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第11章 メイドinドリーム

「静香先生、お体の具合は大丈夫ですか?」
 セツカ・グラフトン(せつか・ぐらふとん)は静香の体調を気遣っている。
「見たところ異常はなさそうよ」
 戸隠 梓(とがくし・あずさ)の意見だ。
「心配をかけてごめん。昨日はちょっと眠かっただけだから、平気だよ」
 そう返事して、接客に出て行く。


 指名したのはルカルカ・ルー(るかるか・るー)と、朝野 未沙(あさの・みさ)朝野 未羅(あさの・みら)朝野 未那(あさの・みな)の4人。

 朝野三姉妹(実の姉妹ではない)については紛らわしいので、簡単に説明しておこう。未沙は地球人、未羅は機晶姫、未那は魔女だ。

 4人は胸に野望を秘めていた。その決意の固さたるや、グループアクション名

【メイドinドリーム☆】

と言うところから推して知るべし。ちなみにこのシナリオ唯一のグループアクションであった。

 未沙は手先の器用さを活かしてメイド服を何着かしつらえ、このリリーハウスに持ち込んでいた。これを静香に着せようというのである。
 いや、それだけではない。

 その場で着替えさせようというのだ。

 さすがにそれだと周囲の目もあるので、他人から見えないようにするための大きなシーツまで準備した。
 未沙自身もはじめからメイド服を着込み、話に乗ったルカルカもメイド服を着た。

「ご指名ありがとう。
 あぁ、たしか……今年の“ミス・百合園”コンテストで……」
 未沙は静香特別賞を獲っていたので、学校が違うにも関わらず静香は覚えていたのである。

「静香さん、今日はこのメイド服に着替えて欲しいの☆ ほら脱いで脱いで、脱がないなら脱がせちゃうよ♪」
「そ、そんな、ここじゃムリ……だよ……」
「それなら大丈夫」
と未羅、未那がシーツを持って取り囲む。

 人前で肌を露わにするのは、それが女性相手であっても静香にとっては恥ずかしい。にじりよる未沙を顔を見ているうち、ふと思い当たることがあった。追い詰められた静香は未沙の目を見てこう言った。

「未沙さん、僕がそのメイド服を着ることはできないよ……だって未沙さんは、僕ではない誰かのことを想ってそのメイド服を作ったんだよね?」
 未沙の動きが止まった。そうだ、あたしにとって一番大切な人は静香さんじゃなくて……
「想っている人がいるなら、大切にしないと、ね」
 やけになった静香はなんとか未沙の注意をそらそうとする。未沙はいてもたってもいられなくなって、そのままリリーハウスを出て行った。

 ルカルカ、未羅、未那の三人が呆然としている隙に、静香は控え室にとって返し、大急ぎでメイド服に着替えて戻ってきた。
「お嬢様がた、お待たせしました☆ メイドの静香ですっ♪」
 なんとか窮地は脱したようだ……


 お菓子とヒラニプラ茶を前にして、ルカルカが改めて挨拶。
「その節は大変でした。改めて感謝っ」
「ええ、カノンさんの件だね……でございましたわね♪」
「ムリしなくていいですよ、静香さん」
「あ……気をつかわせてゴメン」
 そんなかんじで、静香、未羅、未那は果実ジュースを飲みつつ閑談がはじまる。

 話題は恋話が中心になった。

 好みのタイプは? というルカルカの質問に対し静香は、頼れる人がいいと応えた。聞き返されたルカルカは、
「締まった筋肉で力持ち、背が高くて、優しい人っ」
と筋肉フェチぶりを発揮。
「ルカルカさん、今好きな人いるのー?」
と未羅がはしゃいで聞くと、
「名前、鷹村さん……。ダリルも応援してくれてる」
とあっさり白状した。

 最後にルカルカは静香の夢について尋ねた。静香は少し考えてから、
「みんなが仲良くすごせればいいな」
とだけ答えた。


静香の売り上げ:+700G(計1700G)


「キャバクラに来るのも久しぶりだな」
 ルカルカのパートナー、ドラゴニュートのカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)は別行動を取っていた。もともとは静香を指名するつもりでいたのだが、ルカルカたちの計画を知って同伴するのは遠慮しておいたのだ。
 カルキノスはドラゴニュートの女を指名しようとしたがいなかった。仕方がないので、教導団のメンバーで酒も飲めるエレーネ・クーペリア(えれーね・くーぺりあ)を選んでおいた。

「ご指名ありがとうございます、エレーネ・クーペリアです」
 淡々と告げるエレーネ。もともと感情表現に乏しいので、あまり接客向けとは言えない。しかしカルキノスは酒が飲めればよかったので、そのあたりは気にならない。適当にビールとつまみを頼む。

「随分健全なキャバクラだな。竜族の女が居たら口説くんだが……おっと、いい酒」
 すぐにビールを飲み干して、次の酒を頼むという具合。たまたまそばを通ったダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)を捕まえると、
「お前も楽しめ。おら飲めっ!」
とむりやり飲ませようとする。ダリルはそのまま一本飲みきったのでカルキノスは感心した。

……そのあと、ダリルは人目につかないところでキュアポイゾンを使った。


エレーネの売り上げ:4500G


第12章 人間椅子倶楽部

この章では客として青空 幸兔(あおぞら・ゆきと)、ドリームメイデンとして羽高 魅世瑠(はだか・みせる)フローレンス・モントゴメリー(ふろーれんす・もんとごめりー)が登場しますが、都合により後半部分のみの描写となります。

ご了承ください。



 ソファの中に収まった幸兔は今までにない興奮に包まれていた。
 誤解のないよう、詳しく書き記そう。
 ソファーの下側に出入り口を作り、中のクッションを取り除いて、そこに入り込んでいるのだ。

 ジャッカルの耳とビキニを身につけた魅世瑠が、わざと乱暴にソファに座る。
 ソファーのなかから、くぐもった声が聞こえる。

 魅世瑠は渋い顔をして、指先で合図を送った。こいつはあまり金を持ってなさそうだ、というサインだ。ローグとして訓練を積んだ魅世瑠には、なんとなく見当がつくのである。
 しかしお客さまはお客さまだ。それが若干特殊なものであったとしても、ご希望に添うよう努力すべきだろう。

 コヨーテの耳とビキニ姿のフローレンスが、ソファの背の側からしなだれかかる。
 そのままフローレンスが両腕を伸ばして、背もたれごしに魅世瑠を抱きしめようとする。
 魅世瑠はくすぐったがるような笑い声を上げて、ソファの上で大げさに身もだえする。

「喉が渇いてきたよ、果実ジュースを頼もうかな」
「いいね、頼もうよ」

 ソファーから聞こえる、呻くような声。

 ジャッカルとコヨーテが改めて乾杯し、ジュースを飲みはじめる。
 その途中で魅世瑠の手元が狂い、ジュースがソファーにこぼれた。
 もちろん、わざとだ。

「いけない、ソファーを濡らしちゃったよ」
「濡れてるねえ」
「拭かないと大変なことになっちゃうよ」
「よーく、丁寧に拭かないとねえ」

 ふたりはテーブルの上にあったおしぼりをもって、ソファーの濡れたあたりを拭いた。しかししばらくすると、今度はフローレンスがジュースをこぼしてしまう。

「今度はあたしの服まで濡れちゃったじゃん」
「ゴメンゴメン、いま拭くよ」
 フローレンスが魅世瑠の体を拭く。そのたびに体が揺れて、振動がソファーにまで伝わる。


 時間が近づいて来たので、魅世瑠とフローレンスは先に部屋を出た。
 あとで売り上げを聞いたところ、魅世瑠の勘は当たっていたようだった。


魅世瑠(とフローレンス)の売り上げ:850G