守るしか出来なかった。