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4.バトルプラティコ

「さあ、そろそろプラティコを破壊しないと。時間がたてばたつほど被害が大きくなるから。サクラ、図書館前で待ち伏せて一緒に挟撃しよう・・・・・・ナイトは地味な仕事。普通に殴るが王道だからね」

 装置を早く止めなければと焦るルイス・マーティン(るいす・まーてぃん)は、パートナーのサクラ・フォースター(さくら・ふぉーすたー)にこう呼びかけていた。

 だが、もうひとりのパートナー、グレゴリア・フローレンス(ぐれごりあ・ふろーれんす)は、戦いより本に興味があるようだ。

「ちうてもわしは素人同然なので、図書館の中で防衛線引くだけなのじゃが・・・・・・」

 こういって、しきりにちらちらと本を読んでいる。

 水神 樹(みなかみ・いつき)朱宮 満夜(あけみや・まよ)らも、装置の破壊に協力しようと加わった。

 しかし、彼らの前にカーラ・シルバ(かーら・しるば)が立ちはだかった。

「機械を道具としか思わないような人は、私が壊してあげます」

「カーラ、やめて。プラティコを止めないと危険なの」

 しかし、朱宮 満夜の言葉にもカーラ・シルバは耳を貸さない。

「勝手に作っておいて、それが思い通りにならないと今度は壊す・・・・・・。同じ機械として、無性に腹が立ちます」

 カーラ・シルバにつづいて、夜薙 綾香(やなぎ・あやか)メーガス・オブ・ナイトメア(めーがす・ないとめあ)も加勢した。

「装置を破壊する者は、私が許さない。図書館に着けばこっちのもの。カーラ、私たちと連携して装置を守るわよ」

 夜薙 綾香は、そこここに仕掛けてあるロープのトラップをアシッドミストで破壊しながら、カーラ・シルバに援護を約束した。

 カーラは、夜薙に目でうなづくと『機晶姫強化パーツカタログ・2019冬』と書かれたカタログ本をプラティコに取り込み、出てきたものを素早く装備した。

「これが機晶姫の力です!」

 カーラは、水神 樹の動きを腕で止めると、目からビームを発射した。

「うわっ!」

 水神 樹は、思わず肩口を押さえる。

「ふ・・・・・・地球人には真似できないでしょう」

 夜薙 綾香も、すかさずプラティコに子供向け怪獣辞典を入れて、破壊者たちに向かわせる。

 怪獣どもが火を噴いて戦っているのを見て、メーガス・オブ・ナイトメアはこうつぶやいた。

「追撃者も増えてきたし、そろそろ、アレをやる時だな」

 そういうと、メーガスは、あらかじめ、ある内容を書き込んでおいた本を装置に投入した。

 すると、強そうな魔物や悪魔の姿をした「エキストラ」が、メーガスの周りにあらわれたのだ。

 ここぞとばかり、メーガスは破壊者たちに向かって高らかに宣言した。

「我はメーガス・・・・・・悪夢の王なり。此処より先を通るならば相応の覚悟を持ってくるがよい!」

 ルイス・マーティンらは、何が起こるのかと、グッと体勢を低く構えたが・・・・・・悪魔たちは攻撃を開始することはなく、代わりに歓声を上げたのだった。

「キャー、メーガスさーん!」

 見た目、強面の魔物たちが、黄色い声援をあげてメーガスを称えている。

「うむ、これ一度やってみたかったんだよ」

「なんだこりゃ?」

 喜びはしゃぐメーガスに、ルイス・マーティンは、拍子抜けした。

 が、その横でカーラ・シルバが、両手を上に上げ、攻撃の構えを見せていた。

「さあ、トドメです。機晶姫のみんな、オラに元気を・・・・・・いえ私にSPを分けてください」

 朱宮 満夜と水神 樹も、防御体制に入る。

 ところが・・・・・・トドメが発動されない。

「む・・・・・・おかしいですね。やり方は合っているはずですが・・・・・・」

「ターーーーッ」

 水神 樹の繰り出すハルバードが、カーラ・シルバを吹っ飛ばす。

 ボヨヨヨヨーーーーン!

 カーラ・シルバの腕に装着してあるロケットパンチが、ぶざまにバネをのぞかせていた。

 やはり、プラティコの調子は狂っていたみたいだ。

「カーラ、わかってね。プラティコは止めなきゃいけないのよ」

 水神 樹の呼びかけが聞こえているのか、返事をしないカーラ・シルバの頭のまわりには星が舞っていた。

 そこに、御陰 繭螺(みかげ・まゆら)フェルセティア・フィントハーツ(ふぇるせてぃあ・ふぃんとはーつ)が駆けつけた。

「あ、怪我をしている人がいる。助けなくちゃ。フェルセティア、一緒に手伝って。あ、いろいろと面白そうなものがあっても気をとられちゃダメよ」

「了解! 任せて、繭螺」

 そういうと、2人は怪我人の治療をするため、保健室へと向かっていった。


※ ※ ※



「やれやれ、とんだ邪魔が入ったね。よし、装置を破壊するよ」

 サクラ・フォースター(さくら・ふぉーすたー)はこういうと、プラティコめがけて豪雷閃を放った。

 水神 樹もハルバードから轟雷閃をきらめかせ、秀真 かなみ(ほつま・かなみ)も掛け声とともに射撃を開始した。

「海猫海賊団出撃。あったれー!!」

 ドーン!

 3人の攻撃を受けたプラティコは、大きく傾いだ。

 すかさず、朱宮 満夜(あけみや・まよ)が雷術で追撃。

 苦しそうにもがくプラティコ・・・・・・

「さあ、もう一息だ」

 ルイス・マーティンがチェインスマイトを振りかぶると・・・・・・突然、後ろのほうから女性たちが「ワーッ」と鬨の声を上げた。

 ルイスたちが振り返ると、そこにいたのは、さきほどクロセル・ラインツァートが出したグラビアアイドルたちがいた。

 いや、彼女たちはもはや、グラビアアイドルではなかった。

 そこにいたのは、ギリシア神話に登場する「アマゾン」を髣髴とさせる女戦士たちだった。

 彼女らは、自分たちを生み出した、プラティコが破壊されることを恐れ、ルイス・マーティンたちに襲い掛かってきたのだ。

 応戦するルイスたち。

 ガキーン!

 剣戟の音がこだまする。

 しかし、女戦士たちは強い。とても、水着のグラビアアイドルとは思えない。

 そこに、オフィーリア・ペトレイアス(おふぃーりあ・ぺとれいあす)が援軍として加わった。

「この女戦士らは、俺様がひきつける。みんなは、早く装置の破壊を!」

「オフィーリア、恩に着る」

 ルイス・マーティンはこういうと、仲間たちの攻撃で弱ったプラティコめがけて、チェインスマイトを思い切りぶちかました。

グアオオオオオオーーーーーーン

 装置は、断末魔の轟音をたてて、崩れ落ちていった。


 すると、後方でオフィーリア・ペトレイアスと戦っていた女戦士たちの姿が消え、そこには一冊のグラビア本が落ちていた。

「終わったのか?」

 驚くオフィーリアに、朱宮 満夜はこういった。

「プラティコが壊れたので、実体化したものたちも、元の姿に戻ったのね」

 ふと周りを見ると、30輌ほど並んでいた戦車も姿を消し、カタログ本だけが残っていた。

 葉 風恒の出してしまった「救い主」もいつの間にか消え、聖書に戻ったようだ。

「とにかく、図書館を守れてよかったのう」

 グレゴリア・フローレンスは、一番の心配事が解消されて、ほっとしていた。