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突撃! パラミタの晩ごはん

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突撃! パラミタの晩ごはん

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 少し遅れて。
 芦原郁乃と秋月桃花が、簀立て漁でゲットした大量の海の幸を携えて蒼空学園に向かっていた。
「んー、大漁ですねえ」
 桃花が、郁乃の背中に向けて、嬉しそうに言った。
「そりゃもう」
 郁乃も自慢げだ。
 実際、簾立ての仕掛けに掛かった大小様々の魚を、嬉々として捕獲していく郁乃の姿は、簾立て職人の面目躍如という大活躍だった。
 ……これこそ、適材適所。
 これを学園に届ければ、皆きっと喜んでくれるに違いない。
 素材確保を成し遂げたという意味でも、郁乃の料理を回避したと言う意味でも。
「……でも、あのタコは、ちょっと惜しいことをしたかな」
 ぴく。
 桃花の笑顔が僅かにひきつる。
 が、郁乃は気づかず、上機嫌で続けた。
「あの巨大ダコ、網の隙間から入ってきて大暴れして、あまつさえ桃花の可愛い足にまとわりつこうとしたから」
 そう。郁乃の一撃で、肉厚のタコ足一本残して逃げ去ったのだ。
「で、でも、一本だって十分すごいし……」
「いやあ、そういうことじゃなくて、ね」
 郁乃はわずかに頬を赤らめて、
「もうちょっと様子を見てれば、もしかして……桃花の触手プレ……」
「い・く・の・さま?」
 桃花が、にっこり微笑んで、郁乃に向き直った。
 それはもう非の打ち所のない愛らしい笑顔だった。
「……ごめんなさい」
 郁乃は一瞬で全面降伏した、


15:00pm 山岳地帯

 フード・ファイターと呼ばれるドラゴンは、何かに呼ばれたような気がして身じろぎをした。
 いや、ずっと呼ばれていたのだ。
 呼ばれたからこそ、暖かい巣穴を出てここまでやってきたのだ。
 ……何故、また眠ってしまったのか?
 すぐにでも、そこに行きたいのに。
 何しろ、彼はもう本当に……腹ぺこなのだ。
 かつて彼が平原に住んでいた頃、ずっと彼を苛み続けていたもの。
 食べても食べてもなくならない感覚。
 ……ごはんができたら、おこしてね。
 その「飢え」から解放してくれた、あの魔術師との約束に従って、ごはんを食べに行かなくてはいけないのだ。
『……ごはん』
 彼は頭をもたげ、たたんでいた羽根を広げる。
『ごはん!』
 そして、再び空へと飛び立った。

「ああ、起きちゃった……」
 舞い上がるドラゴンの姿を見送って、佳奈子が絶望的な声を上げた。
「追いますね」
 エレノアが後を追って飛び立つ。
「学校の方も、準備は進んでるみたい。もう少し時間が稼げればよかったんだど」
 加夜が顔を曇らせてつぶやいた。
 朝の絶望的な状況に比べれば、この数時間の足止めは十分に効果はあった。
 しかしドラゴンをこのまま行かせてしまっては、それもすべて無駄になってしまう。
「もう一度眠らせるのは……やっぱ、無理ですよね」
 佳奈子は加夜の表情で、また少し考える。
「逆に、ちょっと脅かして目を覚まして貰うとか」
「でも、攻撃してると思われて、これ以上話がこじれたら……」
 加夜が言うと、佳奈子もうーんとうなって黙り込む。
 しばらくの沈黙の後、加夜はぼそりと頷いた。
「一か八か、軽く雷を落としてみようか」
『……ドラゴン、スピードが上がってます』
 エレノアが緊張した声で報告する。
『あと、怒ってるみたいです……さっきから、なんで二度寝しちゃったんだよーって声がするような』
「二度寝……」
 佳奈子がぽんと手を打った。
「あるある、ちゃんと起きたのに二度寝して遅刻しちゃうとか。あれ、ショックなのよねぇ」
『佳奈子、もういいから……。』
 恥ずかしそうにエレノアが遮り、加夜も笑いをかみ殺して強引に話を戻す。
「やっぱり、ショック療法は危険かしら……でも、このままじゃ……」