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リアクション
「機晶姫なのに、動く遺跡! これは絶対調査する価値アリだよね!」
カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)は、意気込みと共に巨大機晶姫に侵入した。入る時は、空飛ぶ箒で浮上しつつ、機晶姫の腰の辺りに狙いを定めてアルティマ・トゥーレを放ち、凍った部分に火術を打ち込んで穴を空けた。ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)にパワーブレスをかけてもらっての攻撃だったため、割と簡単に土壁は砕けた。
「やっぱり、機晶石はお腹か心臓かなあ! ねえ、ジュレ」
カレンの台詞を聞いているのかいないのか、ジュレールは興味津々の目で辺りをきょろきょろと見回していた。大きさは違えど、自分と同じ機晶姫が助けを求めている。それに応えてあげたい、といつになく熱くなってやってきたジュレールだったが、体内への好奇心もまた相応にあった。
一番興味があるのは、やっぱり機晶石だけれど。
「我もそう思うが……どう進むか見当もつかんし、部屋を地道に確かめていくしかなかろう」
うわの空で答えるジュレール。だが同時に、彼女は自分の中の機晶石の反応を感じていた。助けてと言っていた機晶石。彼女に近付けば、自ずと場所はわかるだろう。
「機晶姫は、何を受け取ってほしいのかなあ! ツァンダに突っ込みたくなくて、動きを停止させるもの……とか? それが、機晶石じゃなければいいね」
明るい顔に、少しだけ懸念の色を乗せてカレンは言った。
箒に乗って、巨大機晶姫を見上げて感想を言い合っているのは四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)とエラノール・シュレイク(えらのーる・しゅれいく)、フィア・ケレブノア(ふぃあ・けれぶのあ)だ。
「これだけデカイものが動いてるなんて、ホント、パラミタは面白い所よね」
「おっきいのですよー。中はどうなってるのですかねー? 話によると遺跡らしいのですが、どんな仕組みなのでしょうか」
「元は遺跡、となると変形でもしたんでしょうか。それにしても、巨大ロボはロマンですね」
エラノールの疑問に、予測ながら答えを返すと、フィアはうっとりした顔で機晶姫を眺めた。
一通り外見を見物してから、唯乃が言う。
「どこから入るかーだけど、口はー、なーんか嫌よねぇ。ビームとか撃たれたら嫌だし、適当な所ブチ抜いて入りましょうか」
相談の後、3人はそれぞれ術や攻撃の構えを取った。狙いは腹部だ。唯乃が光術をビーム状に発動させ、間髪入れずにエラノールが火術を弾丸状にして発動させる。爆発設定をされたそれは、着弾と同時に爆音を響かせた。
「「フィア!」」
唯乃とエラノールが叫ぶ。
トミーガンを構えたフィアはとどめとばかりに、土壁に銃弾の雨をお見舞いした。
腹部に穴が開く。
「ちょろいわね! さーて、機晶石を探すわよ!」
巨大機晶姫の肘下には、腕輪のようなちょっとした足場があった。そこに乗って、白砂 司(しらすな・つかさ)は肘の内側をハルバードとチェインスマイトを使って攻撃していた。土が露出している部分や移動に伴って土がこぼれているような部分を超感覚で探した後、槍の長柄を活かしてスコップやツルハシのように掘り壊す。
錬金術師的に面白い素材が見つかれば、拾っておくことも忘れない。
「大層やんちゃな砂遊びだな。こんな古くくたびれた身体で、お前は一体何を願っているのか……?」
脚部分にはそれなりに人手があったため、司は腕の方にまわっていた。侵入に際してもっとも問題になるのは、振り回される可能性のある腕だ。胴体部だけではなく、頭部にも機晶石が含まれているだろうと考えてのことでもある。
サクラコには、脚担当のサポートと、余裕があればハートの機晶石ペンダントの力を利用しての遠当てを頼んでいた。肩まで当たれば、それなりにダメージもあるだろう。
「どんな理由があってのことだか知りませんけど、目の前の状況に、迷うようなことはしませんよ。サクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)、容赦しませんっ!」
実際、肩からはたまに土塊が落ちてくる。しかし、肩はさすがに頑丈で、機能停止に持ち込むのは中々に難しそうだった。
――ミサイルとかあれば別だが。
これ以上は極力攻撃せず、内部班が機晶石接触に成功すれば良いがと司は思った。
ルミーナはあれ以降、言葉を忘れたように沈黙を続けていた。いくら声を掛けても名前を呼んでも、反応は無い。表情は相変わらず虚ろだが、その内からは怒りのようなものが感じられるのは気のせいだろうか。
多分……気のせいではない。
レンの言った通り、ルミーナとファーシーという女性の同調率は、巨大機晶姫に近付くだけ上がっているように見えた。実際、先程は会話が成立している。
話せれば、もう少し説得を続ければ、何か有益な情報を教えてくれる可能性はある。でも。
機晶石と相対した時、本当にルミーナは返してもらえるのだろうか。
元に戻すのなら、今しかない。完全に戻すことは出来なくても、彼女の意思が死んでいないことを確かめられれば――
そこまで考えた時に隼人の脳裏に浮かんだのは、眠り姫に熱いキスをする王子様の姿だった。やっぱり、これが定番だよな……
半ば本気で実行しようかとも思ったがそれは踏みとどまって、ルミーナの正面に回りこむ。
「……ルミーナさん!」
驚く護衛隊の面々を前に、隼人は情報攪乱を使った。
じじっ……ジ……
空気が揺れる。
ルミーナの身体が後ろに傾いだ。アメリアがそれを受け止め、はっとして振り向く。
「携帯はどうなりました!?」
恭司が慌てて確認する。
「戻りました! いえ……だめです」
ルミーナが再び起き上がる。彼女はややスピードを緩め、再び巨大機晶姫へと移動を始めた。
「もう、侵入の方は落ち着きましたか?」
『ああ。しばらくは揺れることも無いと思うぜ。新しく開いた穴は、腹と腰、背中に一箇所ずつだな。あと、左腕が落ちた。動きも鈍くなってるし、割と満身創痍だな。そっちはどうだ?』
パートナー通話で外の強盗 ヘル(ごうとう・へる)と話していたザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)は周囲を見まわして言った。
「そうですね、どうやら……お尻に位置していた部屋は廃棄物の集積に使われていたようです。不要なものを落とすための坂道みたいなものがあったので、そこを通って――今は普通の廊下に近い場所に居ますね。まあ、どこをどう通ったかはクエスさんから聞いてください」
隣では、サイアス・アマルナート(さいあす・あまるなーと)が契約者のクエスティーナ・アリア(くえすてぃーな・ありあ)と現在位置の確認をしていた。
突入部から正確に移動距離を把握していたサイアスは、それをクエスティーナに伝えて地図を作ってもらっていた。その為、体内のどの地点に居るのか、大体の場所も判る。
「はい……はい、そこを昇って、現在は…………そうですか、腹部の奥の背中側。では、もっと上に行かなければなりませんね」
心臓を止めれば、巨大機晶姫の動きも止まるだろう。そう考え、2人は上を目指していた。だが、それを聞いたザカコが電話を切って提案する。『あっ、おまっ……』とかヘルが言うのがサイアスの電話から漏れてくる。
「いえ、このまま真っ直ぐに進みませんか? どうも、神経の数が増えているような気がするんです」
彼らは、コードの事を神経と呼んでいた。情報を伝達しているのかは不明だが、このコードが巨大機晶姫の要と言っても過言ではないので、あながち間違いでもないのかもしれない。ちなみに、非常に嫌な予感がするため、切断とかは完全スルーしてここまで来ている。
コードの数は、土壁が3分の1程度しか見えなくなるほどに増えている。
「ふむ……確かに、この道を通れば身体のほぼ中央に行けそうです。機晶石があるのは、左胸じゃないのかもしれませんね――クエス、巨大機晶姫はシャンバラのどの辺りなのでしょうか」
『今、草原に入ったところよ』
「なるほど、ありがとうございます。急がないといけませんね」
電話を切ったクエスティーナは、現場に到着した御神楽 環菜(みかぐら・かんな)に言う。
「もうすぐ、中枢に着けそうです」
「そう……ルミーナの状態も良くないみたいだし、何とかなると良いんだけど……」
「心配すんなよ。これだけの人が協力してんだから何とかなるって。ん? なんだ? クエス」
クエスティーナの好奇の視線を感じ、ヘルはうろたえた。途端、ほっぺをむにょ〜んと引っ張られる。
むにょ〜ん〜とどこまでも……
「お、おいっ! タンマ! 破れるって!」
「うーん、どこまで伸びるのかなあ〜〜☆」
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