空京

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終焉の絆 第二回

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終焉の絆 第二回
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【2】超大型機動要塞vs艦隊部隊 3

「こちら土佐、セラフィム機の接近を確認しました。
 土佐は攻撃準備のため応戦不能です。
 雷光及び天雷へ、迎撃をお願いします」
『こちら雷光、了解した』
『こちら天雷、任せろ』
 雷の名を冠する二機にセラフィム機の対応を要請する高嶋 梓(たかしま・あずさ)
 艦長である湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)は、冷静だった。
 本来ならH部隊は主戦場を迂回して敵機動要塞の側面に回りこみ、
 一点集中砲火を行う手筈だった。
 しかし、敵機動要塞の馬鹿げたサイズと想像以上の攻撃力・攻撃範囲を加味し、
 いち早くテメレーアに連絡を行い、その場に止まり応戦することを提案した。
「さて、ここからはどうなるもんかね……。
 ひとまずプラヴァーは二機はそのまま厳戒態勢に」
「わかりました」
 迫りくるセラフィム機は雷光と天雷に一任された。

「セラフィム機、か……厄介な」
『そう言うな! ほら。来るぞ! 右のは頼んだ!』
 岡島 伸宏(おかじま・のぶひろ)からの通信に、大田川 龍一(おおたがわ・りゅういち)が答えようとするが答える間もなく通信を切られた。
「……まあいいか。というわけだ」
 後部座席に座っていた天城 千歳(あまぎ・ちとせ)に話しかける龍一。
「了解しましたわ」
「……多少は楽できるかと思ったんだがな」
 少しだけ不平を漏らした龍一だったがきっちり仕事に取り掛かる。
 向かってくるセラフィム機へ、プラヴァー二機にビームアサルトで徹底的に支援させる。
 残念ながらその攻撃は当たることはなかった。だが、
「問題ない。俺が当てるんだから」
 雷光のウィッチクラフトライフルが火を噴き、
 近づいてくるセラフィム機の左腕部が宙を吹き飛んだ。

「やるなぁ! 俺も負けていられないぜ!」
 龍一と同じ戦法で戦う伸宏。
 左から襲いくるセラフィム機の右脚部を、バスターライフルで吹き飛ばす。
 狙った右腕部には当てることは出来なかった。
「くそ、バスターライフルで派手に吹き飛ばす予定だったが」
「あまり無理しないで、着実にいきましょう」
 山口 順子(やまぐち・じゅんこ)が諭すような口調で伸宏を宥める。
「ああ、遊びじゃないんだ。手堅く行くかっ」
 そう気持ちを切り替えてからは早い。
 精度のいいウィッチクラフトライフルに持ち替えて、同戦法で敵を追い詰め、
 一瞬の隙をスコープ越しに射抜く。
 それは龍一も同じで、二機のセラフィム機は近づくことすら出来ず半壊に追い詰められる。
 と、二機のセラフィム機が同時にブーストを全力展開し、
 雷光と天雷に突進してくる。
「……突貫してる隙に、もう一機を通させようって魂胆か?」
『浅はかだな、まったく』
 二機の後方には、健在のセラフィム機が一機。
 半壊した二機のセラフィム機は照準も疎かに、ただただ弾をバラ撒いていく。
 その攻撃を避けようともせず、雷光と天雷は同時にライフルを発射。
 頭部から胴体部を通りライフルが突き抜けたセラフィム機は爆散。
 次に来るであろう一機を待ち構える。が、
 順子と千歳が慌てて叫ぶ。
「こ、後方から更に敵機が!」
「増援、大きく迂回して雷光と天雷の外側からこちらに接近してくる模様」
 突然の出来事に約一秒ほど気を取られたパイロットの二人。
 その頭上を、セラフィム機が通り抜けた。

「「しまっ」」

 雷光と天雷も慌てて後を追う。
 だが、気付いた時には、もう、遅かった。
『余所見をするのは感心せんぞ』
『同感だな』
 両サイドを大きく迂回してきた敵イコン機は、
 ストーク拠点強襲攻撃改修型とニーベルンゲンによって撃墜。
 中央を強行突破したセラフィム機はシャンディに行く手を阻まれていた。
『私の信じる教義はね、あんた達の血を暗黒神(カーリー)に捧げよ、だ!』
 シャンディがセラフィム機を強引に弾き飛ばす。飛ばされた方向には雷光と天雷。
 二機は大型超高周波ブレードを交差させ、セラフィム機の胴体部をX状に両断した。

「どうにか難を逃れたようだ。それじゃこちらも攻撃を」
「!? 敵機動要塞から高エネルギー反応っ!
 先ほどの攻撃が来ます! 目標は、テメレーアです!」
 梓の言葉に亮一は驚愕する。恐らく、奇襲を仕掛けてきたイコン部隊も目くらましだったのだ。
 本命はこの攻撃でテメレーアを沈めること。
「荷電粒子砲の照準を敵機動要塞からテメレーアを狙う荷電粒子砲に変更っ!」
「無茶です!」
「無茶でもやるんだ!」
 亮一の気迫に押された船員たちはすぐさま照準を変更する。
「攻撃、きますっ!」
「こちらも準備が出来次第発射しろ!」
 そしてほぼ同時に荷電粒子砲が発射される。
 しかし、全てを相殺するには至らない。テメレーアに、荷電粒子砲が被弾した。

「ぐお、おおおおお!」
「きゃああああっ!」
 テメレーア全体が衝撃に震える。
 荷電粒子砲は艦に着弾。装甲を破壊し動力部に異常をきたす。
 最早、制御不能になるのも時間の問題だ。
「こうなれば、テメレーア毎ぶつけるしかないかっ……!
 総員、艦を離れよ!」
 テメレーアが機動要塞へと進行し始めようとする。と、緊急通信がテメレーアに届いた。
『待てっ! こちら司令部の金 鋭峰(じん・るいふぉん)だ。今突貫するのは無謀だ!』
「すまんな……義務を果たすという事は、こういうことなのだよ」
『落ち着けと言っている。たった今味方イコンから情報が入った。
 数秒だが、グラヒトリの姿を確かに確認したとのこと。
 テメレーアをぶつけ、多くの残骸を散らせばグラヒトリは修復材料に事欠かかなくなる。
 それこそ、エレクトロンボルトの思う壺だ!』
 鋭峰の的確な説得。だがホレーショたちはグラヒトリの姿を見たわけではない。
 本当に、潜んでいるのか? あちら側が仕掛けた、偽りの情報なのではないのか?
 ホレーショは考え、考えて、決断を下した。
「落ちる前に、もう一度荷電粒子砲を撃ち込む。
 それくらいは文句あるまい」
『……無論だ。
 尚、テメレーア撤退後は他戦艦が二艦加わる手筈になっている』
「……成程、ならば不足はあるまい」
 翔子の言葉から手配される戦艦を予測し、ホレーショは緊急通信を切った。
 撤退しながらも、飛行制御もままならない状態でありながらも、
 テメレーアから最後の荷電粒子砲が放たれ、手負いの獅子が如く一撃を残して後退した。
 その後もH部隊の息もつかせぬ砲撃が機動要塞へと吸い込まれていく。
 機動要塞を半壊させる以上の戦果と、機動要塞の進行を止めることに至った。

「さすがH部隊……負けていられないねっ」
「そうだな」
 “鋼鉄の獅子”が動く。

「母艦役、任せてもらいましょうか」
「期待してもいいでしょうか? 疼きを満たす、想像以上の窮地を……」
 “空の守護者”が動く。

 二つの黒き戦艦が動き出す。
 テメレーアのために、イコン部隊のために、勝利のために。
 ゆっくりと駆動を始めた。
 そして、金色のイコンもまた、動き始める――――。