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しっぽ取り宝探しゲーム

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2.

「ハンターから逃げる、とっておきの策があるのですにゃぁ」
 と、猫耳としっぽを装着した百科事典諷嘉(ひゃっかじてん・ふうか)は言った。
「お、マジで? じゃなかった、本当うっきー?」
 と、サルの耳としっぽを着けた滝川洋介(たきがわ・ようすけ)は言う。諷嘉は頷くと、洋介の後ろへ回った。
「まずは、諷嘉をおんぶしてくださいにゃー」
「おんぶ?」
 ちょっと疑問に思いつつも、洋介は腰をかがめて諷嘉を背中に乗せた。
「よし、これで行くんだな? うっきー!」
 と、やる気十分に走り出す洋介。
「二人で優勝目指して頑張ろうっきー!」
 諷嘉は大変な事全てを洋介に任せるつもりでいたのだが、あえて口にはしなかった。
「はいですぅ、頑張りましょうにゃあ」
 そうして森の中へ入って行く二人。
 洋介はまだ気付いていなかった。いくら諷嘉が小さくとも、人をおんぶして走るのにはいつか限界が来るということに……。

 その集団の先頭を走っていたのは芦原郁乃(あはら・いくの)荀灌(じゅん・かん)だ。
「すごくいい感じマル」
 と、後方をちらっと見てから郁乃が言う。彼女の頭にはアルマジロの耳がぴょこんと着いていた。しっぽもアルマジロのしっぽだ。
「はいにゃん、この調子なら勝てますにゃ」
 と、猫耳しっぽの荀灌も返す。
 すると、近くの木々がざわついた。何者かが隠れている……!?
「早速ハンターのお出ましマル」
 郁乃は足を止めると、耳をすませた。荀灌もその隣で同じようにじっとする。
「近くにいるマル!」
 はっとした郁乃が荀灌の腕を取って走り出す。相手の姿が見えない以上、どこかで身を隠して待つべきだろう。
 そう思考した郁乃は、ふいに木のうろを発見した。そちらに方向転換し、荀灌を先に中へ隠し、後から自分も中に身をひそめる。
「ち、近くにいるにゃん?」
「静かにするマル。見つかったら、そこで終わりマル」
「……はいにゃ」
 しばらく様子を見ていた郁乃だったが、荀灌が寝息を立て始めたのに気付いてはっとした。
「荀灌?」
 どうやら、疲れてしまったようだ。スタート直後から飛ばしすぎたらしい。
 気を抜いた瞬間に、郁乃も眠くなってきた。小さく欠伸を漏らし、旬灌と寄り添うようにして木に身体を預ける。
「ちょっとだけ、休憩マル……」
 そうして郁乃は、眠りについた。

 ミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)フランカ・マキャフリー(ふらんか・まきゃふりー)と手を繋ぎながら、のんびり森の中を歩いていた。すでにハンターとの戦闘が開始されているらしく、そこかしこから物騒な音がする。
「みーなとおさんぽ、みーなとおさんぽ、がおがおがおー」
 と、歌うように言うフランカ。その頭と尻には、ミーナとお揃いのライオン耳としっぽが着いていた。
「ライオンさんのフランカ、すっごくかわいいがおー」
 と、ミーナもにっこりする。
 二人はどうやら、宝箱には興味がないようだった。今日は二人で森をお散歩、といったところか。
「フランカはミーナが守るから、安心するがお」
「がおっ」
 しかし、彼女たちの平和はあまりにも脆く、儚いものだった。
 突然、二人の前にまばゆい光が発現した。思わずフランカと手を放してしまったミーナは、光が収まるのと同時に周囲を見回したが、彼女の姿はない。
 先ほど、誰かにポニーテールを引っ張られたような気もするが、そんな痛みよりもフランカの方が重要だ。
「フランカ!? どこにいるがおー?」
 がさがさと辺りを探せば、フランカが木の根元でうずくまっていた。
「がぉ……ふ、フランカはライオンさんがお……ひゃ、ひゃくじゅうの、おう……ひっく」
 びくびくと震えながら泣き出すまいとするフランカに、ミーナは優しく声をかけた。
「もう大丈夫がお、フランカ。ミーナがここにいるがお」
 と、ぎゅっとその身体を抱きしめる。
「み、みーな……っ、うぐっ、ふぇぇーん」
 フランカはミーナにしがみつき、泣き始めた。ミーナのしっぽはすでに失くなっていたが、そんなの関係なかった。
「大丈夫、気が済むまで泣いていいがお」

 ミーナのしっぽを奪ったリドワルゼ・フェンリス(りどわるぜ・ふぇんりす)は、それをセルマ・アリス(せるま・ありす)に手渡した。
「これは……ライオンのしっぽにゃ!」
 すでにいくつかの報酬(しっぽ)を得ていたセルマだが、ライオンのしっぽは初めてだった。
「それも、ちょっと小さめ……にゃ!」
 と、目を怪しく光らせる。彼らは一応ハンターなのだが、本当の意味でのハンターになりつつあった。
「よし、次いくにゃ!」
「わんっ」
 ばばっとその場を離れ、新たな獲物を狩りに出かける。
 この黒猫と獣人の犬のハンターコンビは、あっという間に参加者の耳へ噂として伝わることになる……。