リアクション
※ ※ ※ 「よーし、次は俺様の番だ」 そういって颯爽と登場したのは変熊 仮面(へんくま・かめん)だった。 すると、鳥羽 寛太(とば・かんた)がいたずらっぽく変熊 仮面を遮った。 「ちょっと待って。邪魔な囮本は回収しましょう・・・・・・お、これは良い本です。頂いておきますか。こっちは・・・・・・いらないや。火術で燃やしてしまおう。えいっ」 「貴様、なにをやってるんだ?」 「ハハハ、変熊さんの露払いですよ。本を実体化して楽しもうっていう人には協力することに決めたんです・・・・・・お? これは食いつきがいいですね。やっぱり魔法関連の本が一番かな?」 「そんなものより、こっちのほうが面白いぜ!」 そういって、変熊 仮面は、手に持っている雑誌『超淫乱・・・・・・』を鳥羽 寛太に見せつけた。 「おおー! これはいいですね!」 「いくぞ、それっ」 そう掛け声を発すると、変熊 仮面は、なんのためらいもなく、雑誌を装置に投げつけた。 すると・・・・・・ 出るわ出るわ・・・・・・ 思わず目を覆いたくなるような男の世界が、清楚な魔法学校に現出した。 確かにそれは、クロセルが目論むグラビアアイドルとは似て非なるものであった。 「うわぁっ」「きゃあっ」 周りにいた生徒たちは、男も女も一斉に言葉にならぬ悲鳴を上げて、混乱状態となった。 「こ、これはなんと素晴ら・・・・・・いや、危険な! 今すぐ司書に知らせねば! あ、『超淫乱ガチ野郎』・・・・・・あいつが薔薇学なのを忘れてた」 そういうと、変熊 仮面は図書館に向かって行軍をはじめた。 ざっ!ざっ!ざっ・・・・・・廊下を進む百人近い全裸、半裸のガチムチ体育系男子。 それを率いるは、全裸に薔薇学マント、赤マフラーの変熊 仮面! これを見た鳥羽 寛太は、もう興奮状態になって叫んだ。 「これはすごい。仮面とマントを実体化すれば、僕も憧れの仮面マントになれますかね?」 そういうと、持ってきたカタログを装置に放り込み、出てきたもので素早く仮装した。 「おっと、服は脱がないといけないんでしたっけ?・・・・・・はっ! こ、この開放感・・・・・・! こんなの初めて・・・・・・。おや、何をやってるんです。クロセルさんも早く脱ぐのです」 うっとりと恍惚感に浸る鳥羽 寛太は、こういうと、ガチムチ体育系男子の行軍に加わる。 「嫌なら見るな! 嫌なら見るなっ!」 変熊 仮面と体育系男子の一行は、大手を振って校内を練り歩き、大図書館を目指している。 校内には、むさ苦しい男たちの声がこだまする。 「はっはっはー! どけどけー! 仮面マントのお通りだー!」 鳥羽 寛太も、見られる喜びを隠そうともせず、まさに得意満面そのものだった。 図書館に到着すると、変熊 仮面は、得意げに号令を下した。 「ようし、皆の者! 司書さんに失礼のないようにアソコを隠せ!」 「オッス!」 百人の全裸野郎どもは手近な本で局部を隠し、驚く司書の前を行軍した。 「うわぁ。もうあの本読めない・・・・・・でも、やめられないのだよ」 収集がつかなくなったのは変熊 仮面だけでなく、鳥羽 寛太も同じだった。 外にいるプラティコに聞こえるように、大声でこう呼びかけた。 「さあ! 思う存分本を取り込むのです!」 「コラーッ。やめなさーいっ」 いきなり、大きな声とともに、上から変熊 仮面に体当たりしたのは、秀真 かなみ(ほつま・かなみ)だった。 光学迷彩で姿を隠していた秀真 かなみは、全裸行進に酔いしれていた変熊 仮面の隙を突いて、上から落下傘攻撃を仕掛けてきたのだ。 つづけて、かなみのアサルトカービンが、全裸・半裸の男どもを右へ左へと薙ぎ払う。 秀真 かなみのすさまじい攻撃に対して、武器・防具を持たない男たちは、なすすべもない。 かなみにつづけて、図書館に駆けつけたアシャンテ・グルームエッジ(あしゃんて・ぐるーむえっじ)も、不届き者の征伐に加わった。 「・・・・・・騒がしいのは、苦手だ・・・・・・」 アシャンテは、冒険者としての過去の経験と、記憶を失う前から持っていた身体能力を駆使して、無駄な戦闘を回避しつつ、校舎外を通るというショートカット技を使って、最短経路でここにやってきたのだ。 彼女の右手には麻痺銃、左手には逆刃に持った刀が握られている。 そして、彼女の体からは狼の耳と尻尾が生え、左目が金色に光りはじめたのだ。 「悪乗りする者には手加減しない」 そういうと、アシャンテは、沸き起こる苛立ちを左手の刀に込めて、体育系男子たちにぶつけたのだ。 アシャンテの鮮やかな太刀さばきに、ひとり、ふたりと変熊 仮面が実体化させたガチムチどもは、その数を減らしていった。 そして・・・・・・ 「変熊 仮面! 鳥羽 寛太! 騒ぎを起こした罪は大きいぞ」 2人に向き直ったアシャンテは、こう言い放つと、麻痺銃を発砲した。 ばったりと倒れる2人。 「校舎内なので、怪我人を増やしたくないからな」 こうして、体育系男子たちの騒ぎは、一応終息したようだ。 ※ ※ ※ さて、場面はまたプラティコのある場所に戻る。 といっても、もう装置は図書館とは目と鼻の先にあるのだが・・・・・・ 絹屋 シロ(きぬや・しろ)は、装置を捕獲せねばという使命感を持ちつつも、持参した楽譜を取り込んだらどうなるのかを試したかった。 これを聞いた夜薙 綾香(やなぎ・あやか)は、絹屋 シロと協力してプラティコを誘導すべく、動いた。 まず、絹屋 シロが、楽譜で装置をおびき寄せる。 プラティコが楽譜のほうに向かったら、夜薙 綾香はすかさず氷術を唱え、本の後ろに大きな氷塊を作って、後戻りできないようにした。 そうやって安全な状態にすれば、後はプラティコが勝手に楽譜を取り込むのを座して待てばよい。 思惑どおり、装置は楽譜に気がつくと、それを食べるように体内へと放り込んだ。 やがて、プラティコからは、その楽譜に書いてあるとおりの音楽が流れ始めた。 クラシックの管弦楽曲だ。 「ああ、美しい。このプラティコって装置、音響機器としても一流じゃないか!」 絹屋 シロは感嘆する。 弦楽器の音色、木管・金管楽器の音、そして打楽器の叩く音までが、まるで生演奏を聴いているかのごとく、ダイレクトに耳へと伝わってきたのだ。 「ステキね。なんかみんな、この装置を使って変なものばかり出したがるけど、シロさんの出したものは他とは違うわ」 「えへへ、ありがとう。綾香さんにそういってもらえるとうれしいです。それに、音が鳴っていれば、プラティコがどこにいるかわかるから、一石二鳥だと思ってね」 「へぇー、そこまで考えていたんだ。シロさん、すごーい!」 誉められた絹屋 シロは、とてもうれしそうだ。 と、音楽を聞きつけたマシュ・ペトリファイア(ましゅ・ぺとりふぁいあ)がやってきた。 「これはわかりやすいねぇ! プラティコの位置が一発でわかるよ」 マシュはそういうと、持ってきたノートを装置に放り込んだ。 するとたちまち、凶暴なコカトリスが飛び出した。 「危ないぞ! 目を見るな!」 マシュ・ペトリファイアは、コカトリスの目を直視しないように気をつけ、なおかつ、凶鳥のブレスが届かない距離を保った。 そして、コカトリスに向けて「適者生存」を放った。 結果は・・・・・・成功だ。 コカトリスは、マシュ・ペトリファイアの威に服し、おとなしくなった。 「よし、うまくいった。帰るぞ」 そういって、マシュ・ペトリファイアはコカトリスを肩に乗せると、持って帰ることにしたのだ。 「ふう、危うく石にされるところだったよ。」 捕獲班の前衛を務めていた八神 誠一(やがみ・せいいち)は、こういうと、用意した本をプラティコに投げ入れた。 すると、装置からなにか透明なマントのようなものが出てきた。 八神 誠一が、そのマントを羽織ってみると・・・・・・なんと、彼の姿が消えた! 「おお、これだこれだ。これさえあればゆっくり昼寝ができる」 姿の見えなくなった八神 誠一に、パートナーのオフィーリア・ペトレイアス(おふぃーりあ・ぺとれいあす)は慌てふためいた。 「あれ? 誠一がいなくなっちゃった。おーい、どこに行っちゃったのー?」 『さあ、オフィーリアに見つからないように逃げよう』 パートナーの怒りから逃れるべく、八神 誠一はこの場から遁走した。 「人が消えてしまうなんて、すごいな。だが、これらの本を取り込んだらどうなるんだ?」 こう言い放ったのは葉 風恒(しょう・ふうこう)。 彼は、持ってきた中国の歴史書やら、難解な哲学書など、小難しい本を山と抱え、プラティコめがけて投げつけた。 それらの本を取り込んだプラティコは、美しいクラシック音楽の演奏をやめ、グワーンという異常音を発しはじめた。 「あれ、どうなってるんだ? 何も出てこないぞ。では、聖書ならどうだっ!」 そういって、分厚い本を投げ込むと、装置から煙が立ち上り、中から半裸の男が現れたのだ。 その頭には、茨の冠をかぶり、両手と腹に傷跡がある。 「あ、あ、あなたは誰?」 「わたしは救い主です。本来、もうちょっと後の時代にこの地上に再臨するはずだったのですが・・・・・・あなたが私を呼び出したのですね?」 「ひえぇぇぇぇ、ごめんなさーい」 葉 風恒は、自分がとんでもないものを出してしまったと恐々たる思いにかられ、その場を逃げ出した。 一方、プラティコはといえば、難しい書物をいくつも放り込まれて、異常な音を発し続けている。 どうやら、エラーを起こしてしまったようだ。 「なんだか、装置の調子がおかしくなっちゃったみたいね。壊れないうちに、早くしなきゃ」 こういうと、ヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)は、急いで宝の本やら武器の資料を投げつけた。 ところが・・・・・・ 出てきたものはといえば、キンキラの安っぽいアクセサリーだの、武器の格好をしたおもちゃだのが出てきた。 「はぁー? なによこれ! うーん、悔しい。こうなったら、テスタ先生の研究室に忍び込むしかないわね」 そういって、ヴェルチェ・クライウォルフは研究棟のほうに駆け出していった。 |
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