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3.捕獲大作戦!?

 いよいよ、イルミンスール大図書館の手前では、装置を捕獲せんと仕掛けを確認する者、破壊せんと手ぐすね引いている者たちが、所狭しとひしめきあっていた。

 朝野 未沙(あさの・みさ)は、そんな中、図書館を守る為に囮の本を探している人をみつけるては、持ってきた本を配り歩いている。

「あ、そこの方、囮の本をお探しですか? それならこの本を使ってくださいね!」

 しかし、受け取った側がその中身を見てみると・・・・・・それは戦車の本だった。

『えへへ、みんなに渡したから、戦車が何両作られるかな? 作られた戦車を捕獲して、解体したいなぁ・・・・・・でも、装置の捕獲は一人ではムリね。装置がおとなしくなるタイミングをみないと』

 未沙は、ひとり妄想にふけっていた。

 さて、そうこうするうちに、轟音を立ててプラティコが走りよってきた。

 これを追うのはガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)

 彼女は自身がもつスキルを最大限に使って、プラティコに追いついた。

「これはおもしろい!」

 そういうと、ガートルードは用意してきたお気に入りのロボット資料をプラティコに投げ込んだ。

 すると、本を取り込んだプラティコは「グィーーーン」と唸り、巨大ななにかを現出させていた。

 それは、ロボットだった。

 もう少し詳しくいうと、それは、某有名漫画家が描くモーターヘッド風の無敵ロボットで、その高さは18メートルにも及ぶ長大なもの、風貌は全身を鎧でまとった西洋風騎士の姿をしていた。

「やったわ!」

 ガートルードは、実体化の成功に嬉々として、現れたロボットに近づいていった。

 その性能は・・・・・・ガス欠しない謎の物理エンジンは、出力1兆馬力の代物。さらに、自動修復する謎の金属装甲で、万全の耐魔法仕様となっている。

 さらに、ロボットの腕には、15メートルにも及ぶ長大な大太刀が、光を受けてきらめいている。

 まさに、人間を10倍の大きさにしたこうなるだろうというロボットであった。

 ガートルード・ハーレックは、実体化したロボットに乗り込むと、コックピットの中で、操縦者の動きをトレースしはじめた。

「操縦方法はパワードスーツ方式よ。このロボットは人間の10倍の大きさだけど、操縦者と同時に動くという特徴をもっているの。つまり、10倍で同時だから、10倍のスピードで動くのよ」

 そう言い放つや、ガートルードはロボットを動かし始めた。

ガーーーーーーーーーーーーッ

 ロボットは、ものすごい速さで走り始める。

 と、勢い余ったロボットがプラティコに衝突し、装置が横転した。

「今よ、みんな! 本を投げ込んで!」

 朝野 未沙の叫び声とともに、20〜30冊の本がプラティコに投げ入れられる。

グォォォォーーーン!!!

 ものすごい機械音とともに、あたりに砂埃が立ち込める。

 次の瞬間、魔法学校の中庭は戦車の車庫と化していた。

「やったわ! これで、解体し放題ね」

 こういうと、朝野 未沙は嬉々として、戦車の群れに走り寄っていった。


「さあ、私たちも作戦開始よ」

 朱宮 満夜(あけみや・まよ)はそういうと、持ってきた本や古紙に炎術で火をつけた。

 プラティコは、火がついているのもかまわず、それらを自らの体内に取り込んでしまった。

 すると・・・・・・装置の中から火の粉にまみれたパンツが出てきた。

「しまった。ランジェリーの広告チラシが燃え残ってたみたい」

 朱宮 満夜は顔を赤らめる。

 ついで、装置の中から、なにかを読み上げる声が聞こえてきたのだ。

「メリークリスマス! 満夜、いつも優しくしてくれて感謝してます・・・・・・」

 これを聞くと、今度はミハエル・ローゼンブルグ(みはえる・ろーぜんぶるぐ)が慌てふためいた。

「わ・わ・わ、止めて止めて!」

「ミハエル、これはなに?」

「いやぁ、なんでもないよぅ」

 実はこれは、ミハエルが満夜に送る予定のクリスマスカードの没原稿だったのだ。

 日ごろの感謝を書き記したものだが、ラブレターと勘違いしそうな文面だったので捨てたのだが、古紙の中にまぎれてしまっていたらしい。


「ははは!! よし、俺もやるか!」

 恥ずかしがる満夜たちを尻目に、クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)は、持ってきたイルミンスール人気ナンバーワンのグラビア写真集を紙袋から取り出し、プラティコめがけて投げ込んだ。

 すると・・・・・・

 あたりが急にピンク色になり、目も彩な水着姿のグラビアアイドルたちが飛び出してきた。

「うおおおおおおおおおおおーーーーーっ」

 男子生徒たちのどよめきが、魔法学校全体をつんざいた。

「やった、やった、やったぞ!」

 クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)は、小躍りすると、美しいグラビアアイドルの群れに突入していった。

「うーん、これは素晴らしい。至福とはこういうものか」

 目じりを下げ、鼻の下を伸ばすクロセル。

 さらに、同じ目的を持つ男子生徒たちも、クロセルに続く。

 彼と同じく悦に入った鳥羽 寛太(とば・かんた)は、クロセルをこう褒め称えた。

「クロセル、やったね。さすがはお茶の間のヒーロー! 男子学生の夢を叶えた功績は計り知れないよ」

「そうかいそうかい、えへへへ。まぁ楽しんでいってくれよ、寛太さん」

 戦場と化している周囲の状況などお構いなしに、すっかりご満悦である。

 もうひとり、お構いなしなのが、クロセルのパートナーマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)だ。

 マナのほうはといえば、スイーツの写真を実体化させ、これまた上機嫌でパクパクと食べている。

「うーん、クロセルの暴走にブレーキをかけなきゃいけないんだけど・・・・・・おいしいからもうちょっと食べさせて・・・・・・」

 そこへ駆けつけたのが水神 樹(みなかみ・いつき)絹屋 シロ(きぬや・しろ)だった。

 ふたりは、クロセル・ラインツァートらが実体化したグラビアアイドルたちに囲まれているのを見て、歯噛みした。

「しまった、一足遅かったか」

 男の野望成就を狙う者たちに容赦はしない。そう心に決めていたた水神 樹は、ハルバードをガチャリと握り締めると、淫靡な快楽にふけっている男子学生の群れに突入していった。

「コラー、やめなさーい!」

 ものすごい形相で武器を振り回す水神 樹にとって、メロメロになっていた男子学生どもはもはや敵ではなかった。

 絹屋 シロのほうも、女の子が困っている時は限り力の限り救出するというポリシーを持っている。

 グラビアアイドルたちを安全な場所に避難させるとともに、群がっていた男子どもを蹴飛ばしていった。

 彼らの活躍により、あっという間に、ピンク色の雰囲気は雲散霧消してしまったのである。

「師匠 すごーい!」

 秀真 かなみ(ほつま・かなみ)も、パートナーの活躍にご満悦の様子だった。

「ざっと、こんなものよ。さあ、かなみ、動物の本を入れましょ」

 そういうと、水神 樹はプラティコに実体化させた犬、猫、うさぎを見て喜んでいた。

 特に、犬は土佐犬が出てきたので、もう樹は狂喜乱舞していた。

「あ、動物かぁ、かわいいねぇ」

 水神 樹の出した犬や猫を見て、清泉 北都(いずみ・ほくと)は微笑んだ。

 慎重な北都は、装置を確実に捕獲するため、『禁漁区』で敵の位置を感知したり、捕獲を試みる生徒たちと携帯電話で情報を伝え合ったりして、ここにやってきた。

「ここなら退路を断てそうだね。確実に捕獲しなきゃ」

 いろいろなものを取り込んで、行き止まりの道に入り込んだプラティコを見て、北都は、自分が持ってきた本を取り出した。

「今なら、生徒たちに囲まれて、逃げられないぞ」

 これを聞いたパートナーの白銀 昶(しろがね・あきら)は、ロープをサッと取り出すと、素早くプラティコを縛り上げた。

「今だ。それっ」

 清泉 北都が投げ込んだ本は、たちまち愛らしいぬいぐるみに変化した。

「うにゃーー。もふもふだあ。これはお持ち帰り決定だね・・・・・・写真だけじゃこの手触り感は味わえないよ」

 しかし、喜んでいるのも束の間。やがて、装置は簡単にロープから逃れると、また動き始めた。

「あ、危ない。よし、おっさん、計画を実行だ」

 こう言い放ったのは佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)

 彼は、持ってきた囮本を撒く順番まで決めておくほど、入念に準備してきたのである。

 まずは料理の本、次は鎧や甲冑などの美術書を放り投げると、プラティコはたちまちそれらを取り込んだ。

 すると、おいしそうなホカホカ料理につづいて、頑丈そうな鎧やらが出てきた。

「うまくいったね。プラティコは元々料理のレシピ本を取り込むって聞いてたから、これは後で食べよう。で、こっちの武器と防具はおっさん用だ」

「承知つかまつった」

 そういうと、熊谷 直実(くまがや・なおざね)は美術書から出てきたさすまたを手にした。

「やっぱりこういう武器が落ち着くねぇ」

 使い慣れた武器は、手にしっくりとなじむものだ。

 熊谷 直実は、武人としての血が熱くたぎってくるのを感じ、さすまたをふりかざすと、すばらしい槍さばきでプラティコの動きを封じ込めた。

「さすがはおっさん! よし、次はこれを使ってくれ」

 佐々木 弥十郎は、いつのまにか通販のカタログを装置に取り込むと、そこからロープやブルーシートを出していた。

 熊谷 直実は、それらの道具を使うと、またたく間にプラティコをグルグル巻きに捕縛してしまった。

「やったぞ! よし、仕上げは、仁科発案の電話帳を取り込ませよう。電話番号なんて実体化できない本を取り込んだら、装置内の魔法ロジックがおかしくなり機能が停止するかもしれないからね」

 そういって佐々木 弥十郎は、電話帳を装置に投げこんだ。

 すると、プラティコはしばらくウンウンと唸り声のような音を発し、バーンという轟音とともに、ロープとシートを突き破ってしまった。

 あたりには、数字の形をしたクッキーがそこらじゅうに散らばっていった。

「こういうオチってありなの??」

 ともかく、プラティコは停止するどころか、ますます暴走の度合いを強めていったことは間違いない。


※ ※ ※



「よーし、次は俺様の番だ」

 そういって颯爽と登場したのは変熊 仮面(へんくま・かめん)だった。

 すると、鳥羽 寛太(とば・かんた)がいたずらっぽく変熊 仮面を遮った。

「ちょっと待って。邪魔な囮本は回収しましょう・・・・・・お、これは良い本です。頂いておきますか。こっちは・・・・・・いらないや。火術で燃やしてしまおう。えいっ」

「貴様、なにをやってるんだ?」

「ハハハ、変熊さんの露払いですよ。本を実体化して楽しもうっていう人には協力することに決めたんです・・・・・・お? これは食いつきがいいですね。やっぱり魔法関連の本が一番かな?」

「そんなものより、こっちのほうが面白いぜ!」

 そういって、変熊 仮面は、手に持っている雑誌『超淫乱・・・・・・』を鳥羽 寛太に見せつけた。

「おおー! これはいいですね!」

「いくぞ、それっ」

 そう掛け声を発すると、変熊 仮面は、なんのためらいもなく、雑誌を装置に投げつけた。

 すると・・・・・・

 出るわ出るわ・・・・・・

 思わず目を覆いたくなるような男の世界が、清楚な魔法学校に現出した。

 確かにそれは、クロセルが目論むグラビアアイドルとは似て非なるものであった。

「うわぁっ」「きゃあっ」

 周りにいた生徒たちは、男も女も一斉に言葉にならぬ悲鳴を上げて、混乱状態となった。

「こ、これはなんと素晴ら・・・・・・いや、危険な! 今すぐ司書に知らせねば! あ、『超淫乱ガチ野郎』・・・・・・あいつが薔薇学なのを忘れてた」

 そういうと、変熊 仮面は図書館に向かって行軍をはじめた。


 ざっ!ざっ!ざっ・・・・・・廊下を進む百人近い全裸、半裸のガチムチ体育系男子。

 それを率いるは、全裸に薔薇学マント、赤マフラーの変熊 仮面!

 これを見た鳥羽 寛太は、もう興奮状態になって叫んだ。

「これはすごい。仮面とマントを実体化すれば、僕も憧れの仮面マントになれますかね?」

 そういうと、持ってきたカタログを装置に放り込み、出てきたもので素早く仮装した。

「おっと、服は脱がないといけないんでしたっけ?・・・・・・はっ! こ、この開放感・・・・・・! こんなの初めて・・・・・・。おや、何をやってるんです。クロセルさんも早く脱ぐのです」

 うっとりと恍惚感に浸る鳥羽 寛太は、こういうと、ガチムチ体育系男子の行軍に加わる。


「嫌なら見るな! 嫌なら見るなっ!」

 変熊 仮面と体育系男子の一行は、大手を振って校内を練り歩き、大図書館を目指している。

 校内には、むさ苦しい男たちの声がこだまする。

「はっはっはー! どけどけー! 仮面マントのお通りだー!」

 鳥羽 寛太も、見られる喜びを隠そうともせず、まさに得意満面そのものだった。


 図書館に到着すると、変熊 仮面は、得意げに号令を下した。

「ようし、皆の者! 司書さんに失礼のないようにアソコを隠せ!」

「オッス!」

 百人の全裸野郎どもは手近な本で局部を隠し、驚く司書の前を行軍した。

「うわぁ。もうあの本読めない・・・・・・でも、やめられないのだよ」

 収集がつかなくなったのは変熊 仮面だけでなく、鳥羽 寛太も同じだった。

 外にいるプラティコに聞こえるように、大声でこう呼びかけた。

「さあ! 思う存分本を取り込むのです!」


「コラーッ。やめなさーいっ」

 いきなり、大きな声とともに、上から変熊 仮面に体当たりしたのは、秀真 かなみ(ほつま・かなみ)だった。

 光学迷彩で姿を隠していた秀真 かなみは、全裸行進に酔いしれていた変熊 仮面の隙を突いて、上から落下傘攻撃を仕掛けてきたのだ。

 つづけて、かなみのアサルトカービンが、全裸・半裸の男どもを右へ左へと薙ぎ払う。

 秀真 かなみのすさまじい攻撃に対して、武器・防具を持たない男たちは、なすすべもない。

 かなみにつづけて、図書館に駆けつけたアシャンテ・グルームエッジ(あしゃんて・ぐるーむえっじ)も、不届き者の征伐に加わった。

「・・・・・・騒がしいのは、苦手だ・・・・・・」

 アシャンテは、冒険者としての過去の経験と、記憶を失う前から持っていた身体能力を駆使して、無駄な戦闘を回避しつつ、校舎外を通るというショートカット技を使って、最短経路でここにやってきたのだ。

 彼女の右手には麻痺銃、左手には逆刃に持った刀が握られている。

 そして、彼女の体からは狼の耳と尻尾が生え、左目が金色に光りはじめたのだ。

「悪乗りする者には手加減しない」

 そういうと、アシャンテは、沸き起こる苛立ちを左手の刀に込めて、体育系男子たちにぶつけたのだ。

 アシャンテの鮮やかな太刀さばきに、ひとり、ふたりと変熊 仮面が実体化させたガチムチどもは、その数を減らしていった。

 そして・・・・・・

「変熊 仮面! 鳥羽 寛太! 騒ぎを起こした罪は大きいぞ」

 2人に向き直ったアシャンテは、こう言い放つと、麻痺銃を発砲した。

 ばったりと倒れる2人。

「校舎内なので、怪我人を増やしたくないからな」

 こうして、体育系男子たちの騒ぎは、一応終息したようだ。


※ ※ ※



 さて、場面はまたプラティコのある場所に戻る。

 といっても、もう装置は図書館とは目と鼻の先にあるのだが・・・・・・

 絹屋 シロ(きぬや・しろ)は、装置を捕獲せねばという使命感を持ちつつも、持参した楽譜を取り込んだらどうなるのかを試したかった。

 これを聞いた夜薙 綾香(やなぎ・あやか)は、絹屋 シロと協力してプラティコを誘導すべく、動いた。

 まず、絹屋 シロが、楽譜で装置をおびき寄せる。

 プラティコが楽譜のほうに向かったら、夜薙 綾香はすかさず氷術を唱え、本の後ろに大きな氷塊を作って、後戻りできないようにした。

 そうやって安全な状態にすれば、後はプラティコが勝手に楽譜を取り込むのを座して待てばよい。

 思惑どおり、装置は楽譜に気がつくと、それを食べるように体内へと放り込んだ。

 やがて、プラティコからは、その楽譜に書いてあるとおりの音楽が流れ始めた。

 クラシックの管弦楽曲だ。

「ああ、美しい。このプラティコって装置、音響機器としても一流じゃないか!」

 絹屋 シロは感嘆する。

 弦楽器の音色、木管・金管楽器の音、そして打楽器の叩く音までが、まるで生演奏を聴いているかのごとく、ダイレクトに耳へと伝わってきたのだ。

「ステキね。なんかみんな、この装置を使って変なものばかり出したがるけど、シロさんの出したものは他とは違うわ」

「えへへ、ありがとう。綾香さんにそういってもらえるとうれしいです。それに、音が鳴っていれば、プラティコがどこにいるかわかるから、一石二鳥だと思ってね」

「へぇー、そこまで考えていたんだ。シロさん、すごーい!」

 誉められた絹屋 シロは、とてもうれしそうだ。

 と、音楽を聞きつけたマシュ・ペトリファイア(ましゅ・ぺとりふぁいあ)がやってきた。

「これはわかりやすいねぇ! プラティコの位置が一発でわかるよ」

 マシュはそういうと、持ってきたノートを装置に放り込んだ。

 するとたちまち、凶暴なコカトリスが飛び出した。

「危ないぞ! 目を見るな!」

 マシュ・ペトリファイアは、コカトリスの目を直視しないように気をつけ、なおかつ、凶鳥のブレスが届かない距離を保った。

 そして、コカトリスに向けて「適者生存」を放った。

 結果は・・・・・・成功だ。

 コカトリスは、マシュ・ペトリファイアの威に服し、おとなしくなった。

「よし、うまくいった。帰るぞ」

 そういって、マシュ・ペトリファイアはコカトリスを肩に乗せると、持って帰ることにしたのだ。


「ふう、危うく石にされるところだったよ。」

 捕獲班の前衛を務めていた八神 誠一(やがみ・せいいち)は、こういうと、用意した本をプラティコに投げ入れた。

 すると、装置からなにか透明なマントのようなものが出てきた。

 八神 誠一が、そのマントを羽織ってみると・・・・・・なんと、彼の姿が消えた!

「おお、これだこれだ。これさえあればゆっくり昼寝ができる」

 姿の見えなくなった八神 誠一に、パートナーのオフィーリア・ペトレイアス(おふぃーりあ・ぺとれいあす)は慌てふためいた。

「あれ? 誠一がいなくなっちゃった。おーい、どこに行っちゃったのー?」

『さあ、オフィーリアに見つからないように逃げよう』

 パートナーの怒りから逃れるべく、八神 誠一はこの場から遁走した。


「人が消えてしまうなんて、すごいな。だが、これらの本を取り込んだらどうなるんだ?」

 こう言い放ったのは葉 風恒(しょう・ふうこう)

 彼は、持ってきた中国の歴史書やら、難解な哲学書など、小難しい本を山と抱え、プラティコめがけて投げつけた。

 それらの本を取り込んだプラティコは、美しいクラシック音楽の演奏をやめ、グワーンという異常音を発しはじめた。

「あれ、どうなってるんだ? 何も出てこないぞ。では、聖書ならどうだっ!」

 そういって、分厚い本を投げ込むと、装置から煙が立ち上り、中から半裸の男が現れたのだ。

 その頭には、茨の冠をかぶり、両手と腹に傷跡がある。

「あ、あ、あなたは誰?」

「わたしは救い主です。本来、もうちょっと後の時代にこの地上に再臨するはずだったのですが・・・・・・あなたが私を呼び出したのですね?」

「ひえぇぇぇぇ、ごめんなさーい」

 葉 風恒は、自分がとんでもないものを出してしまったと恐々たる思いにかられ、その場を逃げ出した。


 一方、プラティコはといえば、難しい書物をいくつも放り込まれて、異常な音を発し続けている。

 どうやら、エラーを起こしてしまったようだ。

「なんだか、装置の調子がおかしくなっちゃったみたいね。壊れないうちに、早くしなきゃ」

 こういうと、ヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)は、急いで宝の本やら武器の資料を投げつけた。

 ところが・・・・・・

 出てきたものはといえば、キンキラの安っぽいアクセサリーだの、武器の格好をしたおもちゃだのが出てきた。

「はぁー? なによこれ! うーん、悔しい。こうなったら、テスタ先生の研究室に忍び込むしかないわね」

 そういって、ヴェルチェ・クライウォルフは研究棟のほうに駆け出していった。