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リアクション
戦艦部隊攻撃開始
「戦況を頼む」
「了解よ。先ほど、突撃を行った鋼鉄の獅子が率いる金獅子が安全圏まで後退、防衛に加わった。
既に万魔殿へは突入組が突入済み。そのため、私たちH部隊は新星部隊や護衛艦隊、鋼鉄の獅子と連携して敵を殲滅」
「目標は?」
「第一目標はエピメテウス、続いて敵戦艦及びイコン。イーダフェルトとの距離が近い相手から順に落としていくのがいいと思うわ」
HMS・テメレーア内ではローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)がホレーショ・ネルソン(ほれーしょ・ねるそん)に状況を報告していた。
「なるほど。ならばエピメテウスは一度ゾディアックに任せ、まずは敵戦艦への攻撃に専念する。このまま進め!」
「了解。程なくして先頭の伊勢が交戦に入るわ」
現在、ホーレショ率いるテメレーアはH部隊旗艦として、対敵戦艦と交戦しようとしていた。
その先頭に配置されている伊勢が敵戦艦への攻撃を始めようとしている。
伊勢の艦長葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)と操舵担当のコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が、テメレーアと連絡を取る。
「こちら伊勢、前方に敵戦艦、射程距離内に入ったわ」
『了解。そのまま攻撃を開始して』
「ヤー……ってことよ。指揮官殿」
腕を組み、眼を瞑っていた吹雪に攻撃許可が出たと伝えるコルセア。すると、吹雪がカッと眼を見開く。
「攻撃目標万魔殿、攻撃目標敵戦艦、全兵装使用自由、全艦突撃我に続け!!」
「ちょ、ちょっと! 万魔殿にも攻撃するの? 星辰波動砲を使ってもすぐに回復した化け物だし、それに中にはもう味方がいるわ」
「他の攻撃は通じるかもしれないでありますし、撃ち落とせれば儲けもの。それに契約者たちならば脱出くらいできるでありますよ」
万魔殿への攻撃をやめさせようとするコルセアだったが、吹雪はそれを拒否し、あくまでも攻撃する姿勢をやめない。
だが、吹雪の言う通り敵の本拠地を落とせれば、これほど優位に立てることはない。
「……契約者さんに恨まれても知らないからね。こちら伊勢、聞こえてる?」
『ああバッチリやで? そろそろいくんか?』
通信相手のシーニー・ポータートル(しーにー・ぽーたーとる)が気さくな声でコルセアの通信に答える。
「ええ。万魔殿とその前方に布陣している敵戦艦を殲滅するわ。そっちもこちらの攻撃に乗じて万魔殿へと攻撃してみて頂戴」
『了解や!』
通信を切った後、コルセアがビッグバンブラストの射出準備を手早く行い完了させた後、吹雪に号令を促す。
「僚機戦艦並びに伊勢はビッグバンブラストを射出せよ! 目標は万魔殿及び前方の敵戦艦! 撃てぇーっ!」
吹雪の号令と共に五つの戦艦からビッグバンブラストが発射され、敵戦艦と万魔殿へ向う。
「おっ、始まったで!」
「それじゃ行こうか」
五発のビッグバンブラストと共に笠置 生駒(かさぎ・いこま)が乗るジェファルコン特務仕様がスタート。
万魔殿の前方に布陣している戦艦の上空を飛び、万魔殿へと近づいていく。
その下方では一発目のビッグバンブラストが盛大に爆発し敵戦艦へ多大な損傷をもたらしていた。
「こりゃ壮観やな……おっ、やっこさんら粒子砲使い始めたで」
「総力戦だね、当然か。ワタシたちも出し惜しみはなしで行こう」
伊勢と僚機戦艦による激しい攻撃が敵へと注がれる中、ジェファルコンが万魔殿へと上空へと到達する。
「よっしゃ、真上にドンピシャや!」
「それじゃ、行こうか……」
生駒が覚醒を行い、多弾頭ミサイルランチャーを射出後、バスターレールガンを万魔殿へと全段発射、全段命中。
更に伊勢から放たれたビッグバンブラストが万魔殿に直撃し、大爆発が巻き起こる。
「どうや!」
「……さっきと同じみたいだね」
矢継ぎ早の攻撃は見事と言うほかないが、それ以上に万魔殿の回復力はすさまじく、みるみるうちに損傷が回復していく。
「まあ、ある程度予想できたことだし。大人しく伊勢の護衛につくとしようかな」
そう言って生駒は伊勢の場所まで後退する。
「やはりあの要塞への攻撃は無意味ですか。ならば敵戦艦に攻撃を絞りましょう」
製造した星辰戦艦『ウィスタリアS』の艦長、アルマ・ライラック(あるま・らいらっく)は冷静に今起きたことを判断し、万魔殿への攻撃を断念、敵戦艦へと目標を絞ることにする。
「目標はまだまだ無数にいますしね」
既にテレメーアから、星辰波動砲の発射許可をもらっていたアルマは、躊躇することなく発射準備を実行していた。
「準備完了ですね。僚機へ、本艦はこれより敵艦隊へ星辰波動砲を発射します。合わせて荷電粒子砲をお願いいたします。それでは……」
アルマの指示により、星辰波動砲が瘴気を震わせて敵を滅する。巨大なエネルギーの塊は敵戦艦の装甲を食い破り、溶かし、蒸発させていく。
ビッグバンブラスト、そしてそれを上回る威力の星辰波動砲による連続攻撃により、敵艦隊へのダメージは甚大だ。
「うおわっ!? 星辰波動砲が発射されたのか!?」
一方、柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)はイコンの修理や補給を行っていた。他の整備員と共に、次から次へと修理や補給にくるイコンたちを整備しまわっていた。
「まあ、驚きはここら辺にして……こっちと、こっちは、緑。そっちは黄色、これは……オレンジだな。土佐に回してくれ」
桂輔が口にしている色は、イコンの損傷度を表していた。
青=問題無し、緑=損害軽微、黄色=小破、オレンジ=中破、赤=大破、黒=修理不能、のように段階に分け、整備員とその認識を共有。
オレジン、つまり中破以上のイコンについてはここで修理は行わず、後方の土佐に回すようにしていた。
「ゴスホークからの要請は未だなし、か。とりあえずこのまま整備に専念しよう。なせばなる……ってね。何とかなるだろ」
自分に出来ることに全力で取り組み、戦線をサポートしていく桂輔だった。
「このまま攻撃を続ける! 下がるのはもう少ししてからだ!」
横、更に前方に位置する敵からの猛攻撃を受けながらも反撃をして前進するのは湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)及び高嶋 梓(たかしま・あずさ)が操舵する土佐。
伊勢、ウィスタリアSに続き敵戦艦と交戦に入り、派手な攻撃を続けている。
「星辰波動砲による攻撃で空いた敵の戦列の穴に攻撃を続けてくれ!」
「亮一さん、敵の密度の高い箇所を発見しました」
レーダー、赤外線、目視を併用し敵が比較的密集している箇所を見つけた梓が亮一にすぐさま報告。それに対して亮一も素早く荷電粒子砲の準備をする。
「了解、該当する箇所を確認した上で狙いをすまし、粒子砲をお見舞いする! 撃てー!」
敵密集地点を確認し、荷電粒子砲の出力と調整、そのまま発射。瘴気を焼き焦がす粒子砲が複数の敵戦艦を巻き込み炸裂する。
攻撃を受けた敵戦艦は中破及び大破し、戦闘不能になる艦もあったが中破した艦はこちらへと反撃をしてくる。
「撃ち落とせるものは撃ち落とせ! ……反撃が激しい。そろそろ折り返すべきか」
亮一たちH部隊はかなり敵陣へと食い込んでいた。これ以上突出するのは危険が過ぎる。
「そろそろ後退する。補給・整備中のイコンの作業を急ピッチで終わらせて、各戦艦の護衛にあたってもらってくれ」
亮一がそう告げると、梓がすぐさま整備班に通信を行いその旨を報告する。
「あとは、もう一つの切り札を使うだけ、か」
亮一が言うもう一つの切り札、星辰戦艦『安芸』も後退の準備をしていた。安芸だけではない、H部隊の戦艦の全てが進行ルートを引き返す準備を整え始めていた。
「ここまでこれたのも、他の戦艦や必死に戦ってくれたイコン部隊のおかげ……ならばその行いに報いなければならない」
「そうですわね。私たちの一撃、見せてあげましょう」
大田川 龍一(おおたがわ・りゅういち)の呟きを聞いていた天城 千歳(あまぎ・ちとせ)が優しく微笑みかけながら喋りかける。
先ほど放たれた星辰波動砲は敵に大ダメージを与えた。しかし、既にその補強としての増援部隊が後方からやってきているのが見える。
「物量攻めがこうも苦しいものとは、身に染みるな」
「ですが、私たちとて引けませんわ」
「その通りだ。目標は列の補強にきた増援部隊。好都合にも群れを形成してこちらに来ている……更にどでかい穴を空けてやるとしよう!」
チャージを終えた安芸から、莫大な質量を持った星辰波動砲が雲を払いのけながら増援部隊へと撃ち込まれる。
たちまち増援部隊がいた場所にはぽっかりと穴が空き、敵の戦列は崩れたまま。これで補強にも時間がかかるだろう。
「テレメーアから連絡。各戦艦は後退を開始してくれとのこと」
「了解した。これだけやれば幾ばかりかの時間は稼げたろう」
こうして突貫しつつ己の力を行使した戦艦たちは方向転換を行い後退を始めた。
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