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黒羊郷探訪(第2回/全3回)

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黒羊郷探訪(第2回/全3回)

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5-04 龍雷来来!!

「ミストラル! よくやったわね」
「メニエス様。確かに、敵指揮官と副官を捕えました」
 迂回し、戦線に合流しようとしたメニエス。すでに、ミストラルは敵の指揮官を捕えたという。
「これで形勢は確実に……むっ。何か来るわね?」
「メニエス様……」
 バンダロハムの丘の上から、100程の軍勢がなだれ込んでくる。
 どどどどど。
「あぁぁっ、俺達は龍雷連隊なんでね。街を守るには金がいるんで出してもらいたいんでね」
「♪るんらら〜、軍隊にはお金が必要〜」
「龍雷来来!!」「龍雷来来!!」
 どどどどど。
「な、……?! 今のは」
「メニエス様!」
「どういうこと……?」
「さっきのが龍雷連隊? じゃあ、こいつは」
「う……岩造様……このファルコン……一生の不覚……」
「……ミストラル」「……メニエス様。……申し訳ございませぬ。あ、メニエス様、奴らまた来ます!」
 どどどどど。
「あぁぁっ、俺達は龍雷連隊なんでね。街を守るには金がいるんで出してもらいたいんでね」
「♪るんらら〜、軍隊にはお金が必要〜」
「龍雷来来!!」「龍雷来来!!」
 どどどどど。



「音子! 危ないっ」
「ぎゃはは! 敵将の撃破で逆転だ、死ねえ!!」
 黒乃の手に、光条兵器……L96A1!
 飛びかかってきた傭兵を討ち取った。
「ふぅっ。さて、これで残るは二人……強敵はドリヒちゃんだけだね。うーんどう仲間にしたものか……」
「音子! こっちの女騎士も手練れだぞ!」
 激しく打ち合うフランソワ。
「しまったな……逃げられない」
 相手はカチュアだ。
 戦闘経験はあるもパラミタに着いて間もないジャンヌとロイは、まだ力を発揮しきれず、アデライードの回復を得て、戦線に復帰する。
 ドリヒテガを何とか押しとどめるニャイールにすぐ加勢にいくが、何ともできない。
 全く疲れの見えないドリヒテガだが、だんだん腹ばかりは減ってきているらしい。
「ううう、おまえらはは早く、食べられろ!」
 ドリヒテガの巨大な手がニャイールに伸びる。
「ニャー!」
 ぶんっ。振り払うニャイール。
「ドリヒ、こっちへ来れば、オークスバレーのカレー専門店に連れてってやると約束するニャラ」
「ささ先におまえを食べさせろ、腹へってんよ!」
「足止め期限は、境界線の敵勢力駆逐くらいまででありますかな……黒羊旗との戦いはどうなってる……!」
 ジャンヌらにも、焦りが見える。
「そうか。黒羊旗……」
 カチュアが叫ぶ。
「ドリヒテガ! 教導団より、黒羊軍のがおいしいかも? 羊だけに」
「ひつじ。どどこだ??」
「この先ですよ! この獲物さん達は、なかなか捕まりそうにありませんものね。
 放っていきましょう。黒い羊ですよ!」
 ドリヒテガが突っ込んでくる。
「ドリヒちゃん……!!」
 ドリヒテガは黒乃らを飛び越え、戦車のビーワンビスを突き飛ばすと、行ってしまった。
「黒乃さん……ごめんなさい、どうか!」
 カチュアも続く。
「な、なんていう……どうしても欲しい」
「今の女騎士は? 音子、知り合いか? あ、何か来るぞ。音子、まずい、軍勢だ」
 どどどどど。
「あぁぁっ、俺達は龍雷連隊なんでね。街を守るには金がいるんで出してもらいたいんでね」
「♪るんらら〜、軍隊にはお金が必要〜」
「龍雷来来!!」「龍雷来来!!」
 どどどどど。
「……あれ、えーと。……岩造さん? ど、どうしてここに??」



 どどどどど。
「あぁぁっ、俺達は龍雷連隊なんでね。街を守るには金がいるんで出してもらいたいんでね」
「♪るんらら〜、軍隊にはお金が必要〜」
「龍雷来来!!」「龍雷来来!!」
 どどどどど。
 夜陰に紛れて湖を渡り、貴族館の近くに潜伏していた、山城 樹(やましろ・いつき)
「な、なんどす? 一体、何が起こったどすえ??
 誰になんて連絡すれば……」
 山城樹は、無論、宇都宮や同じく彼女のパートナーセリエ・パウエル(せりえ・ぱうえる)湖の騎士 ランスロット(みずうみのきし・らんすろっと)らと連絡を取り合っていることになるのだが。姿の見えない彼女らはさてこのバンダロハムのどこに……



 龍雷連隊を名乗るその部隊は、バンダロハムを牛耳る貴族らの世帯を暴れまくり、貴族館になだれ込んだ。
 どどどどど。
「あぁぁっ、俺達は龍雷連隊なんでね。街を守るには金がいるんで出してもらいたいんでね」
「♪るんらら〜、軍隊にはお金が必要〜」
「龍雷来来!!」「龍雷来来!!」
 どどどどど。
 貴族館の中では……
「な、なにが起こった!?」
「教導団の部隊が略奪を行っております! やつらっ、丘上の館を片っ端から襲って金品を強奪しております!!」
「な、なんじゃ。どうして教導団がこんなところまで攻めてきおった。
 馬鹿な。馬鹿な。傭兵勢は全滅したのか?! あ、あり得ん……あり得ん……」
「教導団に乗じて、町で暴動が起き始めています!」
「う、うぬぬ……デ、デニム!」
「……ここに。
 如何致しましょうか」
 どどどどど。
「あぁぁっ、俺達は龍雷連隊なんでね。街を守るには金がいるんで出してもらいたいんでね」
「♪るんらら〜、軍隊にはお金が必要〜」
「龍雷来来!!」「龍雷来来!!」
 どどどどど。



5-05 パルボンの死

 バンダロハムまでやってきた遠征軍総大将パルボン率いるパルボンリッター&クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)
「ふむ。すでに町は混戦状態にあるな。暴徒どもが暴れまわっているようでは……。
 今ならバンダロハムをラクに落とせそうかの?」
 巨大なメイドが隊の真ん中めがけて駆けてくる。
 ドリヒテガだ。
「ふむ。バンダロハム傭兵の残党か。クライスよ、討ち取るのじゃぁ!」
「今回は敵の数も多い。前うまくいったからと言って今度も上手くいくと思うな、クライス」
 冷静にかまえる、ローレンス・ハワード(ろーれんす・はわーど)
「うん。まずは相手の陣形……ってあっち一人??」
「わかっていると思うがはぐれたら終わりと思え。全員一丸となって駆け抜けるぞ」
「え、ロ、ローレンス」
 ジィーン・ギルワルド(じぃーん・ぎるわるど)は辺りを見回し、
「ふむ、この場合騎士は誰を守ればいいんだ?
 サフィ……なんでおまえいる? とりあえずこいつか」
「ひどっ! まああたしもそう思うけど」
「ジィーン、サフィ……ここでやるの? まだ敵陣に着いていないのに……」
 ドリヒテガが来る。
 ローレンスは、クライス、ジィーン、サフィ、騎兵ら全員にディフェンスシフトをかける。
 クライス、馬に乗って突撃! ソニックブレード、ツインスラッシュ、アルティマ・トゥーレ、フェイタルブロウ!――クライス、ヒロイックアサルトの力を発揮し、馳せ違った巨大な獲物ドリヒテガを腕一本でかかえ、地面に叩き潰した。
「クライス、やったか?!」
 煙が舞う。
 その中からドリヒテガ、巨体をむくっと起き上がらせると、騎兵を蹴散らして境界の方へと猛スピードで駆け去っていった。
「皆大丈夫?! とくにサフィさん(戦闘力無いからね)」
「ええ、まああたしは……でも、この大将さんやばいんじゃない? これ」
「そうか。サフィよりこれを守るべきだったか。まずは騎士ポイント−1、か」
「うむ。そう言えばこれ……パルボン殿にはディフェンスシフトをかけなかったか」
「パルボンさん? パルボンさん?」
 パルボン…………戦死??
「……」「……」「……」「……」


5-06 前線と本営と

 その頃、本営では……
「さて、ならば私は、おそらく戦後の処理や統治について、話を進めることになるか……」
 クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)は、ため息つきつつ、再びハンス・ティーレマン(はんす・てぃーれまん)を伴い、貴族らとの話を進めることになる。
 教導団がバンダロハムを獲ったとして、それからもやはり頭は痛い。
 占領地政策として、略奪行為などをせずに治安を良くする、というのは定番だ。
「バンダロハムの民はそれでいいとしても。例えば、ウルレミラの為政者たちはどう思うだろう?」
「ええ、クレア様。……民に優しい侵略者が、為政者にも優しいとは限りません。
 人道的な占領政策は、隣国(ここではウルレミラを指す)の為政者たちの既得権を保証する根拠にはなりませんからね」
「そうなのだ。ハンス。教導団は、現地の政治には不用意に関与すべきではない、本来的には」
 そうしてクレアとハンスは、貴族らの会議室の重い扉を開けるのであった。
 それからクレアは、もう一つ危惧……第四師団の、独立? それってそもそもクーデターでは。



 前線に到達した。
 この男。……戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)
「我に続け!」
 本陣に残る兵も全部引っ張ってきた。
「そ、それがしもとうとう前線というところまで来てしまいましたな……」
 道明寺 玲(どうみょうじ・れい)も一緒だ。パートナーのイルマを盾に、道明寺は恐る恐る辺りを窺う。
 街は今や、完全な混乱状態にある。
 逃げ惑う人々。傭兵なのか、食い詰めなのか、住民なのか何に属すかもわからない暴徒。そして、
 どどどどど。
「あぁぁっ、俺達は龍雷連隊なんでね。街を守るには金がいるんで出してもらいたいんでね」
「♪るんらら〜、軍隊にはお金が必要〜」
「龍雷来来!!」「龍雷来来!!」
 どどどどど。



 パトロールに行っていたクレアのパートナー、エイミー・サンダース(えいみー・さんだーす)パティ・パナシェ(ぱてぃ・ぱなしぇ)も夜になると本営に戻り、不寝番をしていたのだが(パティは居眠り)……ハンスの張っていた禁猟区が、敵の接近を示し出した。
 本営には他に、金住 健勝(かなずみ・けんしょう)とパートナーのレジーナ・アラトリウス(れじーな・あらとりうす)が戻っている。「い、一体どうしたでありますか……!?」
「なんだよ? 敵の姿なんてどこにも見えないじゃん」
 ……ひた、ひた、ひた。
「も、もしかしてであります」
 金住は、バンダロハムでの出来事を報告しておいた。が、まさか……。
 ……ひた、ひた、ひた。
「な、なんだ? いるのか? ど、どこだ、返り討ちにしてやる!」(「パティ、パティ起きな!」「ななななんですぅ?」)
 ……ひた、ひた、……ひた……ひた……
「? どこへ行くつもりでありますか……?」

 玉座。
 そこにいるのは、一条 アリーセ(いちじょう・ありーせ)
 色々、ぼーっとしかししたたかに、考え巡らせている。
「……第四師団の所有する騎狼(いよいよ実用性が証明され世間一般に知られるようになってきた騎狼!)なら獣道も馬車が通れない道でも問題ないんですよね。これをもともと保養地・観光地としての素養のあるこの土地に生かし、騎狼を(ついでに騎狼部隊の人を)タクシー業に回すことで、交通の便を改善する、と。交通の便を改善すれば、観光客が増える。人が動けば、お金も。ふふふ。戦争が起こってしまったからには、可能な限り利用しないと!」
 ……ひた、ひた、ひた。
「ん? 何だろう……この音?」
 ……ひた、ひた、ひた。ひた、ひた。「私の前で止まった?」



5-07 境界戦・レーゼマンの到着、そして……

「はあ、はあっ。こんなに到着が遅れてしまうとは。
 だが! 我々が来たからには、これ以上黒羊軍の好きにはさせぬ」
 敵の右翼側面にあたる沼地から、レーゼマン・グリーンフィール(れーぜまん・ぐりーんふぃーる)率いる部隊が飛び出し、襲いかかった。
「弓部隊、射撃準備……放てぃっ!」
「レーゼ殿!」「レーゼ殿!」
 セイバーなので、弓のレベルは低いか……「当たらん!」 
「しかし、敵は動揺しているぞ。
 続いて剣部隊、戦闘準備……突撃ッ!」
 イライザ・エリスン(いらいざ・えりすん)が、セイバーズの先頭に立つ。
「了解。レーゼセイバーズ、行動開始します」
 将を捕えられ動揺する敵陣に、イライザセイバーズが斬りかかった。
「続いて、第二射構え……てぇーっ!」
「レーゼ殿!」「レーゼ殿!」
 セオボルトレジーヌエリーズも、飛び出る。
「ヘキサハンマーで叩き潰されたい奴から前に出ろ!」
 レジーヌは何とか頑張って声を張り上げ、味方を鼓舞する。
「レーゼマンはロリコン!」
「ロリコンはパラミタの敵!」
「レーゼは仕方ないですねぇ」
「……」
 レーゼマンも、無言で敵に打ちかかる。
「レーゼ。敵将を捕えた」
「おお、イレブン。
 な、何?! よ、よし大収穫だ」
 レーゼマンは、ボテインを睨みつけた。
「何、殺しはせん。ただ我等のために協力してもらうぞ……?」



 戦いは、夜半に及ぼうとしていた。
 やがて、ウルレミラ西でも行われていた戦闘の勝敗が決した、と報が入る。
 それからすぐ、教導団の軍勢が、北の境界へ駆けつけた。
 香取隊の到着。
 これによってバンダロハム北の境界での勝敗は、ほぼ決した。
 香取 翔子(かとり・しょうこ)が、号令をかける。
 続々、敵陣に突入していくソフソ・ゾルバルゲラの兵に、ロンデハイネの兵、西で戦っていたパルボンの兵。
 300近い兵が敵をたたみかける。
 黒羊旗は、北の森へ退いていく。