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クリスマス…雪景色の町で過ごすひととき…

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第26章 かわぃいのは大好き♪ファンシーな箱庭

「かわいい乗り物がいっぱいありますね。クリスマスは遊園地でみんなであそぶです♪」
 ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)はどんな乗り物があるのか、入り口から園内の中を覗き込む。
「これが遊園地?すっごいにぎやかね。ねぇ、バフバフもいっしょに乗れるの?」
 白い大きなセントバーナードの犬に乗り、クレシダ・ビトツェフ(くれしだ・びとつぇふ)がバフバフの頭を撫でながら言う。
 生まれたばかりのアリスの彼女は、遊園地に初めてやってきた。
「ちょっと聞いてみますね。あのー、動物って乗り物に乗ってもいいんですか」
「すみません、動物は乗れませんのでご遠慮ください」
「そうなんですか・・・。じゃあ園内に入るだけでもいいです?」
「わたくしどもの遊園地のみ、入場だけは出来ますが。たいていの遊園地では、動物は入場出来ないとお考えください。また、他のお客様に迷惑がかかってしまった場合、すぐ園内から出していただくことになります」
「むー・・・入場だけってことは、乗り物は乗っちゃいけなくて、お食事するところとこかも入れないってことですね?」
「えぇ、そうなります。厳しいようですが、衛生面と動物が苦手な方もいらっしゃいますから。万が一、追いかけられたりでもしたら怖いですからね」
「わかりました。ていねいに説明していただいてありがとうです。クレシダちゃん!乗り物とかはむりですけど、入場だけはなんとか許可をもらえたですっ」
 ぺこっとおじぎをしたヴァーナーはクレシダのことろへ行き、乗って移動するだけなら大丈夫と伝える。
「うん、ありがとうヴァーナー」
「さぁ入りましょう♪」
「ヴァーナーおねえちゃん、あたしも遊園地初めてだよ!」
 園内に入ったサリス・ペラレア(さりす・ぺられあ)は、うきうきしながら周囲を見回す。
 彼女の方は戦争時代に封印されていたため、見るもの全てが初めてだ。
「皆で遊ぶきかいがあまりないですからね、今日はいっぱい遊ぶですっ」
「ほらほら皆、手をつながないとあっとゆう間に迷子になっちゃいますわよ」
 それぞれ別のところへ行こうと走るサリスとクレシダを、セツカ・グラフトン(せつか・ぐらふとん)が呼び止める。
「沢山あってどれから乗ったらいいか迷ってしまいますわね」
 おそろいのサンタの赤いコートを着て、どれから乗ろうか選ぶ。
「あれがコーヒーカップです、ここのはお花の形のカップですね」
「かわいいわね、乗りたい」
 ヴァーナーが指差す方を見ようと、クレシダがバフバフの頭へよじ登って見上げる。
「あの白いお花がいいっ」
 サリスは羽をぱたつかせてすとんっとドラセナの花の形をしたホワイトカラーのコーヒーカップに座る。
 取っては長いグリーンの葉で表現されている。
「(この花には幸福っていう花言葉がありますわね。4人でこうやって過ごせる時間が、とても幸福ですわ)」
 彼女の隣に座ったセツカはそんなことを考えながらクスッと微笑んだ。
「これも氷雪ですよね?まるでガラス細工みたいにキレイですっ」
 不思議そうに首を傾げたヴァーナーが、カップをぺたぺたと触る。
「開始の音が鳴りましたわよ。ちゃんと席についてください」
 きゃっきゃとはしゃく彼女たちにセツカがパンパンッと両手を叩いて座るように言う。
「そのテーブルを回すと、カップが回りますよ」
「クレシダがカップを回すわ」
 ヴァーナーに教えてもらった通りにやってみようとクレシダがテーブルの傍へ行く。
「えぇ〜クレシダちゃん、あたしにも回させてよ」
 くるくると楽しそうにカップを回転させる彼女の傍へ寄り、サリスが花の蜜色のテーブルに手をかけて逆方向へ回そうとする。
「やめてよサリス、今はクレシダが回しているのよ」
「むぅ〜っ。いくらかわいい妹でも独りいじめはいけないよっ」
「イヤーッ」
「ケンカはいけないですよっ」
 カップの操縦を奪い合いをする2人をヴァーナーが止めようとするが、彼女のいうことをまったく聞こうとしない。
「じゃあ、あたし他のカップで遊ぶ!」
「こらっ。空いているのなんてないですわよ。他の人に迷惑かけるんじゃありません」
 羽をぱたつかせて別のコーヒーカップのところへ行こうとするサリスにセツカがメッと叱る。
「ちょっと2人とも、変わりばんこに遊べばいいんじゃないのですの?」
 子供をめっと叱るように、彼女たちに優しく言う。
 彼女の言葉に2人は“はぁ〜い”と不服そうな返事をする。
「最初はクレシダちゃんに譲ってあげるよ。おねえちゃんは妹に、先にゆずるものだからねっ」
「えらいですわね、さすがおねえちゃんですわ」
 ぽふぽふとサリスの頭を撫でてやる。
「えへへ〜♪」
 妹に譲ってあげたことを褒められ、サリスは嬉しそうに笑う。
「いいわよサリス、交代してあげる」
「わぁ〜いっ、回しちゃうよー。くるーくるくるぅ〜、楽しい〜♪ヴァーナーおねえちゃんも回してみて、楽しいよ」
「はいです!いっぱいテーブルを回しちゃうです♪」
 4人を乗せたドラゼナのカップがくるくると回る。
「次はセツカちゃんの番ですっ」
「あら私の番ですわね。フフフッ、沢山回しますわよ」
「きゃはは〜♪いーっぱい、いーーーーっぱい回して」
 足をばたつかせてサリスがきゃっきゃと喜ぶ。
「あっ、止まってしまいましたわ。終わりのようですわね、降りますわよ」
「もうちょっと回りたかったよ」
 サリスたちは物足りなさそうな顔をしながらもカップから降りる。
「ねぇヴァーナー、あれは何?」
「メリーゴーランドですよ。乗ってみたいです?」
 バフバフに乗っているクレシダの指差す方を見てヴァーナーが彼女に教えてあげる。
「面白そうだから乗ってみたいわ」
「それじゃあ並ぶです♪」
 30分後、やっと彼女たちが乗れる順番がきた。
「あっちはポニーちゃんですね。あっ、ペガサスとかもあるんですか。ボク、これにするです!」
 どれに乗ろうかときゃーきゃーとはしゃぐ。
「微細な細工の陶器がそのまま氷雪になった感じですわね」
 セツカは馬に乗り、メリーゴーランドを眺める。
「きゃぁ〜かわいいっ。お姫様が乗っていそうな馬車がある!」
「クレシダもそれがいいわ」
「じゃあ一緒に乗ろうよ」
「えぇ、いいわよ」
 サリスとクレシダは2人乗りの馬車に乗った。
「回り始めましたわよ、止まるまでそこから動いちゃいけませんからね?」
 セツカの声に3人は、はぁいと元気よく返事をする。
「ヴァーナーちゃん〜♪」
「こっちも楽しいわよ、ヴァーナー」
「サリスちゃ〜んっ、クレシダちゃん〜」
 手を振る2人にヴァーナーは、ふりふりとめいっぱい両手を振る。
「このペガサス、今にもお空を飛んじゃいそうですっ」
 触れても溶けない氷のペガサスの頭を撫でてニコニコと微笑む。
「こっち向いてください、セツカちゃんっ」
「あんなにはしゃいじゃって、よっぽど楽しいみたいですわね」
 クスッと微笑み少女へ手を振り返す。
「終わっちゃったね。ねぇ〜、あの小さなお家はなぁに?」
「んー・・・あれは、光のエルフのお家みたいです。といっても、じっさいにいきているエルフが住んでいるわけじゃないんですよ」
 ガイドブックをめくり、石造りの雰囲気を氷で表現した家の周りを興味津々に眺めるサリスに説明する。
「そうなんだね?入ってみたいかも」
「クレシダも気になるわ」
「ちょっと私も見てみたいですわね」
 ヴァーナーたちは氷雪の森に囲まれた家の中へ入ってみる。
「わぁっ、小さい花火みたいですっ」
 小瓶の器を開けてみると中から小さな打ち上げ花火が上がったかのように、パチパチッと光の球体が弾ける。
「あら?あれってソリットビジョンみたいですわね」
 園内の従業員たちが創造で表現した姿のエルフが、家の中をうろうろと歩いているのをセツカが見つける。
 その姿は背が高く耳が長く尖っていて美しい姿だ。
「暖炉に近づくだけで・・・火がともるんですのね。玄関に近づいたら灯りがつく照明と同じ原理みたいですわ」
 レンガのように似せて造られた暖炉の中にポウッと炎のような灯りがともる。
「へぇ〜面白いわね」
「他にも何かあるのかな?」
 クレシダとサリスも家の中を探検する。
「皆、たんけんにむちゅうみたいです♪」
 ヴァーナーは窓の傍で3人の様子を見ながら一緒に来れてよかったと微笑んだ。