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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その3

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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その3

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第4章


 洋館の近くの枯れ木の上からフクロウの鳴き声が聞こえてくる。
 もう夜中だ。
 キマクからでもはっきりと、厚い雲が見えるようになってきた。
 ジャタの森では台風の影響が出始めているのかもしれない。
 洋館の前には、後続組が到着していた。
 たまに洋館の中から悲鳴らしきものが聞こえてくる。
 きっと先に入った人達のものだろう。

「陽動をやらせてもらうッス!」
 そう申し出てきたのはサレンだ。
「囮をやらせてもらうよ」
「私もそっちへ回らせてもらう」
 続いて志願してきたのは終夏とニコラだ。
「俺も別行動だ。ルナ、オマエはそっちだ! そのハナ信じてるぜ?」
「不肖ルナちゃん、皆様のお役に立つべく頑張るであります!」
 ウィルネストはルナールをエル達の方へと向かわせた。
「今度こそお役に立つよ!」
 ミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)はエルの側で息巻いている。
「ええ、頑張りましょう」
「……空回りしないよう気をつけろ」
 シェイド・クレイン(しぇいど・くれいん)デューイ・ホプキンス(でゅーい・ほぷきんす)がそれぞれ、ミレイユに言う。
 リリは鞄から資料瓶を取り出し、中身をララのエペの先に垂らした。
「解かっているのはこれが剣の花嫁であるホイップを石化するということなのだ。量が少な過ぎるが、この剣で直接体内に送り込めば部分的にでも石化できるかもしれないのだ」
「効かないかもしれないと?」
 ララはエペに塗られた薬を見つめ言った。
「それでも賭けるしかないのだ。この手勢ではティセラには敵わないのだよ」
 もしものティセラ対策のようだ。
「また操られたら……」
 その隣では青ざめた顔でユリがうつむいている。
「大丈夫、ティセラに会ったら視線を合わせなければ良いのだ」
 リリはユリの肩に軽く手を置くと、励ました。
「はい」
 ユリは頷いて、リリの言葉を胸に刻んだ。
「そんじゃ突入と参りますか! エル、てめーしくじんじゃねーぞ!」
 なんとなく準備が完了したのを見て、ウィルネストが言うと、皆頷いた。
 エル達は正面から突入していく。
 突入したのを見て、ウィルネストは箒で上空へと舞い上がり、屋根の上に乗り上げた。
 ファイアストームとサンダーブラストを発動させ、屋根を豪快にぶち破り、突入していった。
 終夏とニコラは正面とは反対の部屋の窓を蹴破り侵入に成功。
 サレンは洋館の左側にある窓をパンチでぶち破って入っていった。
「頑張ってね」
「はいっ!」
 泡の胸ポケットに入っていたリィムは洋館の中へと入ると、ブラックコートをはおり、ポケットから飛び出して行った。

「さあ、ティセラを探すわよ!」
 拳を握りしめ意気込んでいるのはルカルカ・ルー(るかるか・るー)だ。
 後続組と一緒に洋館の中へは入らず、未だ洋館の外に居た。
「無理はするな」
「うん!」
 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)の言葉にルカルカは素直に頷いた。
「後ろは任せてくれ」
 エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)もルカルカに声を掛けた。
 エースの後ろではえらくしょんぼりしているエオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)が慰めていた。
「対応策をちゃんと取らなかったオレ達が悪かったんだよ」
「はい……」
 操られてしまったので主体性が踏みにじられ、内心どす黒い感情が渦巻いているようだ。
「剣の花嫁はそういう風に出来ている」
 メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)はそう言い放った。
「剣の花嫁は上位にある者が下位にいる剣の花嫁の主体性を無視して操っても良いって言う事!?」
 クマラはメシエに食ってかかった。
「そんな事はない」
 反論したのはダリルだ。
「来る前に誰かが言っていたが、操れるのはきっとティセラの星剣の能力だろう」
 ダリルがそう言うと、クマラは安心したような表情でほっと胸をなでおろしたのだった。
「んもう! そんな難しい話ししてないでティセラを探しに行くわよ!」
 待ちかねたルカルカが声を掛けた為、この話しはこれで終了となり、洋館の周辺でのティセラ探しとなったのだが、近くでティセラの姿を見つけることは出来なかった。