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白銀の雪祭り…エリザベート&静香

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白銀の雪祭り…エリザベート&静香

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第9章 飲めや歌えやの大騒ぎ

「ぁあ〜あちこち痛いです・・・」
 雪合戦でボロボロになってしまった影野 陽太(かげの・ようた)は、フラフラしながらパーティー会場へやってきた。
「楽しかったですわ〜♪」
 一方、パートナーのエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)は満足そうな様子だった。
「ホットココアでもどうですか?」
 ココアの入ったカップをトレイの上から沢渡 真言(さわたり・まこと)がエリシアと陽太に手渡す。
「いただきますわ」
「ちょうど欲しかったんですよ。ふぅ温まりますね・・・」
 恐ろしい戦場から離れ、陽太は平和な空間をじっくり味わうようにまったりとする。
「あっ、サンドイッチがありますわ」
「いろいろ具材がありますよ」
「好みで作るようになっているようですわ」
 小夜子が用意したパンを取り、チーズの間にキュウリとハムを挟んだ。
「このぽてとも美味しいですね」
 スライスしたジャガイモをからっと揚げた西園寺の料理に手をつけ、パリパリとした食感を楽しむ。
「ローストビーフもありますわ!」
「切り分けてあげよう」
 包丁で涼介が和牛を切り分けてやる。
「いい焼き加減ですわね♪」
「エリザベート校長に持っていってあげましょうか」
 小さな校長にも持っていってあげようと、ローストビーフを盛った皿を両手で持ち話しかける。
「残り少ないようでしたから、持ってきましたよ」
「持ってきてくれたんですかぁ。いただくですぅ♪」
 皿に盛った和牛を全部食べてしまう。
「(あぁ〜俺の分まで・・・)」
 自分用に取ってきた分まで食べれてしまった。



「アウラさんいませんね」
 料理を盛った皿を抱えた小尾田 真奈(おびた・まな)が森の守護者の姿を探して辺りをキョロキョロと見回す。
「陣くんのお笑い脳が感染しちゃうから隠れているんじゃないの?」
「んなわけあるかっ!」
 ムッとする七枷 陣(ななかせ・じん)に、リーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)はそっぽを向いて舌を出した。
「あっ、いらっしゃいましたよ」
 木々の陰から見えたアウラネルクの姿を真奈が指差す。
「逃げてぇ〜。お笑いが感染・・・むぐっ」
「人を病原みたいにいうな!」
 リーズの身体を抱えて彼女の口を片手で塞ぐ。
「アウラさん毎度っ!今日こそは飲んで貰いますよコレ」
 森の妖精に向かって陣が片手を振り、輸血パックに入れた血を見せる。
「や、オレらが近くに住んでたら、ここまでしつこく言わないんやけどね。流石にツァンダからここまで来るのは結構な時間掛かりますし、まぁまぁ細けぇ事は良いんだよ!です」
「すまないがわらわはそのようなものは飲めぬ」
 飲むように勧めるが、アウラネルクに首を左右に振り断られてしまう。
「とりあえずお試しで一口だけでも良いですから、このとーりっ!経験積んだ魔法使いと色々手に職を付けたソルジャーの新鮮な血です、ご賞味ください」
「そーだよ!きっとアウラさんの力を戻す切欠になると思うから、一口だけでも飲んでみて」
 断る妖精にリーズも勧める。
「にはは、魔法使いの方は雨の日無能だったりするけどね♪」
「はい黙れー」
「いだだだ痛いよぉ〜!髪引っ張んないでよぉ〜!」
 陣は笑顔のまま怒りながら、余計なことを言うリーズのもみあげを引っ張った。
「やはり飲めぬ・・・そういった種族でもないのでな」
「むぅー・・・そうなのか。どうしようコレ」
 せっかくもってきた輸血パックを見つめ、リーズたちはどうしようか悩む。
「きゃぁああーどいてくださぁあいっ!!」
 スケートを滑っていたヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)が陣の方へ突っ込んできた。
「んぎゃあぁああっ!」
 ベチンッと木に顔面から叩きつけられるように飛ばされてしまう。
「―・・・すみません大丈夫ですか?」
「あぁなんとか・・・」
 心配そうな表情で見つめるヴァーナーに、怒るに怒れなくなった陣は痛むデコをさする。
「えっと輸血パック・・・あぁあっ!?」
 木にぶつかった衝撃で手から滑り落ちたパックが、小さなマンドラゴラがチュルチュルとすすっていた。
 満足そうにマンドラゴラたちは森の奥へ向かう。
「ありゃー・・・」
「また飲まれちまった・・・オレしょぼーん・・・」
 力なくその場にへたり込み、がっくりと肩を落とす。
「えぇっと・・・・・・そうだアウラ様、アップルパイとかを作ってきたんですけど食べてみません?」
「血は飲めなくてもそれなら大丈夫だよね♪」
 真奈とリーズがアップルパイを切り分けて勧める。
「いただこう・・・」
 美味しそうに食べる妖精の姿に真奈とリーズは微笑み合う。
「ちょっといつまでへこんでるの。む・の・う♪」
「無能いうなやぁあっ!」
「あっ復活した」
 リーズに肘でつっつかれ、陣はいつもの調子を取り戻す。
「アウラ様クレープがあったんで持ってきました」
 ナナとズィーベンが用意したチョコレートアイスとイチゴ、角切りのスポンジケーキを包んだクレープを差し出した。
「―・・・アウラネルクお姉ちゃんと一緒にスケートしてみたいな」
 食べ終わる頃を見計らって、ヴァーナーがもじもじと遠慮がちに声をかける。
「スケートとはなんじゃ?」
「湖面の方で生徒さんたちがやっている遊びです」
「そうなのか・・・」
「やったことあります?」
 スケートというものまったくしらない妖精にヴァーナーは首を傾げて聞く。
「なるほど・・・そういうのならやったことがある」
「じゃあ一緒に滑りましょう!ちょっとアウラネルクお姉ちゃん借りますね♪」
 ぱぁっと表情を笑顔にしたヴァーナーは妖精の手をひっぱってスケートリンクの方へ向かう。
 氷上をダンス舞台のようにジャンプして華麗に舞う。
 他の生徒たちから見れば妖精が2人、ダンスを踊っているように見えた。
「元気そうやね」
「うん、傷も癒えたみたいだね」
 陣とリーズは楽しそうに滑る彼女たちを見つめ、ほっと安堵する。
 近くからその様子を見ていた陽太をエリシアもクラムチャウダーを飲みながら暖かく見守る。
「ジンジャーティーでもどうすか?」
 傍を通りがかった真言が岸に上がってきたアウラネルクに微笑みかけてお茶を振舞う。
「いただこう」
「よろしければお菓子もどうぞ」
「もらってよいのか?」
「えぇ沢山あるんでどうぞ」
「それでは少しいただこうか」
 お茶を美味しそうに飲む妖精に、パウンドケーキを渡した。

-PM20:00-

「ほらシチューを持ってきたぞ」
 フォルクスが熱々のシチューを樹に差し出す。
「温まるなぁ〜」
 スプーンですくい口の中に入れる。
「何匹釣れたんだ?」
「うーん20匹だな・・・」
「やっぱり難しいようだな」
「そうみたいだな。そろそろ岸に上がるか」
 開けた穴に雪を詰め、フォルクスの氷術で凍らせて平らにならす。
 持ってきた七輪の上に網を置いて釣ったワカサギを焼き始める。
「すぐに焼けないようだな。フォルクス焼いてくれ」
「―・・・火力の調節が難しいかもしれんが・・・」
 樹のために火術でワカサギを焼いてやる。
「あつぅっ。でも美味しいな」
 小さなワカサギをあっとゆうまに食べきってしまった。
「そろそろ雪合戦の観戦しにいこう」
 七輪を抱えて樹とフォルクスは雪合戦の場所へ移動していった。



「さて、ひと段落したようだから雪合戦の様子でも見にいこうか」
「うんそうだね♪」
 雪合戦の様子を見に行こうと涼介とクレアは片付けを済ませて森から出て行った。



「永太もエリザベートと一緒にスケートやってみたいな」
 校長を誘ってスケートを楽しんでいる生徒たちを神野 永太(じんの・えいた)は羨ましそうに眺めていた。
「よし・・・こうなったら・・・!」
 アルコールの力を借りて声をかけようと、ホットリキュールを飲みまくる。
「あの・・・・・・ちょっと飲みすぎですよ。―・・・もう手遅れのようですね」
 大量に酒を飲み干す永太を燦式鎮護機 ザイエンデ(さんしきちんごき・ざいえんで)が止めようとするが、彼はまったくいうことを聞かない。
「エリザベートぉお〜、永太と一緒に滑ろう〜」
「ちょっと休憩したいのですけど」
「そぉんなかたいこといわないで、滑ろうよぉ〜。おっとと・・・」
 ちどり足で寄っていく永太たっだが、バランスを取れなくなった彼はエリザベートにもたれかかりそうになる。
 消し炭にされるかもしれない永太の生命の危機にザイエンデが彼の襟首を掴んで引き離す。
「うぁああん〜永太はエリザベートと一緒にスケートするんだぁあ!!」
 引き離された彼は酒乱のように暴れて叫ぶ。
「―・・・えっと少しなら・・・」
 スケート靴に履き変えて永太と一緒に滑ってあげることにした。
「えっへへへ嬉しいなぁ〜。うぇーもう終わり〜?やだいやだぃもっと滑るんだぁあっ!」
 滑り始めた数秒後、早くもバランスを取れなくなった永太は、ザイエンデに止められてしまう。
 そのまま雪合戦の地帯へズルズルと引きずられる。
「なぜ私を誘ってくれないんでしょうか・・・」
 ザイエンデは楽しそうに滑る2人を見てちょっとだけ嫉妬していた。

-PM22:00-

「さて・・・そろそろ行くか」
 四条は自作の雪だるまの元へ向かい、帽子と看板を外す。
「ククク・・・油断している所を狙うのは戦の基本中の基本!敵陣の者どもを雪だるまの餌食にしてやるのだぁああっ!!」
 雪だるまを揺らし雪山の上を滑り落ちながら、雪合戦が開催される白組の陣地へ突っ込んでいった。