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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その3

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【十二の星の華】シャンバラを守護する者 その3

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第8章


 綺麗な夕焼けが空京の町をオレンジ色に染める。
 石化していたホイップはすでに部屋についており、あとは薬が完成するのを待つばかりとなっている。
「で、出来た! 出来ましたよ!!!」
 グランがビーカーを高々とあげると、皆から歓声が上がった。
 輪廻は、よっぽど集中で疲れていたのだろう、完成を聞いた途端に爆睡してしまった。
 グランが石化しているホイップへと薬をゆっくり全体に垂らす。
 シュワシュワと音がしたと思うと、白い煙が吹き出した。
 暫くすると煙が落ち着いてくる。
 皆の唾を飲み込む音が聞こえてくるようだ。
「けほっ……こほっ!」
 煙の中から出てきたのは無事な姿のホイップだった。
「みんな……ありがとう」
 笑顔でお礼を言うホイップを見て、カレン、ルカルカ、クマラ、ルナール、ヴァーナー、ソア、黎、ロザリィヌ、ルディが一斉に抱きついた。
「わっ!」
 びっくりしたホイップだったが、皆の顔を見て本当にほっとした顔をしていた。
「ホイップ復活パーティー!」
 和子とロザリンドは大声で言うと、厨房から先ほどバイトさんに作ってもらった料理を運び入れる。
 机なんか出してる暇も惜しいので、もうそのままだ。
「お祝いの料理だったら僕も作るよ」
「わ〜! プリンが良いのです!」
 サトゥルヌスにナイトがリクエストすると腕まくりをして了解していた。
「僕も負けてられないよ! 行ってくるね!」
 セシリアはメイベルとフィリッパにそう告げると厨房へと降りて行ったのだった。
「やっぱりこっちの方がいいですぅ」
 メイベルは皆が笑顔でいるこの空間を見て、そう言った。
「うふふ、そうね」
 それにフィリッパも賛同する。

「自分を犠牲にするなんて……こんな怖い思いを二度とさせないでくれ」
 黎はホイップの前に立つと、軽く頬を叩いて、もう一度抱きしめた。
「ホイップ殿、無事で何よりなのです」
 じゃわはホイップの肩に乗り、ほっぺをスリスリした。
「ごめんね、心配かけました。ありがとう」
 ホイップはゆっくりとそう言った。
「そうだ、じゃわ助けてくれた人達にお礼を言いなさい」
 黎はホイップから離れると救出チームみんなにお礼を言わせた。
「良く頑張った」
 じゃわは黎に褒められたのが嬉しくて、黎の頭の上に今日はずっと乗っかっていた。

「あのね、ホイップ。この人が私のパートナー、美海ねーさまだよ! ちゃんと紹介したいってずっと思ってたんだ!」
 えへへと沙幸は笑う。
「はじめまして、ホイップ・ノーンです」
 ホイップはペコリと頭を下げる。
「あら可愛い方ですわ。でも……沙幸さんには敵いませんわね」
 美海はそう言うと、沙幸の胸を揉んだ。
「もう! それ以上はダメなんだからね!」
 顔を赤くしながら言ってもあまり説得力がない。
「胸はやっぱりこうでなくちゃいけないよな」
 それを遠目に見ていたのは総司だ。

「ホイップ……無事でよかった」
 呼雪はホイップを見つめて、言った。
「うん、皆のおかげだね。呼雪さんもありがとう」
 ホイップは頭を下げる。
「……ホイップ」
「ん?」
「ホイップは女王になりたいとは思わないのか?」
 真剣な眼差しでホイップを見る。
「……うん、なりたいとは思わないよ」
 ホイップも真剣に返した。
「それでも……もしかしたらティセラと戦うことになるかもしれない。そうなったとしても、俺は……頼りないかもしれないがホイップの力になりたい」
 真摯に見つめられホイップは顔を赤らめている。
「コユキ、なんかまた誤解されそうだよ?」
「本当の気持ちを誤魔化してどうする」
 ファルの突っ込みは効かなかった。
「うん、そうだねボクもホイップちゃんの力になりたい」
「はう……えぅ……ありがとう」
 ファルにも言われてしまい、ホイップはどうしていいのか分からず、わたわたしてしまった。

「元気な笑顔が見られて良かったですわ」
 珠樹はホイップの額にキスを贈った。
「わっ……うん、台風対策してくれてありがとう!」
「では」
 短く挨拶すると珠樹はホイップの側を離れ、空京を出たのだった。
「ミーを忘れちゃ困るぜ」
 実も後ろから付いて行く。
 このまま、台風被害の復興支援へと向かって行ったようだ。

「ホイップさん、石化が解けて良かったです」
「ありがとう!」
 優希はちょっとだけホイップに近づいた。
「お聞きしたいのですが、最近起こっている女王像にまつわる事件について何か知りませんか?」
「う〜ん……ごめんね、最近の事件はあまり知らなくて……」
「そうですか……」
「でもね、ティセラは……酷い事をするような人ではなかったよ」
 ホイップは首を傾げて言ったのだった。

「ホイップ君」
「は、はいっ!」
 ホイップはアルツールに急に呼ばれ驚いていた。
「これは私のお古だが、使うと良い」
 手渡されたのは確かに少し年季の入った空飛ぶ箒だ。
「良いの?」
「勿論だ」
「ありがとうございます」
 ホイップは嬉しそうに頭を下げるといそいそと自分のクローゼットへとしまったのだった。

「ホイップちゃん」
「エルさん……」
「あのね、告白の返事が聞きたいな」
「うん……私もエルさんの事、好き……だよ」
 顔を赤くしてエルにホイップは返事をやっと言う事が出来た。
「ホイップ殿ーーーっ!」
 エルがガッツポーズをとろうとした瞬間、ルナールがホイップに抱きついてきて邪魔されてしまった。
 ルナールはホイップにぎゅーっと抱きついて、尻尾を振っている。
 ルナールは何を思ったのかホイップの顔まで自分の顔を近付けると鼻をふんすん。
 そのままペロリと頬を舐めた。
「!!」
 エルは驚きで開いた口がふさがらなくなっている。
「ホイップ殿は甘い匂いがするのに、舐めても甘くないでありますよ?」
「えっ? えっと……」
 困っていると更に誰かが抱きついてきた。
「ああ……やっぱり石のかた〜い感触より、このすべすべの肌のホイップ様の方が素晴らしいですわ〜。スリーサイズを測れなかったのは残念ですけどっ!」
 ロザリィヌだ。
「ホイップ殿の返事が聞けたのは良かった。だが、ホイップ殿に彼氏などまだ早い!」
 黎がエルを引き離す。
「そうですわ! ホイップ様は大事なわたくしの妹ですわ〜!」
 ロザリィヌは抱きついたまま言う。
「ルカルカの大事な友達だよっ!」
「ボクにとっても大事な友人!」
 ルカルカとカレンも抱きついた。
 ジュレールもカレンに抱きつく。
「うふふ、私にとっても大事な妹ですわね」
「ホイップさんは親友です!」
 ルディとソアも加わった。
「と、言うことだ。ホイップ殿と付き合いたいなら我等を納得させてみせるんだな」
 黎は仁王立ちでそう言い放った。
「そ、そんなぁ……」
 エルは泣きそうになっている。
 その様子をケイラとレン、幸、ミレイユが遠くから楽しそうに眺めている。
「わぁ〜! ボクもまぜてください!」
 ヴァーナーはそう言うと飛びついて来た。
 その瞬間、ホイップに抱きついていた人達全員が倒れ込んだ。
 部屋からは皆の笑い声が響く。
「うん、良い写真が撮れた」
 勇はにっこりと笑っている。

 その後、倒れていたホイップを助けたのはホワイトだった。
「ホイップ様、はじめまして。エルのパートナーのホワイト・カラーです」
「こちらこそはじめまして!」
 握手をしながらの挨拶となった。

 メイコは端の方にいたのだが、ホイップが探し出し挨拶をしに行った。
「守ってくれてありがとう!」
「聞こえてたのか?」
「うん!」
 改めて、挨拶するとホイップとメイコは少し談笑していたようだ。

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「こんな奴でも必ず助ける……それだから俺は」
 トライブは気絶しているシャガを宿屋から連れだすと軍用バイクでティセラの元へと向かって行ったのだった。

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 後日、幸のまとめた巨大台風に関するレポートがイルミンスールの図書館に置かれることとなった。

担当マスターより

▼担当マスター

えりか

▼マスターコメント

 『【十二の星の華】シャンバラを守護する者』に参加してくださり有難うございました。
 ホイップでは珍しいシリアスでしたがいかがでしたでしょうか?
 洋館のトラップはほとんど笑いに走ってしまいましたが……。
 今回のシナリオではホイップの心が壊れたり、ホイップ粉々とか、台風被害が甚大とか色々バッドエンドはあったのですが、無事にホイップは救出されましたね。
 最後はホイップに抱きつくとかが凄く多かったので嬉しく思いました。
 次のシナリオもそんなに間を開けずに公開となると思いますので宜しくお願いします。

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