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またゴリラが出たぞ!

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「殿……このままでは鍋の神髄をおしえる前に鍋が大変なことに……!」
「ちょうどそれがしのアパートの前のドブ川があんな感じの色をしているでござる……!」
「むぅ……、このままでは埒があかん! ものども実力行使だ、鍋を奪う!」
 美食家として……いやさ人として、これ以上鍋が傷つけられるのを見ていられない。
 だが、その前にカレンのパートナーであるジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が立ちはだかった。
「なにを考えておる、馬鹿どもが! まだ全然灰汁が取りきれてないではないか!」
 悪代官、もとい灰汁代官ジュレールは血走った目で灰汁をすくい始めた。
「鍋将軍を名乗っておるくせに、灰汁を取ることすら知らんのか! これを怠って美味い鍋など笑止千万!」
「……知ってるけど、灰汁じゃなくてマンドレイクをすくうのが先でしょーが」
「はぁ? 灰汁が先に決まっておるだろうが! 刻一刻とスープに灰汁がとけ込んでるのだぞ!」
「いや、マンドレイクのエキスも溶け込んでるから! 絶対ヤバイから! 人命に関わるから!
 マンドレイク……幻覚、幻聴を伴い時には死に至る神経毒が根に含まれる。Wikiより。
「でも、美味しいよ……?」
 カレンは言った。
「超おいしー。皆も食べなよーすっごいおいしー。おいしーカレー雑炊だよ」
「カレー雑炊って言っちゃったよ!」
 しかしまぁ美味しいならそれはそれで良いことだ。皆もぞろぞろと鍋に手を付け出した。
「マジで? あたし、カレー雑炊とか初めて食べるかも」
「ほら、やっぱりおにぎりいれて正解だったなー」
「違いマス。ワタシのカレーによるナイスアシストが功を奏したのデスヨ」
マルキアちゃんは? うちのマルキアちゃんはどうなの!?
 死肉にむらがるハイエナのように一同が鍋を囲むと、面目を潰されまくりの将軍が慌てだした。
「ちょ、やめよ? せめて将軍の持ってきた食材も入れよ? 絶対おいしいから、ね?」
 と言ってざるを持ち上げた瞬間、豆腐が爆発した。
「ほわー! な、なにごとだ!」
「『豆腐』ってよォ、なんで発酵もしてねーのに『腐る』って書くんだ? 腐ってるのは納豆の方じゃあねえのか?」
 ふと愚痴をこぼしたのは、遅れて新年会にふらりと現れた弥涼 総司(いすず・そうじ)
 座敷上がって来るなり、苛立った様子で豆腐を睨みつけている。
「き、貴様の仕業か!?」
 将軍を中心に奉行たちが豆腐を守るように立ちはだかる。
 だが、そんなもの総司の目には入っていなかった。
「納豆は納豆でよォ……何に納まってるんだ? 型に納まってるのは豆腐の方じゃあねーかーよォ……これって、納得いくかァ〜、おい? オレはぜーんぜん納得いかねえ……。どういう事だ! どういう事だよッ! クソッ!」
 興奮してギアッチョると、フラワシを放って豆腐を破壊し始めた。
「ナメやがってクソッ! クソッ!」
「しょ、将軍! 勝手に豆腐が破壊されてゆきますぞ!」
「なんということを! 食べ物を大切にしろとお母さんにならわなかったのか、小僧! お母さんが泣いてるぞ!」
「うるせー! のぞき部にはいった時から泣いてるわ!
 見えない力で爆発する豆腐に、お祭り好きのアゲハは大興奮である。
「すっげー、なにそれ? それで食っていけんじゃね?」
 総司はちらりとアゲハとJJを見る。
「えーと? 乳盛過ぎさんと……ゴリラ君だっけ?」
「神守杉だってば。盛れるほど乳ないから。そこそこしかないから」
「ぼくもゴリラではないですよ。すこし似てるそうですけど。ジャングル・ジャンボヘッドと言います」
「ああ、そうだっけ。でもジャングルジャンボヘッドってながいな。ジャジャって呼んでやるぜ」
 気さくな彼である。
 だが、パートナーのアズミラ・フォースター(あずみら・ふぉーすたー)は対照的に怖い顔をしている。
 思えば、アゲハとは因縁があった。大した因縁ではなかった気もするが因縁は因縁だ。
「あんた、田舎のがんばり屋さんじゃん? どしたの、イモでも食いにきた?」
「ふっ……、再び言葉の右ストレートをくらって左まぶたが痙攣してきたわ……」
 こめかみに青筋が浮かぶ。 
「ワタシって、子供の頃から興奮すると『眼輪筋』がビグビグいって、ちょっと暴力的になるのよね……」
「そんな顔すんなよ、ほら食べてみー?」
 別にバカにしたわけでなく挨拶のつもりだった彼女は、平然と雑炊の入った小鉢を渡した。
「こんなもんで誤摩化そうたって……あら! お、おいしいじゃない、これ!」
 隠し味のスッポンが利いて絶妙のハーモニーを奏でている。
 おいしいおいしいとパクつくアズミラだったが、不意にガリッと不気味な歯ごたえのするものを噛んだ。
「な、なにこれ……? 口いっぱいに死の香りがするんですけど……?」
「マンドレイクじゃん?」
「はぁ!? なんなのよ、これあんたの仕業……うえっ! れろろろろろろろ……!!」
「き、きったねぇ!」