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魂の欠片の行方1~電波ジャック機晶姫~

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魂の欠片の行方1~電波ジャック機晶姫~

リアクション

 エンデュアで攻撃属性耐性を上げると、雷蔵はランスで巨大機晶姫の踵を削りにかかった。
「こいつだって被害者だ……攻撃以外で止められるなら、そうしたい」
 一輝は小型飛空艇に乗って舞い上がり、雷蔵の声が聞こえる高度で止まる。
 ややあって「よし、今だ!」という合図があり、彼は顔面の正面まで飛んだ。情報攪乱を使う。
 巨大機晶姫がぐらついた。その瞬間、テオディスは膝裏の正確な位置に小型飛空艇を止めた。
「……止めないわけには、いかない。すまないが、容赦はしない」
 ドラゴンアーツを纏った状態で、アルフレートは膝裏に向けて高周波ブレードを連続で薙いだ。超音波の刃が、土を一気に削っていく。
「……逃げろ!」
 アルフレートは雷蔵に叫んだ。巨大機晶姫が、仰向けに倒れていく。

「きゃあ!」
 カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)は、受け身を取りきれずにバランスを崩した。床だった場所が壁に、壁だった場所が床になる。それと同時に、戦っていたゴーレムがカレンの上に落ちてきた。
「カレン!」
ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が叫ぶ。カレンの意識が反転した。

 プレナとソーニョが空飛ぶ箒に相乗りし、翡翠も蘭華を小型飛空艇の後ろに乗せて飛び立っていく。
 それを見て、待機していた四条 輪廻(しじょう・りんね)アリス・ミゼル(ありす・みぜる)を乗せた大神 白矢(おおかみ・びゃくや)、小型飛空艇に乗ったルイ・フリード(るい・ふりーど)リア・リム(りあ・りむ)も口から入っていく。
 エメが持っていた小型飛空艇が2台余っていたため、フロンティーガーと朔が1台、ヴェルチェと涼が1台を使って口を目指す。エメも、アレクスとバスティアンを乗せて巨大機晶姫に向かっていった。
 巨大機晶姫の口元では、甲斐 英虎(かい・ひでとら)甲斐 ユキノ(かい・ゆきの)に手を差し伸べていた。
「あと少しだから頑張って……んしょ」
 ユキノを引き上げて、一息吐く。
「転ばせてもらえてよかったね。俺達、飛行手段持ってないからなー」
 喉まで降りたところで、次々に生徒達が入ってきた。
「これは、みなさんとご一緒した方がよさそうですね」
 微笑みながら、ユキノが言った。

「うおー、でっかいなー。あれも魔法なのか?」
「あれは魔法ですね、電子レンジと違って。私もここまで巨大な機晶姫は見たことがありませんね……機晶石はどれほどの大きさなのでしょうか?」
「普通サイズだそうですわ」
 巨大機晶姫についての感想を漏らすスヴェン・ミュラー(すう゛ぇん・みゅらー)フリードリヒ・デア・グレーセ(ふりーどりひ・であぐれーせ)に、クエスティーナが言う。
「んと、じゃあ……ルミーナさん。ごめんなさいですが、僕達の馬、よろしくお願いしますね」
 白馬の上から、ティエリーティア・シュルツ(てぃえりーてぃあ・しゅるつ)が申し訳無さそうに言った。スヴェンとフリードリヒもそれぞれ白馬に乗っている。
「わかりました。くれぐれも気をつけてくださいね」
「ティエルさん……」
 志位 大地(しい・だいち)が物凄く心配そうな顔をして見上げている。
「大丈夫ですよ大地さんー、スヴェンとフリードリヒもいるし、安心してくださいー」
「この俺様がかっこよくティエルを守ってやるぜ!」
「ティティは私が守りますから引っ込んでなさいこのすっとこどっこいジャガイモ英霊!!!」
「俺様もティエルのパートナーなんだぜ!!」
「私が一番目のパートナーなのは何があっても変わりません!!!」
「ティエルティエルうっせーんだよこの限界過保護な花姑がぁ!」
「もー、やめてくださいー」
 なんだか変な言い合いが始まったところで、ティエリーティアは白馬の首を巨大機晶姫に向けた。
「大地さん、今度、タシガンの紅茶屋さんに一緒に行きましょうねー。それじゃあ」

 無事に3頭の白馬が戻ってきた頃、巨大機晶姫に変化が起きた。脚の部分ががくがく震えて、何とか起き上がろうとしている。実際に立てるかどうかは別として、抑えておく必要があった。脚を壊しても尻餅をついている今なら、中の生徒達に危険はない。
 何人もの生徒が、巨大機晶姫へと走っていく。
「例え幾たび傷つこうとも、ボクの思いが貴方を癒す。幾千万の闇を払う、貴方をボクは守りたい……」
 後ろで何やら呪文が聞こえてきて、大和は振り返った。いつの間にか、ラキシス・ファナティック(らきしす・ふぁなてぃっく)が大河の背中に乗っている。
「ラキ? あの……俺、最初の方から出てたから結構くたくたなんですけど……描写なくても、地味にですね……」
「貴方の笑顔が見たいから……リカバリ!」
 ラキシスがリカバリをかけると同時に、大河が走り出した。
「ボク、大和ちゃん達のかっこいいところ、もっと見たいな! 元気出して行こう!」
「……一番の鬼畜はラキでしたか」
 ぐったりとして、大和は言った。
「大地さんも行きますよ〜、あの中が、またシェイクされたら大変ですものね」
 パラミタ虎に乗ったシーラ・カンス(しーら・かんす)が笑顔で言う。
「もちろんですよ。何気に今、リカバリしてもらいましたしね。立ち上がったらもうそれはただの土くれに……」
 大地は再び眼鏡を外すと、伽藍を撫でた。
「伽藍さん、シーラさんを頼みますよ」

 巨大機晶姫が倒れた時、閃崎 静麻(せんざき・しずま)レイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)はは脚の付け根に到達したところだった。他の部屋に比べて比較的空間が狭かったために、彼等は転ぶことなく、何とかその場をやり過ごしていた。その後、静麻は骨の関節部を相当する部品を探し、それを壊すことに成功していた。
 出来れば取り外しか、何かを噛ませて動きを阻害する方向で済ませたかったが、大きな石臼のようなその部品に太刀打ちできそうな物は無かった。仕方なく二つに割ることにして、アーミーショットガンとレイナの轟雷閃を使ってそれを果たす。
「まあ、これなら修復もしやすいだろう。無事転んだようだし、這って歩くこともないだろうな」
 やれやれとそのまま寝転ぶ静麻。
「何やってるんですか、脱出しますよ!」
「大丈夫だって。ゴーレムだって、こんな偏狭までやってきやしないさ」
 のんびりと言う彼の首根っこを掴んで、レイナは引き摺った。
「何か起きてから外に向かっても、遅いですからね!」

 大地が破壊工作で脚に爆弾を仕掛ける。
 脚が爆発した途端、シーラは爆炎波の炎をパイルバンカー【紅爛】に纏わせながら伽藍を駆った。
「私の紅欄が真っ赤に燃える!」
 交差するように大河を走らせ、大和もパイルバンカー【天地】に轟雷閃を纏わせる。
「お前を穿てと轟き叫ぶ!」
「「必殺の…!」」
シーラと大和が二人で叫ぶと、
「オーラバレストだぁー!」
 ラキシスが拳を突き上げた。
「耳元でどならないでください!」
 耳がキーンとなり、大地が思わず抗議する。
 直後。
 巨大機晶姫の脚はがらがらと崩れた。

 ほぼ同時に中に入った【対話する者】と輪廻、ルイ、英虎達はゴーレムの多さに驚きながらも体内を進行していった。そこかしこで火災や漏電が発生していて、ソーニョやヴェルチェが火術と雷術で沈静していく。
「トラ、何だか中はすごく暑いですけど、あんまりぼうっとしていると怪我をしてしまうのでございます。気をつけてくださいね?」
 英虎の背中にくっついて、ユキノが言う。
 ゴーレムは、パワーブレスでウォーハンマーを振り回すルイや、ソニックブレードを持つ英虎、雅刀を持つ朔などが倒していった。
 当初はトレジャーセンスで機晶石の位置を予測して進むつもりだったが、機晶姫であるリアやアレクスが波動を感知しているようで、正確に場所が分かった。目的地への最短ルートを博識を使ったエメが割り出し、皆を先導する。
「こっちにゃう。間違いないにゃう」
「早くするのだ!」
 だが、その先に道があるとは限らない。
「ん? これは瓦礫……だな」
 上から落ちてきたのか、天井付近にまで瓦礫が山となっている。
 フロンティーガーは、考えつつ言った。
「どうやら、博識でも崩れた壁や瓦礫の状態までは把握できないみたいですね。これは少し、時間が掛かるかもしれません」
「そんなの壊しちゃえばいいじゃない。これだけめちゃくちゃなんだから、今更もう関係ないでしょ? 翡翠ちゃん、その星輝銃貸して!」
 ヴェルチェは翡翠の手から星輝銃を取ると、瓦礫に向かって連射した。ついでに雷術も放つ。
「ちょ、ちょっと、向こうに人がいたらどうするんですか!」
 慌てて言うフロンティーガー。
「だいじょーぶだいじょーぶ!」
 しかし、瓦礫が崩れた先には、人が居た。
「……危ないではないか」
 カレンの頭を膝に乗せたジュレールが、眉を顰めて言う。
 直後、彼女の前に新たなゴーレムが発生した。
「……!」
 カレンを庇うジュレール。ゴーレムは腕を振り上げ――――
「…………?」
 恐る恐るジュレールが目を開けると、英虎が、ソニックブレードでその攻撃を受け止めていた。
「ユキノ! ヒールして!」
 英虎に応じ、ユキノがカレンにヒールをかける。
「ここは俺に任せて、先に行って! 早くしないと間に合わないんだろ!?」
 その言葉に1番最初に反応したのは、ルイだった。
「行きましょう。彼の犠牲を無駄にしてはいけません」
「……いや、死なないから」

 壁を破壊して先に進んでいた赤羽 美央(あかばね・みお)カーラ・シルバ(かーら・しるば)鳥羽 寛太(とば・かんた)は、相変わらず壁破壊、ひいてはゴーレム破壊に勤しんでいた。
「何があるかわかりませんよ。一応警戒しておかないと……って聞いてます? ねえ、……うわっ」
 コードが突然破裂して熱風が吹き出す。美央とカーラを禁猟区の保護結界で守ると、寛太は一つ息を吐いた。
「ふぅ、禁猟区しててよかったです……ってあの、見てました? お二人さん」
 2人は、彼を一顧だにせず壁に爆弾を設置している。
「3、2、1、ボンです。あ、火薬が多過ぎました……」
「ねえ……そろそろ迷ってることに気付きましょうよ……てゆうか、目的変わってない?」
「変わってませんよ。機晶姫を破壊することが目的です」
 カーラが言う。
「えぇっ!? そうだったの!?」
「そんなこと言ってましたねえ……」
「私に服従するなら許してやらんでもないです」
 誰がするかとでもいうように、壁の向こうからゴーレムが現れた。その数、2体。
「出ましたー、やりますよー」
「じゃ、じゃあ僕はサポートを……」
女の子に戦わせるのもアレだけど、だって武術部だもの。僕より戦えるもの。いやもちろん魔法でサポートはするけども。
美央がライトブレードでゴーレムの首をはね、その腹にカーラが一発入れる。腹に穴を開けて、ゴーレムは倒れた。
2体目の身体に、美央は今度は蹴りを入れた。吹っ飛んでいくゴーレムに、カーラが加速ブースターを使って突進し、頭突きと共に粉々にする。
……やっぱり僕、必要ないのかな……
 寛太は少し、しょんぼりした。