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エリザベート的(仮想)宇宙の旅

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エリザベート的(仮想)宇宙の旅

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第18章


「見つけたよ。『OvAz』4号機、名称『BSK』の詳細だぁ」
 クドは、見つけ出した「BSK」の詳細情報を読み上げ始めた。
 いつもののんびりした口調を装おうとするが、声が震えた。
「『BSK』。仮想宇宙に設定された4機目の『OvAz』。
 搭乗者は1体の機晶姫。ただし、コックピットに乗るのではなく、機体の中に部品として組み込まれている。そのため、BSKそのものが1体の機晶姫と考える事もできる。
 搭乗員が人ではない為、人間の耐久限界を無視した機動が可能。
 また、ペイロード内に念動推力が充填された〈機晶コンデンサ〉を詰め込んであるので、超高速度での機動戦闘を長時間続ける事が可能。
 使用スキルは以下の通り。
  遠当て
  シャープシューター
  神の目
  火術
  光術
  氷術
  雷術
  サイコキネシス
 行動指針は、探査船の絶対守護。それに伴う奪取意図者の排除、奪取された場合は奪回と奪取者の殲滅……
 ずいぶんとまぁピーキーだこと。
 何だかビョーキみたいな仕様だねぇ」
 話を聞いて、エースが「まずいな」と洩らした。
「あんな無茶な機動力が相手じゃ、かなり辛いぞ。軌道計算なんて意味がない」
「それだけじゃありません。『神の目』は『隠れ身』を看破します。ステルスの3号機も容易く見つけられてしまうでしょう。戦力となる搭乗者はほとんどが1号機2号機に乗っています、今の3号機では勝ち目がない!」
 エオリアも声を震わせた。
 どがん! 
 ルカルカが操作盤をぶん殴る。
「ずるッ! こんなの聞いてないわよ!」
「いいや、ちゃんと事前に我々は聞かされていたさ。
 分かりにくくはあったがな」
 野武はそう言いながら、昨日の要望申し入れのことを思い出した。
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    仮想宇宙内の「OvAz」は増やす。
    搭乗可能な機体を増やし、操縦室も新たに準備する。
    確認するが、
      仮想宇宙内の「OvAz」は増やす。
      搭乗可能な機体を増やし、操縦室も新たに準備する。
    上記の回答でよろしいか。
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「食えん男だ、ゼレン・タビアノス……」
 「確認するが」「仮想宇宙内の『OvAz』は増やす」。
「あの念押しは、『お前達の乗れる機体を増やすが、敵として登場する機体も出るかもし知れんぞ、分かってるのか』という意味だったか」
「太陽を求めて『夜』を作らせ、フェライトを求めてステルス効果を増強させ、『OvAz』増やせと駄々をこねて立体戦術を可能とさせ……真意を隠して交渉に及んだこちらがおおっぴらに文句を言える筋合いでもない」
 シラノは頭を横に振った。
「宇宙での力押しのみならず、情報戦に外交戦、引き抜き工作……この仮想宇宙の宇宙飛行とは、ままならないものだな」