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鋼鉄の船と君の歌

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鋼鉄の船と君の歌

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「――あなたが、犯人です」
 長曽禰 広明(ながそね・ひろあき)がブリッジに到着した時、事態は既に終息へと向かっていた。
「……あなたが何を言っているのか解らないわ、ルー大尉?」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)にゆびを指され、艦長は困惑していた。
「一体、どういうことなの? 説明して、ルー大尉」
 水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)もまた、事態を飲み込みきれず混乱していた。
「今現在、艦内で起きている異常事態は、艦長により仕組まれたのだということです」
「なっ……!」
 ブリッジクルーの注目が、一斉に艦長に集中する。
「……待って、ちょっと待ってルー大尉。あなた、自分がなにを言っているのか解っているの?」
「ルカは至って正気ですよ艦長。少なくとも、あなたよりはね」
「そこまで言うからには、なにか根拠があるのでしょうね?」
 ルカは大きく胸を張り、事態のあらましを説明した。
 機関室からのエマージェンシーコールを発端に、艦内に次々と現れたグールの群れ。
 これほど大規模な召喚術は、事前準備がなければまず不可能なこと。
 それを予期するかのように配置された、過剰なまでの警備体制。
 さらに混乱を煽るために準備された通信妨害システム。
「以上のことから、教導団内部にテロリストの内通者がいると考えるのは難しくないよね」
「それはおかしいんじゃないから、ルー大尉」
「うん?」
「だって、テロを成功させるのに、警備を厳重にするのは逆効果でしょう。言ってる事がむちゃくちゃだわ」
「うーん、そうだよね。けれどゆかり、成功って、なにかしら? 艦を沈める事? それとも奪うこと?」
「それは……」
「艦長の目的は、そのどちらでもなかった。手段ではなく、騒ぎを起こすことそのものが目的だった」
「そんな事をして、艦長に一体なんの利益があるっていうの……?」
「【ローレライ・システム】」
 艦長の肩が、びくりと震えたのは誰の目にも明らかであった。
「艦長。あなたはこの騒ぎを起こすことで彼女を、――あなたのパートナーを目覚めさせようとしていた。そうだよね?」
 艦長は顔を伏せ、拳をわなわなと握り締めながら押し黙る。
「なぁ艦長。あんた恨んでるのか、オレたち技術科を……」
「当たり前じゃない!!!」
 長曽禰の言葉に、艦長は悲鳴にも似た叫び声を上げた。
 その瞳には、うっすらと涙が浮かび上がる。
「彼女は、あなた達に利用されて、身体中弄ばれて! 戦いに傷ついて、もう笑うことも泣くこともできなくなって!」
「艦長……」
「それなのに、今度はあんなモノの実験に組み込まれて、ゆっくりと眠ることすらできない……。だから、あたしはっ!」
「彼女を開放するつもりか」
「そうよ! そのためだけに、今日まで頑張ってきた! 教導団に忠誠を誓うふりをしながら、ずっと耐えてきたの!」
「やめろ艦長、彼女はもう――!」
「あたしはただ、あの子にもう一度だけ、歌って欲しいだけなんだからぁ!」
 艦長は手袋に刻まれた魔法陣を介し、強大な術式を発動させる。
 海底から魔力の渦が浮かび上がり、そして――