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テロリストを追え!

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第一章 魔法使いVSテロリスト

「火術!」
罠のスイッチを踏んでしまったアッシュ・グロック(あっしゅ・ぐろっく)は、飛んで来た矢を掠りながら避け、物陰から現れたテロリスト共々、火術で吹き飛ばした。
「ふぅ……いてて」
 アッシュの左腕が少し切れ、血が滲んでいた。
 アゾート・ワルプルギス(あぞーと・わるぷるぎす)フィッツ・ビンゲン(ふぃっつ・びんげん)が別方向から飛んできた矢をいなして、アッシュの元に駆けつけた。
 アゾートはアッシュにヒールをフィッツはアッシュに紙パック入りコーヒーミルクを渡した。
「君が罠を踏むとボク達まで危険になるんだから、少しは注意だよ」
「そうだよ、テロリストがそこに居るって言った瞬間、走り出すんだから」
「二人でうっさいな……でも、ありがとな」
 アッシュが照れくさそうに貰ったコーヒーミルクを飲んだ。
「そうだ、ここにはアゾートさんだけじゃなく、多くの女性がいるんだ。危険な行動は謹むんだ」
「女性限定なんだね」
「ああ、男の子は多少の危険を乗り越えられなければ話にならん」
 罠を解除して現れたエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は、フィッツの質問に即答しながら、アッシュ達の前に現れた。後ろからは、やれやれといった顔をしながらリリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)が付いて来た。
「俺は多少なら罠について知識がある、ここからは先頭に立たせて貰うぜ」
「私が警戒に当たるわ」
 と言うと、エースとリリアが奥に歩いて行こうとすると、
「僕達も力になれます。先頭で警戒に当たらせてください……な、楓」
 灯真 京介(とうま・きょうすけ)と京介の後ろにピッタリとくっ付いて頷く灯真 楓(とうま・かえで)の姿があった。
「君は屋敷にいた……わかった、もしも怪我した時にはそちらのお嬢さん、治療を頼んだ」
 エース達は京介達を引き連れ、奥の方に進んだ。
「仲良き事は美しき哉、素敵なことですね」
「そうだね、羨ましいね」
 アッシュとアッシュの怪我を直していたアゾートを眺め、動き出してからもアッシュとアゾートを見守りながらノエル・ニムラヴス(のえる・にむらゔす)風馬 弾(ふうま・だん)は奥へと歩いた。

「ここはまた……罠が多いな」
「それに、敵もいますね」
 そう言うと、エースと京介達は罠があると思わしき場所から少し離れて止まった。
「俺達は、罠を解除する。京介君、数歩先に罠だ。踏むなよ」
「わかりましたよ」
 そう言うと、京介はエースの指示通り罠がある位置を避けながら、テロリストの隠れている傍まで走っていた。
 走っていくと、テロリストが飛び出してくる。京介は後の光で敵の動きを正確に読み、鳳凰の拳で敵を吹き飛ばし、対処できない敵を同じく走っていたリリアがソード・オブ・リリアを突きの構えから放つシーリングランスで、楓が女王のバックラーを投げサイコキネシスで操作して対処した。
「ここの罠も解除が終わった。それに、敵もいなくなったようだな」
 エースが京介の元に歩き、進もうとした。
「ちょっと待って、先に誰かいるわ!」
「……やばいであります」
 そうリリアが言うのと、後方に下がりながら葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が呟くのがほぼ同時だった。
 リリアが目を向ける先には、燕尾服を来た緑色の髪で同じく緑色の機械でできた右腕を付けた男と赤いフード付きコートを着た右手に全てのものを吸い込むような黒い色の両刃の剣と左手に同じ黒い色の本を持っている黒髪の男が立っていた。
 その後ろには、黒髪の男と同じ形だが、様々な色のコートを着ており、杖や本を構えて立っていた……魔法部隊のようだ。
「あの緑髪と黒髪、このテロリスト達とは格が違うみたいだな……」
「ああ、黒髪の方は豪邸の事件にもいたって言ってたな確か……」
 京介とエースが前に現れたテロリストを分析していると、
「あいつは、魔法をかき消す力があります」
 長原 淳二(ながはら・じゅんじ)南 白那(みなみ・はくな)ミーナ・ナナティア(みーな・ななてぃあ)を引き連れ、エースの前に現れた。
「緑髪の方は話に聞きませんが、あの右腕で何かしそうね」
 更に後ろから付いて来ていたリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)がレゾナンス・アームズの調整をしながら現れた。
「おやおや、こんな大勢の方々にお集まり頂くとは……私はフォアと申します。以後、お見知りおきを」
 そう言うと、フォアと名乗った緑髪の男は深々と頭を下げた。
 そのフォアの行動に警戒する一行の後ろの方から明神 丙(みょうじん・ひのえ)が歩き出し、
「ご丁寧に、僕は明神 丙と申します。よろしくお願いします」
 丙は、綺麗にお辞儀をした。
「ええ、今後ともよろしくお願いします……生きていましたら」
 フォアはお辞儀をしている丙に目に見えない速さで近づき、機械の右手で殴りつけた。
「そうですね。生きていましたら」
 丙はひらりとフォアの攻撃を避けると、袖に隠し持っていたエペを抑制していた力を封印解凍で開放し、強烈なカウンターをフォアの左腕に放った。
 斬りつけられた左腕を庇いながらフォアは、黒髪の傍まで戻った。
「遊んでねぇでしっかりしろ! おい! そこの剣士! 前回の様にはいかねぇぞ!」
「当たり前だ! 今度はしっかりとケリをつけてやる!」
 黒髪はフォアの怪我を治療しながら、淳二に剣を向け叫ぶと淳二も返すように緑竜殺しを黒髪に向け叫んだ。

黒髪から傷を癒してもらったフォアは、腰を屈め突撃の体制を取った。
「おや? そこにいるのは、何時ぞやの……っと」
「貴様の相手は、我だ!」
 遠くから吹雪を視認したフォアに遮るようにイングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)がレーザーマインゴーシュと妖刀白檀の二刀流で攻撃をした。
「その剣は……やはり、あの時いた……っと」
「口を動かす暇があると思うなよ」
 喋りかけたフォアにイングラハムはまた、攻撃を行った。
「なるほど、なるほど、判りました。こちらも本気で対処しましょう」
「はぁ! ……たぁ!」
 京介が軽身功を使いながらフォアに近づき、遠当てで闘気を飛ばし、更に近づいてから鳳凰の拳で攻撃を行った。
「私に近接対決ですか」
 フォアは遠当てを衝撃波で相殺し、拳は右手で受け止めた。
「中々、面白いですね」
フォアは京介をイングラハムに投げ飛ばすとぶつかった二人に向かって走った。
「兄上を傷つけさせません!」
 京介よりやや後方から付いて来ていた楓が再度、サイコキネシスで盾を飛ばしてフォアを攻撃した。
「兄弟愛とは良いものですね」
 楓の作った隙を使ってイングラハムと京介は、楓の元まで引いた。
「一緒に攻撃できますか?」
「分かった」
 イングラハムが京介の質問に答えると二人は、同時に駆け出しフォアに攻撃をした。
「二人は面倒ですね」
そう言うと、フォアは氷の壁を二人の前に出現させ、攻撃を防いだ。
「くっ! この壁、壊せない!」
「兄上、動かす事もできません」
 京介は秋霜の鋭気を纏った腕で殴り、楓はサイコキネシスで動かそうとするも二人の攻撃では、壁はピクリとも動かなかった。
「剣でも斬れんか」
「はぁー! みんな! どいて!」
後ろで熱狂と咆哮で大きな声は発し、リカインがレゾナント・アームズを構え、歌いながら走ってきた。
「なっ!」
 三人の攻撃では、ピクリとも動かなかった氷の壁がリカインの拳で粉々に砕かれ、後ろにいたフォアが驚愕の目でリカインを見ていた。
「歌姫ですか、中々、侮れませんね」
「それは、どうも……みんな、行くわよ!」
 一瞬で後ろに移動して攻撃を避けたフォアは再度、突撃の構えを取った。
 攻撃を避けられたリカインは歌うのをやめ、三人を激励し、歌を再開した。
「今度こそ、当てますよ」
フォアは目にも止まらない速さでリカインに突撃をした。
それをリカインは受け止め、上へ弾き飛ばすと、更にイングラハムが両手の剣で切り上げる。
「今の僕は、無力な子供ではない……!」
京介は軽身功で壁を駆け、フォアの真上から拳を叩き降ろした。
「ここまでとは、一旦、引くべきですね」
「こいつで仕留めます」
腕を抑えながらゆっくりと立ち上がり、黒髪の男に目を向けたフォアに機晶ゴーグルを付け、軍神ライフルを構えた吹雪が止めの一発を放った。

「いけ! お前ら!」
 黒髪の男は、フォアがイングラハムと対峙した同時期に魔法部隊に号令を発し、一斉に魔法を放った。
 アゾートとエース達に飛んでくる魔法を弾が光条兵器の大剣を使ってブレイドガードでアッシュや淳二達に飛んできた魔法をエンデュアで魔法攻撃の耐性を上げた白那の爆炎波と魔砲ステッキを振ったミーナはファイアストームで魔法部隊の攻撃を防いだ。
「お前の仲間もそれなりには出来るようだな。それにそっちの槍使いも侮れんな」
「これは、槍ではなくて、大剣です!」
 黒髪の男の言葉に弾達にパワーブレスをかけていたノエルがムスっとした顔で返した。
「ほう、それは失敬……その大剣で攻撃をどれだけ防げるか!」
 黒髪の男はノエルに向かって、氷術を放った。
 放たれた氷は、弾の振るった光条兵器に阻まれ消えた。
「お嬢さんに手を出すとは、感心しないな!」
 エースは、弾が魔法を打ち消すのを確認すると、我は射す光の閃刃で光刃を三刃出現させると黒髪の男に向けて飛ばした。
「魔法が効かないという話、聞かなかったのか?」
 男は剣を振るい、剣に触れた光刃をかき消した。
「剣に魔法をかき消す効果があるみたいだね……って事は、私の補助魔法は大丈夫ってことだよね!」
 ネスティ・レーベル(ねすてぃ・れーべる)は言い終えると、周りにいる仲間たちに護国の聖域を使い、魔法防御力を高めた。
「よし! これで、多少攻撃をくらっても大丈夫! みんなで頑張ろう!」
 ネスティは皆を励ました。
「という事は……アッシュ、多方面から攻撃した大丈夫じゃない?」
「お、なるほど! アゾートの案に乗った! 俺は、黒髪の後ろに行くぜ! フィッツお前も横に回って来れ」
「わ、わかったよ」
 アゾートの言葉にアッシュが反応し、フィッツを叩きながら駆け出した。
「アッシュ、この前もそうだったけど、魔法部隊をどうするつもりだろう」
「そこは、俺達が援護だな……まあ、俺はお嬢さんの援護で手一杯だが」
 淳二の疑問にエースがアゾートの方を見ながら答えた。
「全体攻撃なら私に任せて!」
「私もできます」
 ネスティとミーナがそれぞれ、範囲魔法の準備をしながら答えた。
「何かするのか、小僧! おい! さっさと次の攻撃をしろ!」
 走り出すアッシュを見て黒髪の男は、魔法部隊に激を飛ばした。
「遅いよ! これとこれもお見舞いだよ!」
「これもくらってください!」
 ネスティが我は射す光の閃刃と歴戦の魔術をミーナがファイアストームとサンダーブラストを魔法部隊に放った。
「使えないな!」
 黒髪の男は、癒しの風を呼び、魔法部隊、全員を回復させようとした。
「アッシュさん! チャンスは一回しかありませんよ!」
 それを見ていた弾がアッシュに向かって叫んだ。
「おう! 俺様には一回あれば十分だ!」
 アッシュは叫びながら黒髪の男の背後まで回り込むと、
「アゾート、フィッツ! 行くぜ!」
 アッシュの掛け声で三人は、同時にファイアストームを放った。
「考えたな、だが!」
 男は、三方向から来る魔法を回転斬りする事で防いだ。
「惜しかったな」
「俺を忘れるな!」
 淳二は煙が立ち込める中、男に向かって剣を振るった。
「この剣は飾りじゃないぞ!」
「はぁ!」
 男は剣で淳二の剣を払った。
 淳二は、払われた剣を放すと握り拳で男を殴り飛ばした。
「ぐっ! お前! やりやがったな!」
 男は、顔を抑えながら立ち上がった。

 立ち上がった黒髪の男は、吹雪に狙撃されるフォアを確認して、
「生きていますが……やはり、使えませんね。ここは潮時ですか……」
 先程とは違う口調と表情で喋り始めた。
「お、お前……」
 剣を拾い構えた淳二は男の豹変ぶりに戸惑った。
 男は、先程のきつい表情とは違い、穏やかな表情で淳二達を見つめ、
「これで、終わりです。楽しかったですよ」
 剣を鞘に戻すと本を右手に持ち、あるページを開き魔法を発動させた。
「さようなら、また会える時まで」
 遺跡の隙間という隙間から水が溢れ出し、部屋を満たすとフォアや魔法部隊共々、淳二達を押し流した。