空京

校長室

終焉の絆 第二回

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終焉の絆 第二回
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【2】超大型機動要塞vs艦隊部隊 2

『伊勢はエネルギー充填中。次を頼めるかしら?』
「了解。ウィスタリアはこれより攻撃態勢に入ります。
 以降、私は操船に従事しますので、通信と索敵はお任せします」
「了解いたしました!」
 精鋭クルーに通信と索敵を任せたアルマ・ライラック(あるま・らいらっく)
 二番手、ウィスタリアから放たれる攻撃は、期待している通りもの、ではない。
「グラビティキャノン準備完了! システムオールグリーン!」
「許可します」
「目標、敵機動要塞! 撃てぇー!」
 重力波砲。荷電粒子砲とは違う、黒き雷光が空に奔る。
 命中率はさほどない武装だが、あれだけの巨大が相手ならば関係ない。
「着弾を確認、が未だ健在! 艦停止後に荷電粒子砲を撃ち込みます!」
「わかりました。連絡を」
「はっ! 『こちらウィスタリアよりテメレーアへ。これよりウィスタリアは艦移動停止及び荷電粒子砲の準備を…………』」
 
「うおお、この揺れは……グラビティキャノンか?
 荷電粒子砲発射より揺れてる気がするぜ」
 イコンデッキで戦況を想像する柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)
 驚くべきことに、戦闘が開始されてから今まで、
 一機として損傷したイコンが運び込まれてくることはなかった。
「やけに気合入ってたし、何かあったのかねぇ。
 まあ平和なのはいいことだ」

 ――――ズゴオオオンッ

「おわっ!? こりゃ、こっちの揺れじゃねぇぞ!?」
『報告! 敵要塞から荷電粒子砲に酷似した攻撃を確認。
 イコン部隊に甚大な被害が出ています』
「!? すぐこっちに回してくれ、全部だ全部!
 軽い重いはここで判断するから! さっさと回すんだ!」
 桂輔の脳裏に嫌な思い出がよぎる。
「もう、仲間のイコンは好きにさせない……! 整備班、気合入れていくぞっ!!」
 桂輔の言葉に「おう!」と返事をした整備班。
 程なくして、ウィスタリアのイコンデッキには次々とイコンが運び込まれることとなる。

「被害状況は?」
「敵機動要塞から荷電粒子砲に酷似した攻撃が飛来。
 威力・範囲共に通常の荷電粒子砲より増していることを確認。
 損傷した味方イコン機はウィスタリア及び友軍機であるユーゲントへ撤退中」
 ウィスタリア付近にいた味方イコンはほぼ壊滅、
 及び伊勢とテメレーアに展開していたイコンにも被害が出ている。
 機動要塞からの手痛い一撃。予想以上の攻撃は、予想を遥かに上回る被害を出した。
「イコン修復は味方戦艦に任せ、我が艦は攻撃に移るぞ。遂行すべき作戦を忘れるな!」
 ホレーショの一喝に船員の間に広がりつつあった動揺がピタリと止まる。
「主砲照準、敵要塞をロック」
「目には目を、歯には歯を。荷電粒子砲には、荷電粒子砲だ。てぇぇい!!」

「あらあら、随分と派手な登場に攻撃だこと。
 ジャニファー、奴さん達もう勝ったつもりでいるみたいだよ?」
「そのようね? じゃO・MO・TE・NA・SHI……
 いえ、教育して差し上げましょうか」
 テメレーアが再攻撃準備取り掛かったのを受けたキャロライン・エルヴィラ・ハンター(きゃろらいん・えるう゛ぃらはんたー)トーマス・ジェファーソン(とーます・じぇふぁーそん)が意味ありげな会話をしている。
 彼女達二人が駆るBB‐75 マサチューセッツもこの瞬間を首を長くして待っていたことだろう。
「H部隊は、何者にもく屈しない。
 ……尤も、それを理解する機会も暇すら、与えるつもりはないけど」
 マサチューセッツからは要塞砲が放たれる。
 要塞砲が面白いように当たるのは、敵機動要塞の大きさもあるだろうが、
 根本から鍛え上げられた二人の腕によるところも大きいだろう。
「ダストトゥダスト……塵は塵に、よ」
 マサチューセッツに乗るトーマスはそう呟きながら、唯只管に要塞砲を撃ち込んでいった。

 だが、イコン部隊に甚大な被害が出ているこの瞬間、それを敵が見す見すと見逃すはずはなかった。
 ガラ空きになったウィスタリアに敵イコンが殺到し始める。
 それを察したシュリー・ミラム・ラシュディ(しゅりー・みらむらしゅでぃ)ラクシュミー・バーイー(らくしゅみー・ばーいー)と共にシャンディに乗ってウィスタリアの援護へと向う。
『ウィスタリアに敵が群がり始めたわ。護衛に向って頂戴』
「了解したわ、狂った蝿を払えばいいのね」
 マサチューセッツから連絡を受けたシュリーが軽快な口調で返し、
 ラクシュミーは群がる敵をじっくりと観察しつつ、直行する。
 ウィスタリアが見えると、確かにその頭上には敵イコンが群がっていた。
 現在は生駒のイコン部隊がフォローに入っている。
 それに合わせるようにシャンディを操縦していくラクシュミー。
 幸いにもセラフィム機はおらず、迎撃するのにそう時間はかからなかった。
「……歯ごたえがなさ過ぎるわ。セラフィム機もいないし、どういう」
『マサチューセッツより、すぐに戻って。
 複数のセラフィム機が遠回りしてこちらに接近中……裏をかかれたわ』
 マサチューセッツの通達にラクシュミーは即座にブーストを吹かす。