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リアクション
第3章 ヒントを探せ
「地下で何を運んでいるんだろうな」
5階の運搬場管理室にいる佐伯 梓(さえき・あずさ)は、地下でいったい何を運んでいるんだろと考え込む。
「他のパネルをいじるとどうなるんだ?」
まだ押していないボタンを押してみる。
「おっ!運搬場の様子が見えるぞ」
モニターの画面に、地下6階と7階の様子が映し出された。
「うーん、見れたのはいいけど。何を運んでるのか見えないな・・・」
画面越しではベルトコンベアの上に流れるダンボールの中に、何が入っているのか見えなかった。
「どっかにマイクがないかな。―・・・さすがにそんなのはないか」
機体に付属のマイクがないか調べてみるが見つからない。
「さて、先に上の階に行った仲間と合流するか」
オゼト・ザクイウェム(おぜと・ざくいうぇむ)と共に、7階の資料室にいる生徒のところへ向かった。
「見回りの兵がいますな」
情報を得ようと6階の資料室に来た道明寺 玲(どうみょうじ・れい)が、本棚の近くを歩く兵を見つける。
「向こうにもいますぇ。上の階で調べた方がいいかもしれないどすぇ〜」
イルマ・スターリング(いるま・すたーりんぐ)は小声で7階で調べようと言う。
「そうですな、この階にも他の人が調べに来るかもしれない」
ゴースト兵に気づかれないよう、玲とイルマは足音を立てないようにゆっくりと歩く。
「階段付近に見張りがいますね」
上の階に進もうと階段を見つけた緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)だったが、見張りの兵がいるせいで上れない。
「相手は1人です。倒していきますか?」
傍らから紫桜 遥遠(しざくら・ようえん)が小声で話す。
「近くに他の兵がいないようですから、今のうちに倒して通りましょう」
「では遥遠が倒してきましょう」
隠れ身の術で近づき、高周波ブレードでターゲットの頭部を斬り落とす。
「動けないようにしていきましょうか」
仲間を呼ばれないように、遙遠はヘキサハンマーで床に転がる兵の頭を叩き潰した。
「やったのか?」
「えぇ、1人しかいなかったんで片付けました」
遙遠は合流しようとやってきた梓に言う。
「ここへ放置していると、見回りをしている兵に見つかってしまいますわ」
すぐに発見されないよう、エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)は死体を本段の陰へ引きずる。
「他の兵が来ないうちに上の階へ急ぎますぞ」
玲たちは階段を上り、7階の資料室へ行く。
「一応、ゴーストはいなさそうだけど」
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が周囲を見回して警戒する。
「危険な者が近づけば、禁猟区で探知出来ますぞ。ただ、反応が遅れるかもしれないから注意したほうがいいですな」
「分かったわ、気をつける」
美羽は彼女の言葉に頷き、施設の構造を調べ始める。
「まずはこの建物の構造を調べないと。これかな?」
棚から1冊ファイルを取り、中に何が書かれているのか読もうと開く。
「―・・・地下は10階まであるのね。この上もまだあるみたい」
1ページ目、2ページ目と読み終わり、次のページを捲る。
「地上は10階建なのね、姚天君は最上階にいるのかしら。もしくはその辺りかもしれないわね」
相手が最上階にいるのかもしれないと予想してみる。
ファイルを読み終わり、あった場所に戻すと、別の棚にあるノートを取った。
「そもそも何のためにこんな施設を作ったの?」
ノートを開き、目的が書かれているか調べる。
「あの病棟でやっていた実験と、同じようなことをやっているみたい。植物を使ってゴーストを作ろうとしているのね」
イルミンスールの森の植物、マンドラゴラを使って新たなゴーストを作ろうと企んでいることが書かれていた。
「これのためにわざわざ魔力を集めているの?―・・・まだ他にも目的があるはずよ」
片っ端から探してみるが、見つからなかった。
姚天君の能力について資料があるか探してみるが、それも見つからなかった。
「資料が多すぎる・・・これじゃあ見つけづらいわ。自分の能力を記している資料なんて置いておくわけないか・・・」
「だいぶ疲れたみたいですね」
ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)がSPタブレットを持って美羽の傍にやってきた。
「休んだら他の人からちょっと聞いてみようかな」
SPタブレットをもらった美羽は、体力を温存しようと一休みする。
「十天君は何でオメガを狙っているのでしょうね」
遙遠は資料を見て、なぜ狙っているか調べる。
「これ見てください」
他の本棚から遥遠がノートを持ってきて見せる。
「生物実験をしていた場所ですか」
病棟での実験記録を見た彼は顔を顰めた。
「何でこんな場所を必要だったんでしょうね?」
「他の人たちに見つかりそうな場所や、見た者たちを葬れるような場所でしたね」
「どうしてそんなところがあるんでしょうか」
問いかけるように遙遠をじっと見る。
「それとオメガさんの能力が関係あるってことですか?」
「夢を見せる能力・・・。それだけでしょうか」
「というと・・・」
「もしも悪夢が実体化したらどうなると思います?」
彼女の言葉に遙遠は言葉を失う。
「で・・・それを利用しようとこんなことを・・・」
遥遠はノートを持つ手をぎゅっと握り締める。
「―・・・自由に実験が出来る場所が欲しかったから・・・ということでしょうか」
怒りのあまり遙遠が棚をドンッと拳で殴りつける。
「遙遠・・・そのファイル・・・」
実験記録と書かれたファイルを見つけた遥遠が、彼の傍を指差す。
「これですか?」
生物実験が記録されたそれを彼女に手渡した。
「ゴースト以外に何か作っているようです」
「ウィルス実験・・・?」
遥遠が開いたファイルを見ると、そこにはウィルス実験の記録が書かれている。
「そんなことをしているのか」
他の資料を見ていた梓が隣から覗く。
「(ふむ・・・何のために作っているのであろうか)」
オゼトは首を傾げる。
「(自分たちのため・・・それとも誰かのために・・・?)」
いったい何の目的のために作っているのか考え込む。
「うーん、テロでもするとか?」
梓が遥遠に問いかける。
「それはまだ分かりませんが・・・」
「じゃなかったら、何かの目的のために作ってるんだろうな」
「目的・・・ですか」
ノートに書かれていないかページを捲る。
「どうやらどこかですでに、試作品を試してみたようですね」
「発症状況も書かれています」
その症状の状態について遥遠が項目を指差す。
読んでみると40度以上の高熱、そして酷い寒気の症状が表れるようだ。
「これ・・・どこかで」
「たしかイルミンスールと百合園・・・ですよね?」
「それを実用化するための実験だったのでしょうか・・・」
「実用化ってことは、どこかで使うんですか!?」
驚いたように遥遠が目を丸くする。
「内容によると、最終的に魔女とシャンバラ人がターゲットじゃないみたいです」
「地球人でもないようですね・・・。他の種族を狙っているみたいですよ」
遙遠がページを捲ると、別の種族に使うために使うようだ。
「そのために大量の魔力が必要なんでしょう」
「―・・・それでオメガさんに悪夢を見せるためだけじゃなく、実験に魔力が必要だから水竜を捕まえたんですね」
彼の説明に納得したように、遥遠はコクリと頷いた。
「建築構造が書いてありそうなやつがありませんかね・・・」
影野 陽太(かげの・ようた)はレヴィアが捕らわれていそうな場所を探そうと、施設内の構造が書かれていそうなファイルを探す。
「持って来ましたわよ」
大量のファイルを抱えたエリシアが陽太の傍へやってくる。
「これだけあれば、1つくらい分かるかもしれませんわ」
彼の傍にドサッと置く。
「―・・・えっ、えぇえ!こんなにですか!?」
「し!声が大きいですわ」
陽太の口に手を当てて塞ぐ。
見回りをしている兵に見つからないようにだ。
「まぁ・・・、読まないと分からなそうですから・・・」
しぶしぶ分厚いファイルを手に取り読み始める。
「かなり大きな場所かもしれませんわよ?」
資料を読んでいるエリシアが、陽太の方へ顔を向ける。
「たしかに・・・。出合った時は人と同じような姿でしたけど」
「竜の姿ならそれなりに広い場所ってことですわ」
「―・・・なるほど」
彼女の言葉に軽く頷く。
「おそらく・・・わたくしたちの力では、開けられない場所にいるのかもしれませんわ」
「頑丈なところに・・・ですか」
陽太は大きな生物が入れそうな場所を考えてみる。
「水・・・海水の中だとしたら、巨大な水槽みたいなやつとか考えられますわね」
「建物構造?それならこのファイルに書いてあったわ」
休憩していた美羽がエリシアにファイルを手渡す。
「見て陽太。地下9階よりもさらに下のフロアがありますわよ」
「そこにレヴィアさんが捕らわれているのでしょうか?」
構造の様子を見た陽太は、そこにいるのかもしれないと考える。
「何か分かりましたかな?」
玲が棚から持ってきた本を抱えてやってきた。
「いえ、まだです」
「ふむ・・・少し休憩してはどうかな」
ティータイムの紅茶を陽太に差し出す。
「もう少しで水竜・・・レヴィアさんの居場所が分かりそうなんですけど」
陽太は紅茶のカップで両手を暖めながら言う。
「水路みたいですね。水槽というより・・・もっと他の場所・・・」
睨むようにじーっと資料を見つめ、水場にありそうな物を連想してみる。
「ここにありそうな物といったら、水門・・・?」
「きっとそうですわっ」
声が響かないようにボリュームを下げ、エリシアは嬉しそうな笑顔で言う。
「その向こうに捕らわれているということですかな?」
「えぇ、おそらく」
問いかける玲の方に顔を向け、水門の向こうに捕らわれているのかもしれないと答える。
「門を開けるためにパスワードが必要なのかもしれませんな」
「下の階にいる人に連絡してみましょう」
陽太は地下にいる生徒に知らせようと、携帯電話で連絡しようとする。
「うぅ〜・・・電波が届かないようです」
悲しそうに呻き、電話を切った。
「生物学の本?これじゃないよね・・・でも、一応見てみようかな」
水竜が捕らわれている場所を開けるために、清泉 北都(いずみ・ほくと)はパスワードのヒントがないか情報を探す。
「小難しいことばかり書いてあるな」
白銀 昶(しろがね・あきら)が傍から覗き込む。
「そうなんだよね・・・。やっぱり関係なさそうかな」
「次のページは?」
「特に何もなさそうだけど、見とこうか?」
ページを捲ってみると、論文の一文のような文字が書かれている。
「生物の進化の果てに何があるのか、はっきりと解る日はいつなのだろうか。―・・・て書いてあるね」
これがヒントかもしれないと思い、北都は謎の言葉をメモ帳に書く。
「もしそうなら、この中にパスワードが隠されているのかな。それも姚天君が考えそうな言葉・・・」
「そいつ生物兵器を作っているんだろ?だったら、それっぽい言葉がその中にあるのかもな」
「―・・・うーん、生き物に関すること・・・かな」
言葉の意味を考えながらメモを見つめる。
「遺伝子操作・・・?文からするとそんな風には見えないね」
「なぁ、その文章の下に絵柄がないか」
絵柄を見つけた昶が指差す。
「人が建物とか、道具を作っている感じだね」
その絵を見た北都は眉を潜め、文の意味につながりがある言葉があるか考えてみる。
「ねぇ・・・この文と絵って同じような言葉が隠されているのかな?」
「ぱっと見た感じだと、ただの教材みたいな雰囲気だけどさ」
「進化・・・とはちょっと違うよね」
もっとそれらしい他の言葉がないか、北都は首を傾げて考え込む。
「それと同じような言葉とかじゃないのか?」
「うーん・・・それがこの文の中にあるのかもしれないね」
「まぁ、2人で考えても分からねぇから。他のやつにも聞いてみようぜ」
「そうだね。ひょっとしたら下の階から他の人が来るかもしれないし。皆で考えてみよう」
メモ帳を閉じて協力してくれそうな生徒が来るのを待った。
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