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【サルヴィン川花火大会】花火師募集!?

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【サルヴィン川花火大会】花火師募集!?

リアクション

「ドーン、ドーン、たまやぁ〜、すごいですぅ〜」
 次々と上がる花火に、彩華が声を上げる。
 そこで一際大きな七色の花火が上がった。
「これからみんなで大きくなるって想いね」
 己が作った花火を見て、彩羽がそう口にする。
(……せいぜい楽しむといいわ、私は彩華を壊したあなた達を許さないわ)
 けれど、同時にそんなことも思っていた。
「彩羽〜、すごいですよ〜」
 大きな七色の花火に、両手を挙げて喜ぶ彩華に、彼女は「そうね」と微笑む。
「さすが……皆さん……花火が……凝っていますね……色々と豊富です」
 紺の無地の浴衣に灰色の角帯を締めた紫翠は、次々と上がる花火を微笑みながら見ている。
 そうしているうちに、彼が作った赤い花が夜空を彩った。
「夏の風物詩だな。一瞬で、終わるから、物足りない気分になるがな」
 シェイドはその花火を見ながら、ぽつりと呟く。
「綺麗ですね。儚いものほど、一瞬が、綺麗なんですよね……」
 瑠架も同意するよう、頷きながら言うけれど、彼の視線は花火から少し視線を下ろした先――浴衣を着る他の者へと注がれていた。
(着てみたいけど、似合わないんだろうな〜)
 そう思いながら、息を吐く。
「まだ着るチャンスあれば、良いが。後悔していると夏終わるぞ」
 彼の様子に気付いたシェイドが、耳元で囁きかけた。
「そうだね。機会があれば……」
「二人共……どうしました?」
 こそこそと話している2人に気付いた紫翠が訊ねる。
「何でもないです」
 微笑む瑠架に、それならいいけれど……と紫翠は呟き。
「花火とかの……人の賑わいは……好きな方ですね……欠点は……混んで動けないですけどね」
 改めて辺りを見回して、紫翠はぼやいた。
「花火……大会……ですか。なるほど……だから楽しそうだったのですね」
 数日ほど、晶から置いてけぼりを喰らってしまっていた高木 眞子(たかぎ・まこ)は、晶から時間と場所を聞き、訪れてみて、驚いていた。
「眞子、こっちだよ」
 浴衣姿の晶が、手を上げて眞子を呼ぶ。打ち上げられる花火の合間に、それを聞いた眞子は、晶の姿を見つけると駆け寄った。
「浴衣、似合ってますね」
 日ごろから和服を纏うことの多い晶だが、浴衣はまた違うもので、眞子は気づくとそう声を掛ける。
「……ありがとう」
 照れながら、晶は花火が見易い位置に行こうと、眞子の手を引いた。
 先ほどから花火師体験をした者たちの花火が上がっている。
 夜空に描かれるのは、彼らがデザインした模様やメッセージだ。
『ダイスキ』
 短くその一言が打ち上げられると晶は、そっと目を伏せた。恥ずかしさに頬が熱くなっているのが分かる。
「晶?」
 不思議そうに首を傾げる眞子は「あ……」と小さく声を漏らした。タイミングと晶の様子で感づいたのだ。
「眞子もです」
 短く答えると、晶が顔を上げる。
「また来年も一緒に来たい」
「ええ、一緒に来ましょう」
 告げられたその言葉に、眞子は大きく頷いた。
 黒いコートを羽織り、顔をストッキングで覆った天代。
 彼女の周りは、辺りが人ごみだというのに、空いていた。
 いつ通報されるかも分からない恐怖を抱きながら、自分の作った花火が上がるのを待っていた。
 1つ、また1つと上がっていく花火をじっと見つめていると、『カノッサ』という文字が夜空に花開く。
「我輩はカノッサの代行者ッ!」
 上がった花火を見つけると同時に、天代は叫んだ。
 周りの観客たちが何事かと彼女を見る。
 その視線にも動じずに、天代は花火を見続けた。