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魂の器・序章~剣の花嫁IN THE剣の花嫁~

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魂の器・序章~剣の花嫁IN THE剣の花嫁~
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リアクション

 
 
「ちょっと! いい加減に降ろしてってば、本気で恥ずかしいから降ろしてよ!」
 デパートに入って、ファーシーはフリードリヒの頭をぽかぽかと叩いていた。顔が熱を持っているのが分かる。
「オーバーヒートしちゃうじゃない!」
「いてっ! いてーって! そんなに嫌かぁ?」
「イ、ヤ! 子供じゃないんだから!」
「でも、ティエル達はまだ来ねーぞ? ぶっちぎってきたからなー」
「……そ、そんなあ……」
 ファーシーはきょろきょろと1階フロアを見回した。どこか座るとこないかな、どこか……

 頭1つ分出た彼女に驚いたのは、1階に降りてきていた山田達である。
「何で戻ってきてるんだな……!」
「さあ……何でだろうな」
「俺にはもうあいつの動きが読めないんだな、しかも、何か元気になってるんだな……!」
「それより、隠れた方が良いんじゃないか? ファーシーと顔を合わせたいなら別だが」
 山田達は急いで柱の陰に隠れる。自分達の行動も、尾けてきている4人に奇異に思われていることを知らないまま。
 いや、4人ではない……7人だ。
「あれ? あの2人、なんだろう。黒い服着てるし……でも、ちょっとあからさま過ぎるよね」
「いえ、僅かですが邪念を感じます。怪しいですね」
「女の子の方のコートが膨れてるのも気になるわね。なんか隠してんじゃないの?」
 白銀 司(しろがね・つかさ)御凪 真人(みなぎ・まこと)セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)もまた、山田達に注目していた。

 1階には、和菓子や洋菓子を扱う店や、ちょっとした休憩所、食事処などが設けられている。ちなみにB1は、惣菜やその他食料品売り場である。俗に言うデパ地下だ。
 というわけで、ファーシーは結構あっさりと座る所を見つけた。皆が見つけやすいように、入口のガラス戸からお互いに確認出来る位置である。
「ふう……」
 木製の、ちょっと洒落たベンチに落ち着き、一息つく。
「んで、これからどーすんだよ」
「えっとね、ユリさんがおかしくなっちゃって、どうなったか分からないままだから、それを確認したいな。デパートに来るって言ってたんだけど……」
「ユリ?」
 その時、デパートに4人の少女達が入ってきた。その中の2人を見て、ファーシーはあっ、と小さく叫ぶ。向こうもこちらに気付き、先頭を歩いていたスカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)が笑顔で走ってきた。
「……ファーシー様!」
 ベンチの前まで来たスカサハに、ファーシーは少し戸惑って聞いた。買い物に来たのか、 それとも、事件の解決に来たのだろうか。
「スカサハさん、今日はどうしたの?」
「遊びに来たでありますよ! ファーシー様も一緒に行きましょうなのです!」
「あ、そうなんだ、でも……」
 言い淀むファーシー。スカサハは、この頃鬼崎 朔(きざき・さく)ブラッドクロス・カリン(ぶらっどくろす・かりん)が余所余所しくしているのが気になっていた。カリンは普通に朔と接していたのだが、朔の方の態度が不自然で、お互いに目を合わせる回数が減っていったのだ。
 それで、今日は2人を仲直りさせる為にデパートにやってきたわけである。何処か浮かない顔をしている朔達の横を、月読 ミチル(つきよみ・みちる)が歩いてくる。
 そしてチェリーは、カリンに向けてバズーカを構えた。

「……すごい殺気よ! 誰かやる気だわ!」
「ええっ! 早く止めないと!」
「そうね。って……違うわ! この殺気は……!」
 バズーカ女からじゃない。セルファは急いで殺気の元を探した。そこには――

「撃つ気ですよ! 彼女を助けないと……!」
「で、でもこの距離じゃ間に合いませんわ!」
「それでも、行かないと……見過ごすわけにはいけません!」
「わ、私も……!」
「クレアは待機していてください!」
 和輝はそう言うと、チェリーに気付かれないように背後から近付こうとする。しかし。
「……!」
「和輝!」
 稔が叫ぶ。突然飛んできたダガーに、和輝は素早く反応した。稔もクレアの手を取り、刃を避ける。
 そしてその直後には、和輝の眼前に、先程見た女の子が迫っていた。小柄な身体、その手にあるのは、ブロードソード。
「この子……!」
 ライトブレードでそれを受けると、刹那は背後に飛び退り、距離を取ろうとする。相手の死角を狙って攻撃を……
「……あっ!」
 刹那は不意の雷撃を受けて倒れる。真人が放った雷術だ。一極集中させ、他に被害が出ないようにしている。
 倒れた刹那を、和輝は身動き出来ないように身についた武術で拘束した。
「うぅ……」
「大丈夫ですか!」
 そこに真人達が駆けつけてくる。
「ありがとうございます! 助かりました」
「いえ……それより、この子は……?」
「不覚をとったのじゃ……」
 その時だった。
 ぴんぽんぱんぽーん、とデパートが放送の合図を出した。
『銘店フロアの黒いコートのロリコンさん、“剣の花嫁のパートナーが迷子”なので至急事務所までおこしください〜』
「ロリコン? 迷子? なんだろう?」
 司が刹那を見下ろす。
「この子、地球人よね……」
「剣の花嫁が迷子ということは、被害者の子が保護されたということでしょうか?」
 セルファと真人が言う。稔も腕を組んで考える。
「だとは思いますが、黒いコートというのが気になりますね……」
 ――この放送は、アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)達が警備員に頼んだものだったわけだが……
 それは同時に、光線が発射されたことも示していた。