校長室
伝説の焼きそばパンをゲットせよ!
リアクション公開中!
風紀委員の個別注意第1号になったのは、空から飛び込んでこようとしたライカ・フィーニス(らいか・ふぃーにす)だ。彼女は新しい外食屋を訪れる目的で飛んでいたのだが、どこをどう間違えたのか、蒼空学園上空まで来てしまった。そこで購買部の人ごみを目にする。 「そういえば、伝説の焼きそばパンが入荷するってお知らせをイルミンで見たような……?」 ピーン!と彼女のアホ毛が反応する。 「ヒャッハー! 焼きそばパン争奪戦だぁー!」 空から購買部に飛び込もうとしたところを、花京院 秋羽(かきょういん・あきは)と滝川 洋介(たきがわ・ようすけ)につかまった。 「何するんだよ!」 ライカ・フィーニス(らいか・ふぃーにす)は逃げ出そうとするものの、ガッチリ両脇を抱えられて動けない。しかも風紀委員の腕章を見て『まずいじゃん』と大人しくなった。 「あんまり無茶したらダメですよ……ケガをしたら、どうするんですか?」 ティラミス・ノクターン(てぃらみす・のくたーん)に言われて、ライカはシュンとなる。 「……はーい」 花京院 秋羽(かきょういん・あきは)と滝川 洋介(たきがわ・ようすけ)が手を離すと、ライカ・フィーニス(らいか・ふぃーにす)は、気を取り直して購買部に駆け出していった。 「今のところ買い占めたり、買えた人からヒャッハーする人はいないようだな」 不正をする人から横取りするアテが外れつつある花京院 秋羽(かきょういん・あきは)が、小さくため息をつく。{SFL0038962#ティラミス・ノクターン(てぃらみす・のくたーん)}のおねだりセリフやうるうる瞳の出番もなかった。 「オレ達がいるだけでも、多少は抑えになってるんだろうね」 誇らしげに滝川 洋介(たきがわ・ようすけ)が胸を張る。しかし洋介もパートナーの源 静(みなもとの・しずか)の姿を探して、視線をアチコチうごかしていた。 『焼きそばパンを買えてれば良いんだけど』 「燃えてきたぞ!」 桜葉 忍(さくらば・しのぶ)と共に突っ込んできた織田 信長(おだ・のぶなが)は、一進一退の攻防を経て次第に短気の虫が顔を覗かせてきた。 「ええい! もう我慢できん!」 スキルフォースフィールドを発動させると、その勢いのまま前方に突き進んでいく。 「おい、信長、さすがにまずいって」 忍は止めようとしたが、信長は聴く耳を持たなかった。 「知らぬ! 私はただ進んでいるだけだ」 しかしあっと言う間に、風紀委員に囲まれる。 「だめよ、あまり乱暴なことをしては」 リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)と中原 鞆絵(なかはら・ともえ)が信長の前方を通せんぼする。鞆絵の心配をよそに、リカは真面目に風紀委員の務めを果たしていた。 「争奪戦とは言え、強引すぎるのは禁止ですぅ」 ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)のフォローを得たレティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)が、ワイヤークローで後ろから信長をけん制する。 「うるさい! 私の行動に口出しするな!」 少し遅れて新風 燕馬(にいかぜ・えんま)とサツキ・シャルフリヒター(さつき・しゃるふりひたー)が到着する。 「危険な行動は止めてください!」 燕馬も懸命に信長を制止する。しかしその顔が引きつっていることは、パートナーのサツキにも明らかだった。 『ここにきて燕馬もようやく認識が甘かったことに気付いたようですね。しかしやるからには逃げてはいけませんよ。逃げたら失格です』 サツキはクールな表情を保ったまま、燕馬の引きつった顔の変化を楽しんだ。 『このまま気付かなかったことにしましょう。優しいですね。私』 さすがに風紀委員6人に囲まれては、信長もなす術がない。 「ええい! ここまで来て!」 わずかな隙を見つけると、包囲を破って逃げ出した。 「俺が!」と新風 燕馬(にいかぜ・えんま)が後を追う。そんな燕馬の背中を、サツキが頼もしげに見る。 『燕馬、頑張りますね。今日一日で、随分と成長できたのかもしれません。私の眼力は間違っていなかったのですね』 契約した理由を思い出して、サツキの胸の鼓動がわずかに早くなった。 「買った人からヒャッハーする人は出てこないですね」 黒木 カフカ(くろき・かふか)は、油断無く見張りながらつぶやいた。花京院 秋羽同様、不当な手段を行使する者がいれば、どさくさにまぎれて自分が奪って食べてしまおうと考えていただけに、期待を裏切られた格好だ。 「そんな人がいたら、あたし達がただじゃおかないですぅ」 レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)が言い切ると、その横でミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)も小さく笑う。 「今のところ、過激な行動に出る者は、ごく少ないですね。山葉校長の威光でしょうか」 「えー! あたし達が頑張ってるからだよぉ」 レティシアが不満そうな顔をすると、ミスティは「そうね」と笑う。 「でもホントはあたしも焼きそばパン食べたかったなぁ。ね、カフカさんは?」 「あ、うん……僕も興味はあった……かな」 自分の目論見を見透かされたような気がして、カフカは目をそらした。 「あの辺り危ないかも。ちょっと行ってくるね」 硬直した状況が続いていたが、時間が経つにつれ、1人、2人と伝説の焼きそばパンを手にする者が現れてきた。