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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その3

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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その3

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第6章


 台風の影響か、明け方だというのにまだ暗い。

 ホイップの部屋の中で、携帯が鳴り響く。
「はい……はい……そうですか! すみません……こちらはまだ薬が完成していないのです。わかりました。こちらも急いで完成させます」
 グランは携帯を切ると笑顔で皆の方へと向いた。
「たったいま連絡がありました。ホイップちゃん、救出成功だそうです!」
 調合している人達から喜びの声が漏れた。
「まだ油断はできませんわ! 私達が一刻も早く薬を完成させなければ状況は変わりません。頑張りましょう」
 ルディが笑顔でそう言うと、みんなはいそいそと作業に戻っていく。
(ご主人様の封印が解けてしまった際、囚われて…………黒髪と性格を喪うことになりましたわ。ホイップさんは過去の自分は死んだと諦め、喪服の様に黒のドレスを着用している自分とは違いますわ。あなたを心の底から好きだと言ってくれる人との未来をあげたい……。その為にも笑顔で)
 ルディは自分の過去の事を少し思い出すと、胸を軽く胸を押さえる仕草をした。
 その手は震えているが、ぎゅっと握ると無理矢理抑え込み、笑顔で皆を応援しているのだった。
 その様子をしっかり見ていたのは言うまでもなくラグナだけだったが、何もせずただ自分に割り振られた仕事をこなしていく。

 部屋の隅では、ホイップ救出の報が全く聞こえていないほど集中している輪廻の姿があった。
 もくもくと材料を量り、すりつぶし、鍋へと投じて、必要なだけ火を加えていく。
「輪廻さん、お食事は摂られた方が……」
 ロザリンドがヴァーナーの持ってきたお寿司を勧めるがまったく耳に入っていない。
「凄い集中力です」
 そう言い、ロザリンドは輪廻の側を後にした。
「さて、お料理の材料を買って来たのはいいのですが……私は苦手ですし……どうしましょう?」
 輪廻の側を離れたロザリンドは自分が持ってきていた料理の材料をどうしようかと首を傾げていた。
「どうしたの?」
 話しかけてきたのは、みんなが散らかしていくのを片付けていた和子だ。
 ロザリンドは事情を説明すると、和子は何か閃いたようだ。
 材料を持って、厨房へと行き、バイトさんにお願いをする。
「ホイップさんが戻ってきたら、皆でお祝いしたいんだ。ダメ……かな?」
 和子の言葉にバイトさんは頷き、調理を任されてくれたのだった。

■□■□■□■□■

 ミレイユがグランへの報告電話を切ると、皆でホイップを空京まで運ぶこととなった。
「ホイップさん……まだ心は壊れてませんよね?」
「ご主人、心配しすぎだ」
 ソアの弱気発言をベアが否定する。
「時間にしたらまだ24時間も経ってないよ!」
 エルも時計を見ながらそう言った。
「はい」
 グランを運んでいた時の様に、みんなで代わる代わるホイップを乗せて運んでいる。
 これならば、そんなに時間がかからずに空京まで着く事が可能だろう。