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【十二の星の華】双拳の誓い(第6回/全6回) 帰結

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【十二の星の華】双拳の誓い(第6回/全6回) 帰結

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「うろたえるな、たかが小勢だ。落ち着いて迎え撃て。それよりも、本命がじきに来るぞ。そちらの方を警戒しろ!」
 新しい自分の船に乗ったシニストラ・ラウルスが、部下たちにむかって叫んだ。無線で命令が伝えられるとともに、信号手が周囲の船に発光信号で命令を伝える。こういったローテクを併用した方が、姑息な情報攪乱に惑わされることもない。
「ここがパラミタ内海だということを、奴らに思い知らせてやれ!」
 海賊島防衛の船を残して、数隻の海賊船が護衛船を率いて戦闘域にむかう。シニストラ・ラウルスとしては戦力的に手を抜く気はさらさらなかった。
「行くよ」
 ディッシュに乗った数人の部下を従えて、デクステラ・サリクスがその後を追っていった。
 
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「ガイアスさん、あちらで戦闘が始まっています」
 まだ遠い島影の手前で起きている戦闘を見つけて、空飛ぶ箒に乗ったジーナ・ユキノシタ(じーな・ゆきのした)が言った。何やら、炎上しているらしい船も見える。
「うむ。急ぎ駆けつけようぞ。我らは我らとしてな」
 空飛ぶ箒に乗ったガイアスが答えた。いつかは彼も変態して自分の翼で空を自由に飛べるときも来るのだろうが、それをジーナ・ユキノシタに見せることは叶わないだろう。だからこそ、今の姿の自分こそが、彼女とともにある存在なのだ。
 クイーン・ヴァンガード本部からは、余裕のある者に海賊討伐のミッションが提示されていたが、彼がここに来たのはそれに従ったからというわけではない。自らの意志で来たかったからだ。だからこそ、隣にパートナーがいる。
 
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「はははははは、水上の軽業師クロセル・ラインツァート、華麗に疾走。この鈴の音を恐れなければ、無謀にも挑んでいらっしゃい!」
 ゴチメイたちの先鋒に立って、クロセル・ラインツァートが白い波を盛大に蹴たてて水面をサンタのトナカイの橇で疾走してきた。
 真っ向からむかってくる中型船のそばをすれ違い様に、クロセル・ラインツァートはドラゴンアーツで船腹に次々に穴を穿っていった。片舷から浸水した海賊船が、傾いて転覆する。
「へえ、やるじゃない。だったら私も。爆ぜる炎よ!」
 同様にサンタのトナカイの牽く橇で接近してきていたアリア・セレスティが、ブライトグラディウスを一閃させた爆炎波で、すれ違った海賊船の船腹を焼き切った。
「変な奴らを近づけさせるな!」
 無事な海賊船から、次々に火球が放たれる。
「やっばいですねえ。ピンチは見せ場と言いますが……」(V)
 ぴょんとトナカイを跳ねさせてありえない回避運動をとりながらクロセル・ラインツァートが言った。逃げ回るうちに、いつの間にかアリア・セレスティとならぶ。
「あなた目立ち過ぎよ。こっちまで的にされてるじゃない!」
「はははは、ヒーローとしては本望です」
「お馬鹿!」
 集中砲火を受けながら、二人はあたふたと逃げ回っていった。その少し離れたところを、高速弾が海面すれすれを超音速で飛び去っていく。一瞬の後に、ソニックブームで切り裂かれた海面が水の壁を左右に噴き上げた。その隙に、クロセル・ラインツァートたちが危険区域から離脱する。
「手加減はなしだからね。もう一発いっちゃえー!」(V)
 先行するカレン・クレスティアが叫んだ。
「了解なのである」
 水面近くに浮遊したジュレール・リーヴェンディが、レールガンの次弾を装填した。射線を、カレン・クレスティアと海賊船の間を遮るラインに変更する。
「発射」
 かかえるようにして持ったランチャー型のレールガンのトリガーをジュレール・リーヴェンディが引いた。高電圧でプラズマ化した誘導体に押し出された弾体が、超音速で打ち出される。
 海賊たちがあわてて隊列を乱すところへ、カレン・クレスティアが一気に突っ込んでいった。至近距離から、海賊船の帆に火球を放つと、急いで離脱する。絵に描いたような一撃離脱戦法だ。
「怯むな、装甲船を前に出せ」
 海賊たちが、不格好な船とも箱とも呼べない物を前面に出してきた。
 本当に海賊船は千差万別だ。大型のガレオン船を中心に、帆船が中核をなしてはいるが、小型船にはエンジンを積んだモーターボートのような物も多い。固定武装をもつ物もあれば、船員の手持ちの武器や魔法で攻撃してくる物もあった。旧態依然とした大砲などよりは、むしろ火球などの攻撃の方が脅威でもある。また、飛空艇のエンジンを搭載した物は飛行能力もあるし、たいして飛べないものでも重量の軽減を利用して重装甲を施した護衛装甲船に改造された物もある。
 続くジュレール・リーヴェンディの攻撃は、その装甲によって受けとめられてしまった。もっとも、レールガンの一撃で装甲は見るも無惨にひしゃげていたので、同じ場所に正確に複数弾撃ち込めば破壊は可能だろうが、ハンドガン程度では跳ね返してしまうだろう。
「ああいうのは他の人に任せるんだもん」
 ブライトマシンガンの弾を広範囲にばらまきながら、小鳥遊美羽が叫んだ。彼女たちの目的は海賊の目を引くことだ。
「硬いのやあだあ」
 こういうときハンドガンのような小火器だとあまり役にたたないのが悔しいと、リン・ダージが駄々をこねた。
「まあまあ。島に着いてからうんと活躍しましょうねえ。ここは、あたしの出番ですからあ」
 チャイ・セイロンがアシッドミストで装甲船をつつみ込んだ。あっと言う間に腐食されて、装甲板が脆くなる。
「さっすがあ、やるじゃん」
 思わず、新田実が拍手した。
「さあ、リーダー、今のうちですわあ」
 チャイ・セイロンは、後方で待機しているココ・カンパーニュたちを呼んだ。
 
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「ようし、しかけ時だぜ。援護、確実にしろよ」
 戦闘が始まったのを確認して、テクノ・マギナ(てくの・まぎな)が、パートナーたちに命令を発した。彼の目的は、海賊たちが島にため込んでいるだろう財宝だ。海賊島というのであれば、お約束としてそれぐらいはあるだろう。それを手に入れるために邪魔な海賊たちを排除することに手心を加えるつもりはない。
 海の色に合わせた青い波羅蜜多ツナギを着て隠れ身で水面すれすれを魔法の箒で飛ぶテクノ・マギナを補佐するように、パートナーたちが攻撃を開始した。
「前方に大型船を発見したヨ。念のために、海中にセンサーを投下するネ」
 索敵を担当したイー ツー(いー・つー)が、禁猟区をかけたアミュレットを等間隔に海面に投下しながら進んでいった。アミュレットは四つほどしか用意できなかったが、伏兵を探すにはなんとかなるだろう。今のところ海賊たちが潜水艦のような物を所持しているという情報はないが、念のためである。
「主よ、ここは拙者が。主は大きく迂回して海賊島へむかうでござる」
 バーストダッシュで高速移動しながら、エー テン(えー・てん)がトミーガンを雨霰と海賊船に撃ち込みながら言った。ヒットアンドアウエイの基本的な戦法だ。
「後ろに回ったぞ!」
 素早い動きのエーテンに、海賊たちがあわてて大砲を後方へむける。そこへ、上空からミサイルの雨が降り注いだ。
「敵さんも本気だな。なら……」
 連携した攻撃を先読みしていたシニストラ・ラウルスが、海賊船に取りつけておいた飛空艇のエンジンを全開にしてミサイル攻撃を回避させた。大きな音をたてて水飛沫を飛び散らしながら、海賊船が低空を高速で進む。
「次弾装填。誤差修正するであります」
 海岸で待機していたエムエルアールエス・エムツーセブンオー(えむえるあーるえす・えむつーせぶんおー)が、イーツーからの情報を元に照準を修正した。
 完璧な追尾システムがついているとは言い難いために、ミサイルの命中精度はそれなりだ。敵もそれを熟知していて、高空に上昇して孤立した的になるような操船はしていない。海面すれすれを高速移動して、波を上手に使って照準を狂わしている。いや、それにしても、風もたいしてないのに、この高波は不自然だった。
「何か、海中から接近してくるネ」
 イーツーがエーテンに注意をうながした。反射的に、エーテンが高度をとる。
「さあ、奴らを海の藻屑にしておやり」
 デクステラ・サリクスに命じられて、海上に散らばったビーストマスターたちが、水中に何かを投げ入れた。直後に、海面が大きく盛りあがる。
「津波!?」
 押し寄せてきた高波に激しくゆられ、月島悠が氷塊のボートにしがみついた。
「違います、あれは……」
 迷わずガトリングガン型の光条兵器を取り出して攻撃を開始しながら麻上翼が言った。
「なんなんだもん、あれ!?」
 氷術で必死にボートの補修をしながら、秋月葵が叫んだ。
 海中から現れたのは、巨大なクラゲだった。以前夏合宿に参加した者の中には、見覚えのある者もいたかもしれない。明らかにこの巨大クラゲはその同族と思われたが、敵は一匹ではなかった。次々に浮かびあがってきて、白く濁ったような半透明のドームを海上にならべた。
「引きずり込め!」
 デクステラ・サリクスが命じた。
 巨大クラゲが、一斉に無数の触手をもたげて襲いかかってきた。
「こんな物まで用意していたとはな。さあ、戦闘開始だ。これでも食らえ!」(V)
 本郷涼介が、迫ってくる触手を氷術で凍らせた。凍りついて柔軟性を失った触手が、ただの氷柱として倒れかかってくる。
「おにいちゃん、危ないじゃない!」
 クレア・ワイズマンが、迫ってくる凍った触手をソニックブレードで縦一文字に切断する。分割されて左右に分かれた触手が、氷のボートの左右に沈んで再び海面を激しく波立たせた。