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リアクション
chapter4.突入
「侵入経路はありそうかにゃ?」
 ルミナスヴァルキリー艦長、ナリュキが、操舵手の未那に言った。
「みつからないですぅ」
「ということは?」
「ラムアタックしかないですぅ」
「やはりそうか。よし、ルミナスヴァルキリーの力を見せつけてやるのじゃ!」
 ナリュキはラムアタックの敢行を決断する。
「本艦は、これよりラムアタックの体勢に入りますっ。衝撃に備えてくださーい」
 ひなの声が、艦内に響き渡った。
 ルミナスヴァルキリーが全速前進を開始する中、ポーラスターでは桜塚 屍鬼乃(さくらづか・しきの)がマ・メール・ロアの変化に気がついた。
「ねえあそこ、なんか動いてない? ……あれってもしかして光条砲の砲門じゃ。ルミナスヴァルキリーに照準を合わせてるんだけど」
「何だと」
 クレアは慌ててマ・メール・ロアの先端を確認する。光条砲門を中心に、輝きが収束していた。
「まずい、ルミナスヴァルキリーを援護するぞ」
 ルミナスヴァルキリーの装甲が強固とはいえ、光条砲の威力に耐えられる保証はない。クレアはポーラスターをルミナスヴァルキリーの陰から出し、主砲で攻勢に出ることを指示した。
「主砲発射準備。目標はマ・メール・ロア光条砲門。修正、右に15」
「右に15だな? 分かった」
 ローザマリアの計算を元に、{SFL0017517#グロリアーナ}が主砲の照準を合わせる。マ・メール・ロアの光条砲門は一門のみ。これさえ破壊できれば、ルミナスヴァルキリーが墜とされることはないだろう。
「よし、いつでも発射可能だ!」
「撃てえ!」
 マ・メール・ロアの光条砲よりも早く、ポーラスターのビーム砲が放たれる。しかし、ビーム砲が放たれる直前に、予想外の出来事が起こっていた。爆音と共に、ポーラスターの船体が傾いたのだ。ビーム砲は目標を外れる。
「機関室に破損を確認! 出力20パーセント低下。どんどん下がっていきます!」
 クルーの声が艦橋にこだました。
「一体何事!?」
 ローザマリアは、考える間もなく、屍鬼乃から恐るべき事実を告げられた。
「うわ、マ・メール・ロアがこっちに標的を変えたよ!」
 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
 爆発の起こる少し前。エフェメラ・フィロソフィア(えふぇめら・ふぃろそふぃあ)は、ポーラスターを内部から破壊してやろうと考え、機関室を探していた。
「ふん、ゲイルスリッターの頃に邪険にされた恨みは忘れてませんの」
 エフェメラには、洗脳されていたころのリフルに突然攻撃され、しかも無視されたという恨みがあったのだ。
「妾は今一つ気が進まんのじゃが……まあ良かろう。其方がハンムラビ法典をなぞるというのであれば、それもまた人の世の真理よ」
 セフェル・イェツィラー(せふぇる・いぇつぃらー)は、渋々エフェメラについていく。
「ありましたの!」
 機関室はすぐに見つかった。幸い人の姿は見えない。
「これなんか、いかにも大切っぽいですの」
 エフェメラは一切の遠慮なく、システムの中枢部に雷術を叩き込んだ。セフェルも彼女に倣う。
 程なくして、機関室は爆発を起こした。
 異変に気付いたリフルがやってきたとき、機関室近くではあちこちから火花が飛び散っており、エフェメラとセフェルは非常用ハッチを空けているところだった。
「人を大事にしない方は人の手によって滅ぶ……良い気味ですの」
「脆いな……半端物が」
 二人は空飛ぶ箒でハッチから脱出する。入れ替わるようにして、裏椿 理王(うらつばき・りおう)が訪れた。
「リフル、ここにいたのか」
 理王は、爆発による揺れで怪我をした生徒がいれば手当をしようと、船内を回っていたのだ。
「怪我はないか? さあ、ここは危険だ、こっちに――」
 理王がリフルに手を伸ばしたとき、更なる衝撃と激しい閃光が二人を襲った。
 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「戦闘ではフリューネがペガサスを駆り戦場を飛び回り、俺はアイツが帰る場所を守り抜く。それがいつもの光景だ」
 ルミナスヴァルキリーの甲板に立つ男が一人。レン・オズワルド(れん・おずわるど)だ。
「しかし、マ・メール・ロアへの道を切り開くため、今はポーラスターをどうにかしてやる必要があるようだな」
 レンは、回転する光条砲門を見て言った。
「メティス、やってくれ」
「分かりました。みなさんを……無事に送り届けますッ!」
 レンの合図で、メティス・ボルト(めてぃす・ぼると)は、身にまとったアイアンメイデンから六連ミサイルポッドを全て取り出して装着する。そして、大空に向けて大量のミサイルを一気に撃ちだした。
 レンは、両手のカーマインで次々とミサイルを撃ち落としていった。辺り一面を覆うようにして、弾幕が張られる。
 直後、マ・メール・ロアから光条砲が発射された。
「ミネルバちゃんあたーっく!」
 ミネルバはレプリカ・ビックディッパーによるランスバレストで光条砲をぶった斬ろうとしたが、レプリカ・ビックディッパーは音もなく消し飛んだ。
「うわ、すごーい」
 ミネルバは、感心したように光条砲の行方を見守る。
 レンとメティスの張った弾幕によって、光条砲の狙いはわずかに狂わされていた。光条砲はポーラスターに直撃せず、その船体をかする。しかし、ポーラスターの機能を停止させるには、それで十分だった。
 ポーラスターはどんどん高度を下げてゆく。生徒たちは、慌てて船内から空へと脱出した。
「なんて威力だ……」
 飛行手段をもたない理王は、仲間たちの小型飛空艇に支えられて空中に浮かんでいる。リフルをお姫様抱っこして体重測定するという目的を今正に達成しているところだが、あまりの光景に喜ぶ気にはなれなかった。
「さよなら、ポーラスター。ありがとう」
 リフルは、短い付き合いだった相棒の、最後の姿を見届けた。
 ポーラスターは、撃沈された。
 今やもう、ルミナスヴァルキリーを妨げるものは何もない。
「「「いっけえええええっ!!!」」」
 みんなの思いを乗せて、ルミナスヴァルキリーはついにマ・メール・ロアの中央部、やや張り出した部分にラムアタックを食らわせた。
 マ・メール・ロアにぽっかりと穴が開く。生徒たちは、マ・メール・ロアへとなだれ込んでいった。
 
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