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【十二の星の華】双拳の誓い(第6回/全6回) 帰結

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【十二の星の華】双拳の誓い(第6回/全6回) 帰結

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「なんだ、まだ移設していないのか!」
 内湾に駆け込んできたヴァイスハイト・シュトラントは、アルディミアク・ミトゥナの入ったシリンダーがまだ足場近くに設置されたままであることに気づいて怒鳴った。あまりに遅すぎる。
「それが、手間取ってるんでさあ。そうだ、このガキ共をなんとかしくれませんかねえ」
 七尾蒼也とノア・セイブレムをあからさまに指さして、国頭武尊がわざとらしく媚びを売るように言った。
「邪魔ならば、容赦す……」
 すぐ近くにまでココ・カンパーニュが来ているのだ、邪魔物は排除してしまえと言おうとしたヴァイスハイト・シュトラントであったが、突然内湾に面した岩壁が吹き飛ぶのを見て敵襲に備えた。
「御主人、俺まで殺す気か!」
「進むぞ」
 大声で怒鳴る雪国ベアを追い越すようにして、樹月刀真が飛び込んでくる。
「ヴァイスハイトか!!」
 少し離れた所にヴァイスハイト・シュトラントの姿を見つけて、樹月刀真が叫んだ。
 後を追うようにして現れた漆髪月夜の身体から漆黒の刃を持つ光条兵器を取り出すと、樹月刀真はヴァイスハイト・シュトラントの方へとむかっていった。
「刀真、急ぐと危ない……!?」
 今回は事故はなかったと安堵する漆髪月夜の胸に、パートナーたちをだきかかえながら片手で必死に空飛ぶ箒をつかんだ九弓・フゥ・リュィソーが突っ込んできた。
「くぎゅう!?」
 ささやかな胸でせめてものクッションになった漆髪月夜が、勢いを止めきれずに九弓・フゥ・リュィソーたちをかかえて後ろに吹っ飛ばされる。
「ちょっと!? ふああ!」
 後ろにいたソア・ウェンボリスがあっけなく巻き込まれた。
「どすこーい!」
 吹っ飛んできた五人の女の子たちを、雪国ベアがパワードスーツのパワー全開で受けとめる。だが、完全には受けとめきれず、バランスを崩した雪国ベアは後ろにもんどり打って倒れた。
「何をやっているのよ」
 呆れながら、『空中庭園』ソラが雪国ベアの上に折り重なるようにして倒れているソア・ウェンボリスたちを助け起こした。
 たいした怪我はないようだが、九弓・フゥ・リュィソーたちは気を失っていた。
「初めまして。そして、さようなら」
 ヴァイスハイト・シュトラントにむかっていった樹月刀真が、そう言って左手に持った光条兵器の刀を投げつけた。それを避けた一瞬の隙を突こうとしたのだが、素早く光条網を取り出したヴァイスハイト・シュトラントが、剣のように一つにまとめて勢いよく振った光条兵器で、樹月刀真の光条兵器を弾き飛ばした。返す刀で、やや力を緩めた光条網を今度は鞭のようにして樹月刀真に絡ませようとしてくる。
 スウェーでなんとかそれを躱した樹月刀真は、格闘戦に持ち込もうと一気にヴァイスハイト・シュトラントに迫った。わずかに下がったヴァイスハイト・シュトラントが、躱す動きのままに肩にかけていたコートを大きく振る。その裾が、近づきすぎていた樹月刀真の目を打った。
「うっ」
 一瞬視界を奪われた樹月刀真を、ヴァイスハイト・シュトラントが蹴り倒す。
 樹月刀真が転がりながら体勢を立てなおそうとするところへ、頭上から光条弾が降り注いだ。
「新手か!?」
 見あげる樹月刀真の視線の先に、ヴァッサーフォーゲルの甲板でルミナスライフルを構えるゾブラク・ザーディアの姿が映った。
「何をやってるんだい、まったく。見ちゃいられないねえ」
 ゾブラク・ザーディアが、持っていたルミナスライフルを投げ落とす。
「すみません、頭領」
 素早くそれを受けとめたヴァイスハイト・シュトラントが、クルリと半回転しながらライフルを構え、間髪入れずに樹月刀真を狙撃した。殺気を看破した樹月刀真が、金剛力で大きくジャンプして攻撃を躱す。だが、大きなモーションは隙が大きかった。
「もらったな」
 すっと最小限の動きで銃口を移動させたヴァイスハイト・シュトラントがつぶやく。そのとき、突然彼女の足下から炎が噴き上げた。
 横っ飛びに身体を一回転させて、ヴァイスハイト・シュトラントが炎を回避する。
「今なのだ、ララ!」
 ずっと機会をうかがっていたリリ・スノーウォーカーが、ララ・サーズデイにむかって叫んだ。
 ロゼ・『薔薇の封印書』断章の攻撃でバランスを崩したヴァイスハイト・シュトラントにむかって、ララ・サーズデイがバーストダッシュで突っ込もうとする。その眼前に飛来する物があった。瞬間的に危機を感じたララ・サーズデイが、わざと倒れて軌道を変える。彼女が進もうとしていたところに、巨大な五枚羽根の手裏剣型光条兵器が突き刺さっていた。
「たびたびすみません」
 ヴァイスハイト・シュトラントが、パチンと指を鳴らす。床に突き刺さっていた光条兵器がかき消え、次の瞬間、ゾブラク・ザーディアの手に戻った。
「お嬢ちゃんの積み込みを急ぎな!」
 ゾブラク・ザーディアが命令すると、ヴァッサーフォーゲルから海賊たちがディッシュに乗って次々と下りてきた。内湾の水の中からも巨大ガザミたちが次々と這い出してくる。
 たちまち、その場にいた者たちで混戦となった。
「何をしている、早くお嬢ちゃんをヴァッサーフォーゲルに移さないか!」
 コンソールを操作している猫井又吉に駆け寄ってヴァイスハイト・シュトラントが叫んだ。
「やってますったら」
「どけ、私がやる」
 ヴァイスハイト・シュトラントが、猫井又吉を押しのけて緊急用のボタンを押す。本来は、エネルギー伝導に異常があったときに誘爆を防ぐために強制的に各部の接続を遮断するボタンだ。破壊による遮断なので、元に戻すためには修理が必要となるが、今は贅沢はいってもいられない。
「そうはさせません。いただきます」(V)
 今こそアルディミアク・ミトゥナを助けるときと、ルイ・フリード(るい・ふりーど)がシリンダーにむかって走った。
「アルディミアクは俺様が助けてやるぜ」
 雪国ベアを先頭に、ソア・ウェンボリスたちも駆けつけてくる。
「吊り上げろ!」
 ヴァイスハイト・シュトラントが叫んだ。
「了解」
 言葉少なに、仮面で顔をすっぽりと隠したトライブ・ロックスターが、クレーンを操作し始めた。
「副長は、先に船に戻ってください。クレーンが動いてしまえばもう大丈夫ですから、ここはお任せください」
 浅葱翡翠が、忠実な部下を装って言った。
「よし、急げよ」
「頑張りますねっ」(V)
 その言葉を信じて、ヴァイスハイト・シュトラントがヴァッサーフォーゲルへとむかう。
「シリンダーの解除はできないんですの?」
「それが……」
 白乃自由帳に言われて、猫井又吉がマニュアルに書き込まれていたパスワードらしき物を入力した。
 パスワードが通る。
 だが、すでに分離されていたシリンダーは、コンソールからの命令を受けつけなかった。
「ちくしょー。いいとこまでごまかしてたのによお、最後にあの女め!」
 猫井又吉が地団駄を踏んで悔しがった。