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第8章 見学at士道科


「士道科、隠密科、陰陽科……どれも興味深いけど、やっぱり直接対決派だから士道科を見学するぜ!」

 パートナーと別れたカティ・レイ(かてぃ・れい)は、士道科の教室で授業を見学していた。
 最近、困ったことがあるようで。

「意味のない喧嘩はもうやめたはずなんだけど、たまーに衝動的に喧嘩の売買したくなるんだ……困ったね。
 ここで稽古でも見れば、そんなささくれ立ったものを何とかする方法が見つかるんじゃないかと」

 カティにとってはこのうえなく深刻な悩みのため、訓練を見つめる瞳も真剣そのもの。

「薙刀を扱ってる人がいる……あたしのは我流なんだ、型を真似してもいいかな?」

 てててっと近附くと、カティは士道科の生徒へと頭を下げる。
 快諾してくれた生徒は、基本の型をゆっくりと実演し始めた。

「桜もいいけど体動かしてる方が好きなんだ……それに、最近がんばってるヨルに置いていかれないようにしないと……」

 ひととおり型を習い、しばしの休憩。
 薙刀を習得したいと思った理由を、カティは生徒へと打ち明けるのであった。


「士道科の授業を見学し、武士道を改めて勉強したいのであります!」

 教室の入り口にて、大声で宣言する大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)
 自身を『現代の侍』と自負するゆえに、桜や料理よりも何よりも、武士道を学ぶために葦原明倫館の門を叩いていた。

「なるほど……」

 教師が黒板に記した内容を、一字一句たがわぬように書き写していく。
 それと同時に、剛太郎は授業内容を心に刻み込んでいた。

「ありがとうございます、勉強になったのであります!」

 毎時間すべての教師へ、ノートを手に質問する。
 そして疑問が解けたあかつきには、敬礼にて謝意を表明したのだった。


(要に護られてばかりじゃダメ……私も、もっと強くならなくちゃ。
 それに要のために転校したいけど……この学校って私にあってるのかな?
 いい機会だし、見学させてもらおう)

 葦原明倫館が自身に合う学校か否かを見極めるために、士道科を訪れた東雲 秋日子(しののめ・あきひこ)
 あえて言うが、転校はパートナーのためであり、百合園女学院に不満があったわけではない。

「私、刀とか弓とかより銃のほうが得意なんだけど……銃で戦ったら武士道の心に反するのかな……?」

 おずおずと秋日子は、士道科生徒代表へと訊ねてみる。
 転校しようかと考え始めた頃からずっと、このことが気にかかっていたのだ。
 生徒代表曰く、『武士道は倫理観や観念ですので、それを守っていれば銃でもいいと思いますよ』とのこと。
 思わぬ答えに、秋日子はにっこり微笑んだ。

(『主君のために忠義を尽くす』という武士道の心にも、興味があります。
 秋日子くんを護るために、もっと強くなりたいですね)

 要・ハーヴェンス(かなめ・はーべんす)は静かに、秋日子と生徒とのやり取りを聞いている。
 自身も強くなるために、武士道の精神を学びたいと考えていた。

「2人はさ、明倫館のことどう思った? 気に入った?」
「武士道の心……とても興味深かったです。
 できれば、また伺いたいですね」
「……秋日子さんのやりたいようにやればいいと思いますよ」
(秋日子さんの考えはお見通しなのです)

 実技や教科を少しずつつまみ食いして、秋日子はパートナーへと感想を訊ねた。
 葦原明倫館を気に入った要と、キルティス・フェリーノ(きるてぃす・ふぇりーの)は秋日子の気持ちを尊重したいと思う。
 のだが実はキルティス、最中は廊下にて花を愛でていた……言えるほどの感想を抱いていなかっただけなのかも知れなかったり。
 とにかくも秋日子は、要とキルティスの言葉で、葦原明倫館への想いを強くしたのであった。