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潜入、ドージェの洞窟!

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潜入、ドージェの洞窟!

リアクション

「うおぉぉぉ!? コウモリが戻ってきた!?」
 疾風の叫びがその場にいた全員の視線を上に向けさせた。
「キィィィィィィィィィィィッ!」
 人の耳にはいるギリギリの音でキィキィなく姿は、自分たちが一番合いたくなかったコウモリ達の姿であった。
「くそ、一気に蹴散らすしか……」
 と、クロセルが上に向かってランスを構える。
「けど、それにしちゃ数がちょっとあれだよね〜……」
 が、桜の冷や汗がにじみ出たかのような台詞に、苦虫を噛み潰したかのような顔をする。
「お〜い、四人とも〜!」
「一旦体勢を立て直しましょう。こっちの岩陰へ来てください!」
 戦闘をしていたメンバーから少し離れた地点で、月守 遥(つくもり・はるか)白雪 命(しらゆき・みこと)の二人が、ホーリーメイスを振って合図を出していた。
「そうだッ! なッ!!」
「一旦引きますか……!!」
 天井に群れたかと思うと、急降下して襲ってきたコウモリたちを切り倒し、なぎ払い、手傷を負いながらもみんなして後退する。毒をもらわなかったのは幸運であった。
「くそ、結構いやがるな……」
「えぇ、これではいかんせん外に出るのは無理ですね……」
「こら! 二人とも手当てするんだから、ギャーギャーいってないの!」
「まぁ、静かにしていただいたほうが、集中は出来ますね……」
「「う〜い」」
「ふふ、銃弾で撃たれた箇所もあっさりと治るのですから、魔法って便利ですわ」
「大丈夫ですか!?」
 と、奥のほうから声が。奥のほうからきたメンバーの一人、朱宮 満夜(あけみや・まよ)の声である。
「そちらのほうはもう大丈夫なのですか?」
 クロセルが腕の裂傷などを治してもらいながら尋ねる。
「えぇ、こちらのほうはなんとか。後はコウモリたちを何とかすれば……」
 と上を見るが、その数は多すぎる。全滅させて押し通るには人員が少なすぎるといってもいい程に。
「ふん、ともかく攻撃をするしかないだろう。逃げ切るには機動力不足だ」
 とは満夜の相方ミハエル・ローゼンブルグ(みはえる・ろーぜんぶるぐ)。魔力を集め、展開し、いくつかの火球を生成すると、弾幕を張るようにコウモリたちに向かって放つ。
「私もッ!」
 それにならって満夜も火術を放つが、
「多すぎる……!」
 敵の数が圧倒的過ぎる上、火術の攻撃に耐えるコウモリまでいた。正直手詰まりに近い感覚を、満夜は感じていた。
「ふん、たかが一回の攻撃が目に見えて通用しなかったからといって二発目を躊躇するようではたかが知れるな。だから足手まといなのだ」
 突き放すように言うミハエル。だが、満夜は逆に闘志に火をつけられたのか、火術に即興でアレンジを加え、炎の槍と形状を変化。貫通力を上げたそれで、確実にコウモリをしとめてみせる。
「なにか言ったのかしら?」
「上等だ……!」
 ニヤリと口元に少々の感情が浮かぶ。彼らは今、非常に楽しげだった。

「私達もお手伝いしますよ〜」
 と、どこか間延びした声でやってきたのはメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)セシリア・ライト(せしりあ・らいと)。ともにプリーストという一風変わったコンビだった。
「んじゃ、いっくよ〜! ヒール!!」
 二人して一気に回復させるその手腕はすさまじかった。ともかく早い。相乗効果というのがこれほどのものかと、舌を巻くほどである。
「いや〜、マジありがとな〜」
 とは治療してもらった武尊。
「なんでいるの!?」
 疾風はツッコんだ。それはもうツッコんだ。
「しょうがねーだろ? 入り口に向かってもにげれねぇんだし。第一、ここに隠れるまでに一応援護もしてるぜ?」
「ぐ……」
 そういってみせるカービンの残弾は0。流石にこの状況で彼をコウモリの群れに放り出すほど、彼らは外道ではなかった。
「あ、援護のついでにコケもらえりゃすんげー嬉しいんだけど?」
「調子こくな!」
「あの〜、喧嘩はいけませんよ〜。それにコケが欲しいのならあげますから〜」
「そうだね。あたしたち結構持ってきたから、少しぐらいならあげるよ?」
 と、メイベル達が疾風と武尊の間に割って入り、仲裁をする。
「わ〜、ありがとうございます〜♪」
「おぉ……、まさか本当にもらえるたぁな……。ものは言ってみるもんだぜ……」
「あの、お二方? 別にわざわざ採ってきたものくれてやる必要はないと思うぜ?」
「喧嘩するよりいいですよ〜♪」

「いかんせんきついですね。後ろのメンバーが攻撃されないように前線のラインを引くのが限界だ……!」
 ヒットアンドアウェイを繰り返しながら、ナイフで接近戦を繰り返しているルイス・オルゴン(るいす・おるごん)が岩陰にもどって、荒い息と共にそんな台詞を吐き出した。
「そーねー。わざわざこんな割りに合わない人助けなんかしなかったらこんな目にあうこともなかったでしょーねー」
 と、棒読みで嫌味ったらしく言うのはルイスのパートナーフィール・クレメント(ふぃーる・くれめんと)。彼にかけるヒールも、どこかぞんざいな感じである。
「情けは人のためならず。それでいいなじゃないですか」
「いいや、割りに合わないわね。第一、破壊力ありすぎて光条兵器が使えないってのがなんかも〜、あ〜……。絶対報酬割り増し貰ってやる」
「だったら、この状況をどうにかすることを考えるほうが先でしょう……」
 やる気がマイナス方向へだださがりの相方に呆れつつ、しかしどうしたもんかと頭をひねるルイス。と、
「あ〜、もしかしたら〜……」
 と、のっそりと杖を担いで出てきたのはルーシー・トランブル(るーしー・とらんぶる)。何かを思いついたのか、火術を放つ手も止めていきなり岩肌の外へ踊りでる。
「な、あぶない!?」
 という周りの声も聞かず、
「さては見てのお楽しみ〜ッ!!」
 思いっきり洞窟の壁をぶったたく。


ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん


「なぁ!?」
「わッ!?」
「ひッ!?」
「ギィィィィィィィィィィ!!?」
 その場にいた全員の鼓膜をぶちのめす暴音が、洞窟内に反響しまくって暴れる。
「おぉぉぉぉ……!? こ、鼓膜がかつてない感覚を〜……!! コレが恋ッ!?」
 が、一番ダメージを受けたのはんなことした当の本人で。
「これで活路が開けた!?」
 と、現状を認識できるようになったとき、洞窟の奥から光の塊が接近してきた。
「なんだ?」
 と、みんなが振り返るとそこには、
「どけどけーい!! 芦原涼子様の御通りでぇーい!!」
 光り輝くみことを先頭に、ヒカリゴケを食べて光り輝く集団となったメンバーが走ってきていた。
「な、なんぞ!? スーパーモード!?」
 中には光り輝くダンボールやら、全身ずぶぬれで背中に大きな荷物を背負った女がいたりと、なんというか、奇妙を超えた素っ頓狂な光り輝く集団がそこにあった。
「目的達成! みんな引くぞぉ!!」
 との掛け声が響き、現実がゲシュタルト崩壊していたメンバーに渇がはいる。一斉に出口目指して走り出す。
「っと!」
 その中でルイスはぶっ倒れたままのルーシーを担いで走る。
「うわ〜体が浮いた〜……これが恋の魔法?」
「いい加減こっち側に戻ってきてください……」
「って、おりょ? 上手くいったの? もしかして?」
「はい、おかげさまで。けれど、これからあんなことをするなら一言言ってからしてくださいね?」
「あ〜、思いついたからちょ〜っと試してみようと思っただけなんだけどね〜。ごめんね〜?」
 と、謝りつつも自分を救い上げてくれた姿にちっとばかりキュンッとしちゃうルーシーだった。
 などといってる彼らの先には耳押さえて突っ伏してる少女、もとい少年が。
「おぉぉ……!? なんだ、最近のコウモリの超音波はあんなすげぇのか……?」
 助けに走ったはずが、見方の予期せぬ攻撃にやられてしまったケイである。
「大丈夫ですか!?」
 と、彼をお姫様抱っこで抱え起こしたのは瑠璃。
「わ、わりぃ……」
 なぜだか凛々しく見えたその姿に、キュンっとしてしまうケイだった。

 更にいくと、
「うぅ、シンゴーシンゴー。世の中の風は冷たいよ〜……。シンゴー……」
 全裸の変態がいた。
「変態だ!?」
「無視するか?」
「むしろ踏むか?」
「いいえ、助けてあげてください」
 光り輝く涼子が、叫んだ。
「変態だって人間です!」
(もっともだ!?)
 しょうがないので手近にいた武尊が、コケも貰ったことだしとお姫様だっこで抱え起こしてやる。
 その漢らしい姿に、ちょっとだけ変熊仮面はキュンってしちゃうのだった。