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【十二の星の華】籠の中での狂歌演舞

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【十二の星の華】籠の中での狂歌演舞
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 蒼空、学園内の、ある会議室では、今も終わらぬ論戦が繰り広げられていた。
 学園職員やミルザム・ツァンダ(みるざむ・つぁんだ)に近しい者たちはパッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)を殺害する事を提案、話はすでに纏まりかけていたのだが。
 今日になって、先日のガラク村での戦闘に参加した生徒たちが会議に加わった事で、論議が再燃していた。
「パッフェルも色々酷いことしたけど、殺しちゃうのはダメだと思う。そんなの… 何の解決にもならないよ!」
「しかし! 彼女は驚異そのものだ! 生かしておけば何を起こすか分からない!」
 正面から反撃された秋月 葵(あきづき・あおい)は、発言した職員に瞳尻を釣り上げて鼻を向けた。
「何も起きないように、だから拘束してるんでしょう! 彼女の言葉も聞かないで、ううん、聞こうともしないまま殺すなんて、絶対に間違ってる」
「聞いてどうするのだ?」
「黒子ちゃん…?」
 に黒子と呼ばれしフォン・ユンツト著 『無銘祭祀書』(ゆんつとちょ・むめいさいししょ)を見上げて言葉を続けた。
「村を丸々水晶化するような… あのような大罪を犯したものに情けなど不要であろう!」
「そんな事ない! あれだって何か理由があって、それでやったのかもしれないし」
 ここまで来ると、話を聞こうとする姿勢よりも彼女の肩を持っている様にも見えてしまう。
「どんな理由があれ、やった事に変わりはないし、その事実は消えない! 罪の重さを考えれば死罪は当然!」
「そんな! 更正するチャンスも与えないって言うの?」
「更正などするものか!」
「どうして決めつけるの?」
 ほぼ同時に。
「ちょお待てアンタら、熱くなりすぎや」
「落ち着いて下さい!」
 日下部 社(くさかべ・やしろ)葛葉 翔(くずのは・しょう)が、2人を止めに入っていた。
「捕まえた学生の処分ですが…」
 2人が落ち着くまで、という理を述べては議題を変える事を提案した。
「クイーン・ヴァンガードでパラ実送り等の処分を言い渡すのではなく、それぞれの在籍校に判断してもらうのはどうでしょう」
「ふんっ、協力した生徒たちも同罪だ、一生、牢にぶち込んでおけば報復の心配も−−−」
「黒子っ!」
「止めぃ言うとるやろ」
 言われて2人は、ソッポを向いて頬を膨らせた。へ返しながら、職員たちへと投げかけた。
「その意見には賛成や。あいつらの所属もバラエティにとんどるっからな、揉めるん分かっててする事もないやろ」
「えぇ、恐らくは大抵がパラ実送りになるでしょうから、集まった彼らが何か起こす危険性もありますが−−−」
「ああ、それは無いやろ、あいつらの事やから、わしらに内緒で青龍鱗の見張りでもしとったんやろ、心配ないで」
「それは楽観的すぎる気もするが…」
 大野木 市井(おおのぎ・いちい)が控えめに、それでも皆の視線が集まり来たのを感じると、立ち上がりて述べた。
「彼らが十二星華に荷担する可能性が
ある以上なら、俺は解放するべきではないと思う」
「せやかて、いつまでも拘束しとくんも危険や思うで。ティセラあたりがパッフェルもろとも奪還に来るんやないか?」
「だから、拘束では無く、あくまで彼らを保護をするんだ」
「? どういう事や?」
「ティセラ側が力づくで来ようと、彼らやパッフェルを保護していた学園を攻撃すれば、他の学校とも本格的に対立する事になる。ティセラもそれは避けたいはずだからな」
「今更そんなん気にするんか? 仲間生け捕りにされて怒り狂ってる思うけどなぁ」
「なら尚更だ。少しでも奴らの抑止力になるなら利用するべきだろ?」
「利用ねぇ…」
 いざとなれば人質にとる、という事だろうか。定石といえばそうだが… あのミルザムがそんな決断をするとは… とてもに思えなかった。
「そう言えば、ミルザムはんはどうしたんや? 治療中か?」
「あぁ、うちのマリオンと一緒に治療を受けてるはずだが」
「あ、いえ、それが……」
 部屋の入り口付近で小さくなっていた生徒が、顎を引いたまま言った。
「地下の演舞場に行かれたきり、医務室には… 戻られていません」
「は? 医療班はどうした」
「もちろん付き添って治療をしています。しかしミルザム様はパッフェルの解毒にあたっているようで…」
「パッフェルの、だと?」
「全く、何をしとんねん、あん人は……」
 今もミルザムは定期的にヒールやキュアポイゾンの治療を受けなければ倒れてしまう、いや、確実に死に達してしまうだろう。そんな中で、そんな状態で青龍鱗の力を自分にではなく、パッフェルに向けているという。
 最終決定権を持つ、女王候補である、そして何よりも多くの隊員に慕われるミルザム・ツァンダ(みるざむ・つぁんだ)は、地下の演舞場で今も信念を貫こうとしているのだった。