空京

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終焉の絆 第二回

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終焉の絆 第二回
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【2】巨大イコン『グラヒトリ』 2

「オレも参加するぜ! 巨大昆虫は操れまいよ!」
 巨大クワガタドンナーシュラークに乗った瓜生 コウ(うりゅう・こう)がグラヒトリを挟み込む。
 巨大なハサミが、ギチギチと音を立てて残骸を破壊していく。
 それでもまだ届かない。本体は奥底で悠然としていた。
『コウ、一旦離れて。攻撃がくるわよ』
 パートナーのマリザ・システルース(まりざ・しすてるーす)から連絡。すぐさまコウは一時後退。
 だが、グラヒトリがそれに追いすがる。
『昆虫風情の土俵に立ってやろう。ほれ、ぶちかましだ』
 巨体が、巨大昆虫にぶちかます。空で繰り広げられる弩級の異種相撲。
「こっちはクワガタだっての! だれが正面から行くかっ!」
 グラヒトリのぶちかましを寸でのところでかわし、すれ違いざまに残骸を削ぎ落とす。
 今は、グラヒトリが纏うイコンの残骸どうにかしなければならない。
 契約者達はそれを肌で感じ始めていた。
 湯浅 忍(ゆあさ・しのぶ)ロビーナ・ディーレイ(ろびーな・でぃーれい)が搭乗するらいでんと、メイ・ディ・コスプレ(めい・でぃこすぷれ)マイ・ディ・コスプレ(まい・でぃこすぷれ)が搭乗するダスティシンデレラver.2は周りのイコン部隊を相手取り、グラヒトリと戦う契約者たちを援護していく。

「グラヒトリ! お前の相手はこのヴァ―ミリオンだ!」
 十七夜 リオ(かなき・りお)がグラヒトリに向けて宣言する。
 既に機晶支援AI【シューニャ】を活用し、
 V−LWSの機動制御計算のサポートを施し、準備を万全に整えるリオ。
「フェル、準備はOK?」
「当然です」
 ヴァーミリオンのメインパイロット、フェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)はきっぱりと言い切った。
 ヴァーミリオンが発進する。向う先はグラヒトリの、更に懐。
「はぁ!」
 V-LWSをブレード状に展開して残骸を、真正面から滅多斬りにしていく。
 それは誰の目から見ても無茶な物だ。
『……愚かを通り越して、哀れだな。ふんっ』
「きゃあっ!」
 グラヒトリの両腕がヴァーミリオンの側面に叩きつけられる。
 決して微細ではない、確かな損傷。
 エレクトロンボルトが、ニヤリと笑うと、ヴァーミリオンがグラヒトリへと貼り付けにされる。
『どうだ? 敵に操られ、守る道具となる気分は?』
 エレクトロンボルトが皮肉を、二人に吐き出す。
 対して、リオも笑って返した。
「……虎穴にいらずんば、虎児を得ず。いいね、よく見えるよ。
 これだけ近いと、グラヒトリの機晶エネルギーの流れが、くっきりだ」
 チューンモノクル越しに、グラヒトリの本体を見るリオ。
 これで動力部の位置に大体の見当が付いた。
 だがどうやって脱出するのか。損傷したヴァーミリオンでは脱出などできない。
「あんたがこっちの仲間を盾にするなんて“行動予測”済み。
 それじゃそろそろ、“真なる神と”いきましょうかね!」
 ヴァーミリオンの損傷が、自動で修復されていく。この土壇場でリオは真なる神となれを発動。
 さらに、フェルクレールトが覚醒を発動し、グラヒトリのコントロール下から脱出に成功する。
『……と、勝ち誇るだろうな。そんなもの、“予測済み”だ』
 自由になったヴァーミリオンだが、別のイコンの残骸が行く手を阻止する。
 四方を残骸に囲まれたヴァーミリオンは思うように動けない。
「……っ! やってくれますね……!!」
『では、今から握りつぶし、本当の残骸にしてやろうっ!!』
 ヴァーミリオンの周りに次々と残骸が集まってくる。
 覚醒したヴァーミリオンでも、あと一歩足りない。
 その一歩を、仲間たちが補う。

「ったく、無茶をするやつね」
「グラルダさんも人のこと言えませんけどね。今助けます!」
「おいおい、相撲はもう終わりか? 千秋楽にはまだはぇよ!!」
 グラルダ、ザカコ、コウがヴァーミリオンに纏わりつく残骸を蹴散らし、
 ヴァーミリオンは自由の身となる。
「……お返しですよ、グラヒトリッ」
 ヴァ―ミリオンがファイナルイコンソードを発動させ、今までの分をまとめて返す。
 その一太刀は、傍観を決め込んでいるグラヒトリ本体へと届き、損傷させる。
『小癪なっ……! 貴様等、死ぬ気で戦え!
 たとえ死んでもこの私が直々に使ってやる! 遠慮なく戦って、死ねぃ!』
 四機の連携により、初めて本体への傷を負わされたエレクトロンボルトは、
 ギシリと、悔しそうに歯を噛みあわせながら、
 全イコン機へと残酷な言葉を放つ。
 すると今まで機動要塞の守備についていたイコン機がグラヒトリの援護へと殺到する。
 グラヒトリと戦闘していた四機は敵イコンへの対処をやむなくされた。