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リアクション
プロローグ
「お待たせしました」
「いえ、俺も今来たところです」
「本当ですか? よかったー」
アーケード街の入り口に設置されたねずみ色の時計台はデートを楽しむカップル、もしくはカップル未満の男女にとって随一の待ち合わせスポットになっている。
木の葉を隠すには森の中、パラミタ中に名を轟かす卜部 泪(うらべ・るい)の登場に気づく者は案外多くなかった。
「今日はお話があるんでしたよね」
「はい。相談したいことがあるんです」
うららかな泪の笑顔を独占しているのは紫月 唯斗(しづき・ゆいと)。男性諸氏の嫉妬の風に曝される可能性も恐れず、その笑顔に応じる。
「ここじゃなんなので、どこか行きませんか?」
「はい。ふふ、どこに連れて行ってくれるか楽しみです」
「はは、精々楽しんでもらえるよう頑張ります」
向かい合った立ち位置から横並びに隊形を変え、泪と唯斗は活気溢れるアーケード街へと消えていった。
さて時計台を取り囲むよう植木の陰から複数人のキラキラとした目が覗く。
まずは2人を尾行。そののち雰囲気のいいお店へ誘導。最終的にはレストランでロマンティックなムードを演出。それが作戦だった。うまくいくのは間違いない、という自信が何故か各々の中に湧き上がっていた。
しかし問屋はそうは卸さない。生徒たちの輪の中には耽々と蛇の目で反覆を狙っている者もいるようだ。
果たしてどうなることやら……。
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