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一角獣からの依頼

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一角獣からの依頼

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 言葉をかけたい、でも、なにを言えば届くのか。
 そばに居たい、でも、痛くて見てもいられない。
 アリウム・ウィスタリア(ありうむ・うぃすたりあ)は唇を噛んで桐生 円(きりゅう・まどか)のそばに腰をおろした。
「円様…」
 は、うずくまったままだった。自らをかばって『石化』したパッフェルを抱きしめていた。
 彼女に護られたことも、彼女を護れなかったことも全て己の無力さが招いたこと。自責の念と深酷な悲しみが彼女の視力を奪っていた、涙に潤んだパッフェルの顔も、には殆どに見えてはいなかった。
「…ダメだ、やはり居ない」
 鬼崎 朔(きざき・さく)は歩み寄りながらに言った。彼女は煙幕の晴れた戦場を見回り、戻ってきたところだった。
「連れ去られたのは…ティンダロスの…3人だ」
「3人も…」
 ビート・ラクスド(びーと・らくすど)は息を飲んで言ったが、視線はすぐにそれを引き起こした犯人の1人に向けられた。
 乱戦の中、眠らせ捕らえたスキンヘッドの男、先ほど目を覚ました彼に藍園 彩(あいぞの・さい)が尋問していた。
「連れ去った3人をどこへやった!」
「……………………」
「どこへやった!!」
「あ゛ぁ゛〜! うるせぇなあ!! 聞こえてるってんだよ!!」
「だったら答えろ!! 3人をどこへやった!!」
「……………………」
「答えろ!!」
「けっ、誰が言うか。黙秘だモクヒ! 『もくひ』『木日』で『木曜日』だ、くくっウケる」
「くだらないこと言わない!!」
 怒声をあげてビートは男に『雷術』をぶつけた。男は感電して気絶したが、それでは話を聞けなくなる、気付いたビートは再びに男に『雷術』を放ち、今度はショックで叩き起こした。鬼だった。
「彼、口を割らないかもしれないねぇ」
 清泉 北都(いずみ・ほくと)がしみじみ言った。パラ実生の仲間意識は極端に高いか、それとも極端に薄情かに分かれる事が多い。そう考えると彼は、前者のように思えた。
「一度、逃がして泳がせてみようか」
「いいえ、それはどうでしょう」
 水橋 エリス(みずばし・えりす)が言った。尋問を受けているスキンヘッドの男は、どこまでもふざけているように見えた。「解放したとしても、彼がアジトに戻るとは限りません。私たちの攪乱を狙って、あえて検討違いの場所に向かうかも。そうなれば救出は難しくなります」
 『囮役』の中にあっても彼女はパートナーたちの護衛の甲斐あって、どうにか難を逃れた。連れ去られた生徒もいる、治療を受けている生徒もいる。これ以上戦力を分散するような事はするべきではないだろう。
「う〜ん、やっぱり追跡組からの連絡を待つしかないかぁ」
 北都は口元に手をやって考えた。そんな姿に内心『ハァハァ』しているのはパートナーのクナイ・アヤシ(くない・あやし)だった。
 黒い長髪ウィッグにメイド服、発動中の『超感覚』が犬耳と尻尾を生やしてる。『禁猟区』を施した髪飾りを付けているのも『グッ』。今の北都は何とも、何とも愛らしい。
「くっ……静まれ! 静まるんだ、俺の右手!」
 彼は必死に北都への『愛撫衝動』と戦い、そして、もがいていた。
「待ってるだけなんて冗談じゃないわ」
 騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は声を荒げて言った。「追跡してるのは氷室ちゃんだったよね?」
 現在位置を聞いて、すぐに出発しようとした。携帯電話を取り出したとき、服の中で振動を感じた。
 詩穂の携帯は手の中にある……振動していたのはパッフェルの携帯だった。『囮役』に加わると決めた際に彼女が詩穂に預けたものだった。
 画面には「トランス・ワルツ(とらんす・わるつ)」と表示されていた。
 グッと握りしめてから、詩穂は携帯を耳に当てた。