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クリスマス…雪景色の町で過ごすひととき…

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第24章 ほんのり過激にほんのり甘く

「どれから乗ろうかな?」
 荀 灌(じゅん・かん)とクリスマスデートしようと遊園地にやってきた芦原 郁乃(あはら・いくの)が園内を見回す。
「そうですね、これだけあると迷ってしまいます」
 ガイドブックを開いた灌はペラペラとページをめくり、どのアトラクションから行こうか選ぶ。
「うん、思った通り」
「え?」
「よく似合ってるよ。可愛い」
 郁乃はニッコリと微笑んで灌の姿を見る。
 目に眩しい赤とポイントを縁取る白の組み合わせで、サンタガールという格好をさせている。
 セパレートタイプでボリュームのあるファーが使われ、白いブーツとの組み合わせがとても可愛いので灌も気に入っている。
「(確かにお姉ちゃんにコーディネートしてもらったこの服、可愛いんですけどね・・・)」
 スカートの丈が短いため足を隠そうとするかのように、恥ずかしそうに裾を引っ張る。
「こんなにかわいい子と一緒なんだよーって叫びたくなったよ」
 ニコニコと笑い、郁乃は彼女の頭を帽子の上からそっと撫でる。
「や、やめてくださいね、恥ずかしいですから」
 灌は黒色の双眸を丸くし、顔を真っ赤にして首を左右にふるふると振るう。
「フフッ冗談だよ。荀灌を困らせるようなことはしないからね」
「もうお姉ちゃんったら・・・っ」
「えへへ♪それでさ、どれに乗ろうか?トロッコに乗って遊ぶのがあるよ。小人が洞窟で採掘していて、周りが灯りでキラキラしているファンシーな方と。前からくる楽器のソリットビジョンにボールをぶつけて遊ぶの・・・どっちがいい?」
「お姉ちゃん、もう1つありますよ」
「うーん・・・ちょっと激しい系だけど、荀灌が大丈夫ならいいよ?」
「楽器とそれ、両方行きたいですっ」
「分かった!じゃあそこへ行こう♪」
 はぐれないように手をつなぎ、楽器のショップのようなアトラクションへ向かって走る。
「わぁ〜トロッコも氷で出来てるよ!」
 列に並んで1時間ちょっと待ち、郁乃たちはトロッコへ乗り込む。
「私がレバーは八分音符なんですね。動かすとぐらぐら揺れて、私たちが難易度を調節するみたいです」
「へぇ〜そうなんだ。こっちのは実際に進むから切り替えとかはやらないんだよね」
「えぇそうですね」
「曲は・・・私が好きなやつにしようっと。もうすぐスタートだけど、楽器が私たちのところへ来る前に、それにこのボールをぶつけるのかな?」
「始まりましたよ、お姉ちゃん」
「よぉし、高得点を狙っちゃうよーっ」
 サウンドが流れ始めると郁乃はボールを抱えて、雪で作ったようなバイオリンやピアノにぶつけて、ソリッドビジョンを消していく。
「タイミングよくぶつけると、演奏しているみたいに音が出るんだね」
「お姉ちゃん、初めてなのに上手です!」
「荀灌もやってごらんよ」
「はい!―・・・うーん、上手く当てられないですね、通り過ぎていっちゃいます」
「テンポの速い曲だし、ちょっと難しいかもね。あっ右の方から来るよ!投げちゃえっ」
「あっ、はい!やりました〜っ、当てられましたよ♪」
 彼女の声に合わせてボールを投げてフルートを消せた灌は、嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねる。
「やったね荀灌っ!」
「でも私にはちょっと難しいですから、お姉ちゃんが投げてください」
「えっ、いいの?」
「やるなら高得点を狙いたいですし」
「遊びだから点なんて気にしなくてもいいのに。じゃあ・・・そのレバーを動かして難易度を上げてくれないかな」
「分かりました♪」
「このぐらぐら感、いい感じだね。いっくよーっ、えぇえーい!」
 テンションを上げて郁乃はノリノリでボールを投げる。
「お姉ちゃん、3つ来ますよ」
「よぉし全部消しちゃうよ!わぁっ、っとっと・・・2つ通り過ぎていっちゃった」
 揺れるトロッコに足を滑らせて、バイオリンが通り過ぎていってしまう。
「でも、これくらい難しくなきゃ楽しくないからねっ。曲的に次ぎでラストだね。あわわっ、いっぱいきた!」
「頑張ってください、お姉ちゃんっ」
「全部当てたよ、やったぁーー!あーっ、最後にちょっと残ってたみたい・・・」
「初めてだから仕方ないですよ、ほら点が出ますよ」
「5000点かぁ、最初だからこんなものかな?」
 灌が指差す方を見上げると得点が表示され、まぁまぁかなというふうに言う。
 楽器のアトラクションを出た2人は、もう1つのトロッコに早く乗ろうと大はしゃぎで走る。
「ここは寒くないように中でコートが借りれるんだね」
「実際にトロッコが走るわけじゃないんですけど、雰囲気を出すために前から風が吹く仕組みになっているようです」
 3Dゴーグルをつけながら灌が言う。
 レンズの部分は鮮やかなライトブルーのカラーだ。
「よく3Dメガネっていうのがあるけど、こっちはゴーグルなんだね。なんか未来から来た人がつけていそうな感じがするよ」
 灌と同じのを選んで郁乃も、両端に天使の羽が生えたようなゴーグルをつける。
「難易度はリイシューにしとこっと」
 炭鉱で使われていそうな形のトロッコに乗り、郁乃は爆弾型のボールを抱える。
「私はレバーを操作しますね。タイミングよく切り替えて進むみたいですから。前後に動かすと速度も調節出来るみたいですね」
「うん、お願いっ。あの画面に向かって投げるんだね。あっ、ちいっちゃい雪のモンスターが来た♪」
 ゴゴゴッガタタンッと音を立てて、トロッコが左右に揺れる。
 トロッコに乗って追いかけてくる怖可愛い映像に向かって、爆弾をぽんぽんと投げつける。
 ドカァアアーーーンッ。
 前から吹いてくる風と共に、爆風のように左右から風が吹き荒れる。
「どんどん爆破しちゃうよっ」
「次ぎで切り替えです!しっかり捕まっててくださいね」
「うんっ」
「きゃぁあ、私にじゃなくてトロッコにです!」
「えぇ!?あ、そっか!きゃわぁっ」
 ドォオオオオォオンッ。
 切り替えが失敗してしまい、行き止まりの壁に激突したように揺れてゲームオーバーになってしまった。
「うぅ〜・・・ごめんね、荀灌」
「仕方ないですよ、それに遊びですからね」
「じゃあ最後に観覧車に乗ろうか?」
「はい!」
「確かね、こっちの方に・・・あった!」
 観覧車に乗ろうと灌と一緒に列に並び、また1時間ちょっと待って乗り込む。
「今日は楽しかったね、荀灌!」
「はい、とっても楽しかったです」
「ボールを投げるってシンプルな感じだけど。風が吹いたり揺れてる感じとか、わりと手が込んだ作りだったね」
「そうですね、今度は私も投げてみたいです」
 彼女たちが楽しく会話している中、観覧車は少しずつ高度を上げていく。
 今まで遊んでいた遊園地がジオラマのように、だんだんと小さくなっていく。
「クリスマスの時期が一番キレイに見える時期なんだって。町がいっぱいデコレーションされる時期だからね」
 ガラス窓から外を覗き園内を見下ろすと、日が沈み始めた町並みは夕日色のオレンジに染まり、端から少しずつ広がっていく蒼の下では飾られた町の灯りがキラキラと輝いてる。
「どう?」
「すっごくキレイです」
 彼女がそう答えると2人は窓の外を眺め、観覧車の中に静かで穏やかな空気が流れる。
「お姉ちゃん」
「んー?」
 灌に呼ばれて振り向くと、ぎゅっと抱きつかれた。
「い、いつものお返しです」
 郁乃に抱きついた灌の顔はスゥーッと顔を赤らめて、急に恥ずかしくなったのか、ぱっと彼女の体から離れて少しだけ視線を逸らす。
「もう1回」
「っ!」
「ね?」
 もう1度抱きついて欲しいとお願いしてみるが、やっぱり恥ずかしくなった様子で、灌は今にも顔を真っ赤にしたまま沸騰したように頭からしゅぅーっと湯気が出てしまいそうな感じだ。
「来ないなら私から」
 照れて離れようとする彼女に、郁乃が頬にちゅっとする。