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ホワイトデー…言葉に出来ない思いを伝えたい

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ホワイトデー…言葉に出来ない思いを伝えたい

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第4章 邪魔する者は粛清せよ

 飴玉が飛んでこないような場所でゆっくりしようと、スウェル・アルト(すうぇる・あると)は木の木陰でまったりと過ごしている。
「お茶、おいしい。お茶受けはやっぱり、せんべいが一番」
 パイプ椅子に座り、パリパリとせんべいを食べる。
「スウェルみーつけた。ここにいたんだね」
 ヴィオラ・コード(びおら・こーど)は片手を振り、スウェルの傍へやってきた。
「そこのカップルッ、この飴玉銃で甘い空気ごとぶっ飛ばしてやるよっ!」
 カガチは銃口を彼らへ向け、飴玉を乱射させる。
「スウェルに流れ弾でも何でもぶつけたら、即ナラカに送ってやる」
 彼女を守ろうと淡く白に光る傘の先端部分で防ぎ、凶器の飴玉を斬る。
「(このままじゃせっかく持ってきた花束が・・・。とりあえずここへ隠しておこう)」
 ヴィオラは花束を台無しにされないように草むらの中へ隠した。
「やれるもんならやってみな。ほらほら、どこからも来なよ」
 フンッと笑い飛ばすとカガチは親指をぐりんっと地面へ向けてヴィオラを挑発した。
「そこのリア充爆破魔!待ちなさいですぅ!!」
 ザッと草を踏みしめ、黒光りするフライパン形の凶器の光条兵器を両手に握るメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)が現れた。
「うるさいっ。義理チョコだとか友チョコばっかりしかもらえなかった俺の悲しみが、あんたに分かるか!?」
「何を言ってるのよ!それすらもらえなかった人だっているんだからねっ!」
 セシリア・ライト(せしりあ・らいと)はカガチにフライパンを向けて怒鳴り散らす。
「本命・・・?思いを伝えたい・・・?フンッ、ふざけるな。爆発しろぉおおーーっ!!」
「どうやらちょっとお灸が必要みたいですわね」
 ギラリと相手を睨んだフィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)は、フライパンの取ってに鎖を巻きつけ振り回す。
「覚悟なさい!」
「ちくしょぉ、やられてたまるかぁあ!」
 ズギャギャギャッ。
 せっかく見つけたカップルを目の前に葬られてたまるかと、襲い掛かるフィリッパに向かってカガチが銃を乱射させる。
 フィリッパは手にしているフライパンを振り回しながら迫り来る銃弾を叩き落とす。
「ふぼぇえっ!」
 ドゴスッ。
 彼女のフライパンがカガチの腹部を殴りつける。
「ぐぅうっ、せめてあんただけでもっ」
「あれ、俺・・・言ったよね?スウェルを狙ったらどうするか。これから・・・どうなるか分かるよね?ていうか、さっき宣言したし」
「ちょ、あっ、待て。あぁあああーーっ!」
 ヴィオラ光条兵器の鋭利な先端でカガチの襟をぐいっと持ち上げ、振り回して空高くぶん投げて相手の額を斬りつけようと傘の先端部分で狙う。
 カガチはとっさに身体を捻り避けた。
「くっ、避けられた・・・」
「逃がさないよ!」
 ターゲットを仕留めようと、セシリアがフライパンを力いっぱい2つ投げつける。
「もっとよく狙いなよ」
 飛ばされながらもカガチは鈍器を簡単に避ける。
「私たちからは絶対に、逃げられないですよ♪」
「げっ、3つ目!?無理無理無理ぃいいいっ!ぐぎゃぁあああーーっ!!」
 メイベルの投げたフライパンがカガチの脳天に直撃する。
 校舎の壁に激突し、ベチャッと地面へ落ちてしまった。



 襲撃者を排除した後、スウェルとヴィオラは何事もなかったかのように、木陰で静かに過ごす。
「よかった無事だね」
 被害を受けないように隠しておいた花束を、ヴィオラが草むらから拾い上げる。
「ヴィオラもお茶、いる?」
「ちょっと冷えてきたし、もらおうかな」
 スウェルからお茶の入ったカップを受け取り、ふぅふぅと息で冷まして飲む。
「お茶受けのおせんべい、食べない?」
「うん、1枚もらうよ」
「―・・・」
 パイプ椅子に座ったままスウェルは、器からおせんべいを取ったヴィオラを見上げてじーっと見つめる。
「ど、どうしたのさ」
 彼女の視線に気づき、驚いたように目を丸くする。
「椅子に座らない?」
 スウェルは持ってきたもう1つのパイプ椅子を指さして言う。
「あ・・・ありがとう」
 彼女に勧められ、椅子に座った。
「今日は本当に寒いね」
 そう言いながら、そっと椅子を彼女の傍へ寄せる。
 せんべいを食べている彼女の方を見て、いつプレゼントを渡そうかと、ヴィオラはちょうどいいタイミングを窺う。
「(お茶を飲み終わったようだね。渡すなら今しかない!)」
 ヴィオラは隠し持っている花束をスウェルに渡す。
「花束?・・・・・・大きい。ありがとう」
 ローダンセとマーガレットの周りをダスティミラーで飾った大きな花束だ。
「可愛いお花。いい香り・・・」
 もらった花束をスウェルに喜んでもらえたヴィオラは嬉しそうに照れ笑いをする。



「教室の近くや、カフェは大変なことになっているね。僕たちは図書館でゆっくりしていようか?」
「そうですね」
 神和 綺人(かんなぎ・あやと)はのんびり過ごそうと、クリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)を図書館に誘う。
「さっきは酷い目に遭ったねぇ・・・。あっ、ちくしょう・・・あんなところにも!」
 今度こそカップルを狙撃するチャンスだと、カガチは柱の陰に隠れて銃を構える。
「あそこにいるのはカガチじゃないですか。柱の陰になんか隠れて何をやっているのでしょうね」
 こそこそと隠れているカガチを見つけた島村 幸(しまむら・さち)が、ゆっくりと近づく。
「何かを狙っているようですね。あぁっ、あんなのをカップルたちに向けて!」
 彼が綺人たちを狙っていることに気づき、そっと接近しようとブラックコートを羽織る。
「そこのリア充ども。そんなにイチャイチャしたかったら、これをくらってからにしなっ」
 突然襲撃された2人は、飴玉から逃れようと必死に逃げる。
「も、もしかして・・・そんなはずない、ないっ」
 幸が着ているブラックコートの端っこに辺り、ちらりと足元が見えた。
 カガチはぶんぶんと頭を左右を振り、見なかったことにした。
「逃げられないように、隅っこでも追い詰めるかな。―・・・あれ?あれれ・・・玉切れか」
「楽しそうですね、カガチ。イルミンの妹に会いに来ただけですが、まさか我が家の狗が暴れているなんて」
 背後から忍び寄った幸が鬼目の視線でカガチを睨む。
 威圧しながらカガチの首目掛けて銃の柄でゴンッと殴りつける。
「くぅ、こんなところで倒れてたまるもんか!」
 慌てて床に散らばる飴玉を拾い補充する。
 やらなければ確実にやれると思い、必死な形相で飴玉を放つが、まったく命中しない。
 彼と幸では若干、力量に差があるだ。
「くくくっ、いい度胸です」
 それはもはや、飼い主とペットとの差ともいえるかもしれない。
 飴玉に書かれている文字に、彼が飼われていることが書かれているのだ。
 “俺を拾ってくれてありがとう。さっちゃんのお陰で毎日楽しいです。これからも宜しく。”
「ぎゃわぁああーっ!!」
 カガチはあっけなく幸に蜂の巣されてしまった。
「まいった、負けたよ。降参するよ!」
「最近、私が忍犬を飼い始めてかまってあげれないとはいえ、よそ様に迷惑かけるまで暴れるんじゃありませんっ!」
 ぐりぐりと彼の後頭部に銃口を押し付けながら言う。
「そんなにかまってほしかったなんて知りませんでしたよ」
「うぅうぅうー・・・」
 泣きながらカガチは床へ降参したポーズをする。
 幸の忍犬であるカガチと名づけられた犬が、降参のポーズをとっている彼を見下ろす。
「ハイハイ、吼えない啼かない。S×S×Labに戻ったら、ちゃんと解剖したり試薬したりしてあげますからね」
「お仕置きも甘んじて受ける所存・・・。って、え!?改造?いやまってそれはちょっと・・・。帰るだけだよね?何でこんなに縛る必要が!?」
「同じことを2度も言わせないでください♪」
 ベルトで忍犬じゃない方のカガチの両手を縛りあげ、布で口に猿轡をする。
 ダンボールにカガチをしっかり詰め、校舎の外へひきずっていく。
 小型飛空艇の前籠にくくりつけ、ハンドルを握ると幸は2匹のカガチと一緒にラボへ帰った。



「やっと図書館に来れたね」
「もしもあの場所に幸さんがいなかったら、ゆっくり過ごせませんでした」
 イルミンスールの図書館にやってきた綺人とクリスは本を選び椅子に座る。
「(それにしても、あんな形で思いを伝えたら、アヤが死んでしまいそうです)」
 彼女の思想とは裏腹に、こめかみを撃ち抜かれようが、蜂の巣にされて明らかに死んでそうでも、誰1人として死んでいない。
 きっとイベントのノリでそうなのだろう。
「(でも、危険すぎる思いの伝え合いをしたら・・・)」
 飴銃を使って伝え合いをしたらどうなるか、クリスは想像してみる。
 
― クリスの想像開始 ―

「とうとうこの日が来てしまったね・・・」
 綺人は月明かりの差し込む窓の傍でクリスを待った。
「えぇ、でもこうしないと。しっかり伝わらないと思うんです」
 冷静な口調で言うとクリスは手にしている飴玉銃を綺人に向ける。
「アヤに対しての気持ち・・・。どれだけ思っているか、分かってほしいんです」
「クリス・・・僕も同じ考えだよ。こうしないと、ずっと前から思っていたことを伝えきれないから」
 そう言い綺人も飴玉銃の銃口を彼女へ向けた。
 互いの銃には実弾ではなく飴玉が込められている。
 飴には相手に対して伝えたい言葉を書き、その1粒1粒に2人の思いが込められているのだ。
「いくよ、クリス」
「―・・・えぇ、心の準備はもう出来ています。いつでも撃ってください」
 ギリリィッ・・・。
 トリガーに指をかけ、同時に撃つ。
「クリス!」
「アヤ!」
「僕の飴に込めた思いを・・・」
「私の全ての思いを・・・」
「受け取ってーー!!」
 ズダァアーーンッ。
「受け取ったよ、クリス・・・」
「アヤ・・・私も全て受け止めました・・・」
 綺人とクリスは互いに微笑み合う。
 床に倒れて気を失った2人の表情はとても幸せそうだった。

― クリスの想像終了 ―

「普通の伝え方がいいですね、やっぱり」
「どうしたの?」
 綺人はボソリと言うクリスの方を見て首を傾げる。
「いえ、何でもありません」
 恋人の彼に向かって、彼女はいつもの笑顔でニコッと微笑みかける。



「バレンタインにチョコをもらったからには、やっぱりお返しをいませんと」
 チョコをくれた相手を呼び出そうと、クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)はメールをうつ。
「どこに来てもらいましょうか。どうせなら、伝えやすい静かな場所がいいですね」
 呼び出す指定の場所は、校舎の裏に決めた。
「もらったお返しをしようと、呼び出すのでござるか?」
 教室の中へやってきた童話 スノーマン(どうわ・すのーまん)が声をかける。
「そうですよ。気づきやすいように、机の中へ入れて置きましょうか」
 クロセルはカーラ・シルバ(かーら・しるば)にメールを送信すると教室から出た。
「来てくれるといいですな」
「えぇ、そうですね」
 カーラに伝えた場所へ行き待っていようと、2人は校舎裏へ向かった。



「何か机の中に入ってますね。これは・・・手紙?」
 教室にやってきたカーラは自分のカバンの中から携帯を取り、メールをチェックするとクロセルから来ていることに気づいた。
「誰から?」
 傍から鳥羽 寛太(とば・かんた)が覗き込む。
「えーっと、クロセルさんですね」
「何て書いてあるのかな」
「バレンタインのチョコのお礼がしたいので、校舎裏まで来てください。―・・・と書いてあります」
 読み終えたカーラは携帯を閉じる。
「たしかに武術部として義理チョコを渡したような・・・。えぇ、渡していますね」
 過去の記憶をたどり、渡したかどうか確かめる。
「急にお誘いとはなんでしょう・・・あやしいです」
「とにかく、プレゼントをくれるというのだからいってみたらいいんじゃないか。不安なら僕が一緒についていくし」
「そうですね、一緒に来てください」
 カーラと寛太の2人は怪しみながら、指定された場所へ歩いていく。
「何でしょう、向こうの方から誰か・・・もの凄いスピードで来ます」
「魔女ぉおお〜、どーこーにいるのーぉおお!?」
 大声を出しながらミィルが全速力で接近してくる。
「イルミンスールの生徒ね。見たところ魔女じゃないみたいだけど、ウィザードかしら」
「はい・・・そうですけど。えっ、いきなり何を!?」
「想う相手に飴をぶつけるって聞いたのよ!」
 魔女信仰の盲目極みなのか、ミィルは在学している魔女及びウィザードを片っ端から狙い、飴玉ぶつけて回ろうとしているのだ。
 カーラに向かって飴玉を投げつけた火術で溶かし、灼熱アメーバ状になったドロドロの飴で襲い掛かる。
 先の先を読んだカラーは教室の中へ逃げ込み逃れる。
 床にベチャッとついた飴は、まるでべっこう飴のように平べったくなった。
「まだまだ飴はあるわよ」
「これではクロセルさんのところまでいけません・・・」
 飴の波を避けながら、カーラは反撃の隙を窺う。
「あららっ、術が出せなくなったわ」
 途中でSPが切れてしまい、ミィルは火術を放てなくなってしまった。
「ようやくSPが切れたようですね」
 廊下へ出るチャンスだと思い、カーラは寛太と共に校舎裏へ走っていく。
「うぁあんっ、逃げられた!」
 ミィルは悔しそうに足をダンッと踏み鳴らした。



「遅いですね・・・」
 クロセルは校舎裏で1時間ほど待ったが、まだカーラが来る気配はない。
「ただ美味しいモノをお返しするだけでは芸がないですし。何か心と記憶に残る素敵なヤツがいいでしょう」
「ほぅ、それであの銃を持っているのでござるか」
「普通のプレゼント渡すよりも、こっちのほうが2つの意味で美味しいですよね」
「喜んでくれるといいでござるな」
「・・・ふむ、飴玉銃。斬新ですね」
 飴玉銃を見ながら、ニッコリと笑う。
「すみません、ちょっといろいろあって遅れてしまいました」
 カーラは彼の姿を見つけ、片手を振りながら駆け寄る。
「俺からのお礼です、受け取ってください!」
「―・・・え、銃弾!?」
「違うよカーラ、あれは飴玉だよっ」
 彼女の後にやってきた寛太が言う。
 飴玉には彼のお礼の言葉、“チョコありがとうございました。おいしくいただきました。”と書かれている。
「おかしい。ヒーローがこんなエグいことするなんて。分かりました。これは・・・入れ替わりです!」
 先の先を読んで飴を避けたカーラが訝しげにクロセルを睨む。
「え?それはどういうことだいカーラ!」
「まあ以前から彼はあやしいとは思っていましたが、最近のクロセルさんは特にあやしい・・・」
「そうか、わかったぞ・・・!」
 寛太はビシッとクロセルを指差す。
「最近、似ている人を見かけたから、まさかと思ったけど。一般学生に溶け込んでしかもイルミンで情報収集さらにヒーローを名乗るとは!」
 飴玉銃を握り締め、ギリギリと歯を噛みしめる。
「ファンだったのに・・・許せない!あなたは薔薇学のスパイだったんだ!」
 信じていたのに・・・という喪失感のあまり、悔しそうに言葉を吐き捨てる。
「あなたは一体誰なのです!?イルミンのヒーローをどこへやったんです!?クロセルさんを返せー!」
 クロセルに向かって“バカ仮面”と文字を書いた飴玉を銃口から放つ。
「へっ!?いや、俺ですよ俺!」
「問答無用ーーっ!!私のチョコが欲しいばかりに、クロセルさんになりすましたのでしょう!!」
 地球人の機晶姫好きには呆れるとため息をつき、“このニセモノめ”と書いた飴玉をマシンガンのように、彼の仮面に向かって連射する。
「や、やめてください。仮面だけはーっ」
「その仮面を剥ぎ取れば、クロセルさんだと確認できるからね」
 容赦なく寛太も“薔薇学にこれ以上仮面キャラ追加してどうすんだ”と書いた飴玉を撃つ。
「ちょっと!そもそも薔薇学はそういうところじゃないですかっ」
 クロセルの突っ込みも聞かず、寛太は撃ち続ける。
「こうなったら必殺技で・・・」
「なっ、・・・クロセルさんに必殺技!?」
「必殺・通行人バリアー!!」
 ただオロオロと見ている通行人、スノーマンと盾にする。
 ズガガガァアアッ。
 ドスドスドスボスンッ。
「ふぼぎゃぁああっ!?」
 真っ白な身体に飴玉がめり込み、激痛のあまりに悲鳴を上げてしまう。
「ごはぁっ」
 自衛に持っていたはずの飴玉銃を使う間もなく気を失った。
「盾を使うとは。でも、まだ飴は残っています」
「乙女たちのアタックは、全て朕に向けられるものなのネー!」
 両手を広げて躍り出たヴェルが、運悪く盾となってしまう。
「な、なんという過激な伝え方!猛烈アタック、しっかり受けたヨ〜。あぁ〜目の前が薔薇のように真っ赤!!」
 自らの身体から噴出す鮮血を薔薇のカラーだと思い、ヴェルは幸せそうに土の上へ倒れた。
「フッフフフ、今です!」
「卑怯なっ」
「さぁ、お礼を受け取ってください!」
 尊い犠牲となり気絶しているスノーマンを、これでもかと盾にしながら、人間でいうカーラの心臓部分にあたる箇所を狙い撃つ。
「ぁああぁああ゛ーー!!」
 撃ち抜かれたカーラは悲鳴を上げ、ドサァッと地面に倒れた。
 それはまさに(むだに)くろい部ならではの、勝つためならどんな卑怯な手段も取る小ざかしい撃ち合いだ。
「カーラ!!」
 寛太は倒れて気を失っているパートナーの元へ駆け寄る。
「よくも、よくもカーラを!」
「これで終いです」
 鋭い眼光を向けて寛太を威圧し、残りの一発を心臓目掛けて撃つ。
 ダァンッと銃声が轟く。
 寛太が倒れたのを確認すると、クロセルはスノーマンを抱えて校舎内へ戻ろうと歩き始める。
「くっクロセルさん・・・逃がさない・・・よ・・・・・・」
 ゴプッと血を吐きながらも寛太は、力の入らない震える指で飴玉銃のトリガーを引き、背を向けて歩くクロセルに向かって撃つ。
 倒れた拍子にクロセルはズボンッとスノーマンの雪の身体に顔を突っ伏す。
「は・・・はははっ、やったよカーラ・・・。―・・・・・・っ」
 彼を倒した寛太は笑い、手の中から銃が滑り落とした。
 勝利の笑顔のまま、その場でバタリと気を失った。