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リアクション
「やっとあたしの出番だね!」
菫はそう言うと、ホイップとエルの周りを氷の壁を作って2人だけの空間を作り上げた。
ホワイトはその様子を心配そうに見つめている。
ホイップはそばに来たエルをぼんやりと見つめる。
もう洗脳は解けかかっているのだろう。
やはり、前に言われた事を気にしているのかエルはここにきて戸惑いを見せる。
「人との種族の隔たりか……。盗み聞きをするつもりはなかったんだけど、聞こえちゃってさ……」
そこへケイがエルに話しかける。
「恋人とパートナーの関係って、少し似てるよな。お互いに思いやり、支え合う、強い絆で結ばれた関係だ。……俺はカナタと契約を結んだことを後悔なんてしていない。愛を告げたら幸せになれないなんてことは、決してないはずだ」
強い眼差しでそう告げる。
「それに、『残される者の孤独』や『逝く者の心残り』なんてモノは、傲慢な決め付けだ。確かに失意の内に孤独に苛まれることだってあるだろう。でも、幸せな日々を糧に、人はより強く、気高く生きていくことだってできる。大切な人が側にいることで、幸せの中で逝くことだってできるはずだ」
エルはケイの言葉に力強く頷く。
エルは決意した顔でホイップを抱き寄せようとしたが、ホイップが突っぱねた。
心のどこかでは怖いと感じているのかもしれない。
「わらわは永遠を生きる、不老不死の魔女。まだ1000年と少ししか生きてはおらぬが、これから先、おぬしと同じように、多くの辛い別れを経験してゆくことであろう。……もちろん、大切なパートナーであるケイともな」
今度はホイップにカナタが語りかける。
「だからといって、こうして今、ケイたちと共に過していく日々を不幸だと思ったことは一度たりともない。『幸せを願うからこそ、告げない愛』、確かにそれも一つの愛の形なのであろう。だが、果たしてそれで、おぬしたちは「後悔」しないのか? 己の心に素直に従わぬことこそ、『不幸』なのではないか? ましてや、おぬしにとって、5000年もの時を経てやっと経験する『恋』なのかもしれぬ。今の『想い』を大事にして欲しいのだ」
ホイップの瞳に少しだけ生気が戻った。
その変化を見たエルがもう一度ホイップを抱き寄せると今度は、拒否しなかった。
そしてホイップの耳元でエルが囁いた。
「愛してる」
エルが耳元から顔を放すと、ホイップは顔を真っ赤にしていた。
耳まで赤い。
エルがキスをしようと顔を近付けると氷の壁をぶち破り、ハリセンがエルの頭を直撃した。
「本当に接吻をするつもりなら完全に洗脳が解けてからにするでござるよ。互いに意思を確認せずにするのは違うと思うでござる。ニンニン」
薫のハリセンは一体何で出来ているのだろうか。
どう見ても紙なのだが。
「エル……さん……」
ホイップは潤んだ瞳でエルを見上げる。
エルはもう一度キスにチャレンジしようとした、が――
「ホイップーーーー!」
ホイップに抱きついたルカルカ・ルー(るかるか・るー)に邪魔されてしまった。
周りにはもう攻撃してくるような人がいないのを見た菅原 道真(すがわらの・みちざね)と相馬 小次郎(そうま・こじろう)はホイップ達から少し離れた。
道真は銃を小次郎は剣をそれぞれ降ろした。
そして、警戒をしていた牙竜も警戒を解いたようだ。
どうやらシャガも向こうで捕獲完了したらしい。
ルカルカは泣きながらホイップが戻ったことを喜んでいる。
ホイップが元に戻ったことに素早く気が付く、どれだけ真剣にホイップを見ていたのかが分かる。
「君はただの女の子。ルカが好きなただのホイップ。それだけでいい。それが答え。それが全て」
そして、ルカルカは前に言っていたことの自分の答えを囁いた。
「おかえりなさい」
ルカルカはホイップに最高の笑顔を見せた。
その様子をダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)、カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)、夏侯 淵(かこう・えん)が優しく見守っている。
「もう少しで生のキスシーンが撮れたのに」
菫が残念そうに呟くと、シオンと目が合った。
お互いにがっしりと手を握った。
何か通じるものが合ったのかもしれない。
「せっかく元に戻す良い案があったのだが……行動する前に戻ってしまったね」
メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)が呟く。
「良いじゃん、ホイップちゃんが元に戻ってくれればそれで嬉しいよ!」
クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)はホイップに抱きつきながら喜びを表す機会を窺いながら言った。
「そうですね。彼女が笑顔でいますし、ルカルカさんも笑顔です」
「そうだな」
エオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)の言葉にエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)も嬉しそうに返した。
無事にホイップは皆の手で戻ってきたのだ。
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