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リアクション
第7章 猫、池の鯉を狙う
所変わって、ここは庭。ファイローニ家が所有する庭は、広々とした「広場」、いくらか木々を配置し、小規模ながら森林浴を楽しむことができる「林」。そして鯉が泳いでいる「池」の3箇所が特に目立つポイントとして知られている。
その庭の池付近にて猫探しを行うのはレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)とチムチム・リー(ちむちむ・りー)のコンビだった。
「貴族の猫なんだから、きっと毛並みもふわふわだよね」
大量の猫に囲まれるためにも、と意気込んでこの依頼に参加したレキは、もしかしたら猫が池にいる鯉を狙っているかもしれないと予想して、池付近を捜索することに決めたのである。
「なんたって、『泳ぐ魚』だもんね!」
「いやいやレキ、それを言うなら『泳ぐ宝石』アル。確かに鯉は魚だけど、『泳ぐ魚』って、いくらなんでもそのまますぎるアル」
「でも魚には違いないんだもん」
パートナーからの指摘など意に介さず、レキは池に向かって行った。果たしてそこには、池の鯉を眺めながら寝そべる猫の姿があった。他にも近くで遊んでいるのを含めて、5匹がそこにいることになる。
「あらら、やっぱり池の鯉を狙ってるみたいね」
「猫のような『捕食者』にとって、明るい色をした錦鯉は格好の標的アル」
そのため、鯉の住む池には柵や覆いが設けられてあったりするものであり、この池には猫が入り込めない程度の柵があった。これで猫が鯉を食べてしまうことは無く、また池にはまる心配も無いというわけである。
「それじゃ、急ぐ必要は無いってことだね!」
鯉が狙われる心配は無いと理解したレキは、猫じゃらしを持って池の近くにいる猫に近づいた。
「ほれほれ、おいで〜」
その声に反応したのか、猫はひと鳴きするとレキの猫じゃらしに寄ってきた。
「お〜、本当に簡単に寄ってくるんだね。……ん〜、シャンバラの猫って大きいのかと思ったけど、この子は普通なんだね。あ〜、やっぱり毛並みがふわふわ〜!」
やってきた猫の体をなでながら、レキはその顔をほころばせた。そんな彼女にチムチムが困ったような表情を見せる。
「あの〜、ところでレキ、チムチムはどうすれば……?」
「ん、そうだね。それじゃチムチムはその暖かそうな体を活かして猫ちゃんを誘惑してみてくれない?」
「ほいほい、わかったアルよ」
チムチムは身長が2メートル、体重が100キロもある黒猫の「ゆる族」である。その着ぐるみの「もふもふっぷり」はレキのお気に入りなのである。
現在は初春といった時期。まだ肌寒い気候であるため、自身の着ぐるみによる誘惑は確かに成功する可能性が高い。
そこでチムチムは地面に座り、尻尾で地面を軽く叩いてみた。レーザーポインターの軌跡を追いかけるように、猫は動くものには敏感なものである。チムチムの狙い通りに、猫たちはその黒い着ぐるみに寄ってきた。
「ほ、本当に簡単に寄ってきたアル……」
近づいてきた猫たちの頭をなでて落ち着かせてやりながら、チムチムはゆっくりと立ち上がった。
「そういえば、猫ちゃんたちは1階の空き部屋に連れて行くんだっけ?」
「そうアルね」
「じゃ、この辺はもういなさそうだから、そろそろ行こっか。それにそろそろ何匹かは部屋に入れられてるだろうしね」
チムチムに合わせてレキも立ち上がり、笑顔で猫に呼びかける。
「猫ちゃ〜ん、今からボクたちとお屋敷に行こうか。そこに行けば美味しいものが出てくるからさ〜」
「?」
言葉が通じているのかどうかはわからなかったが、少なくとも猫たちはレキやチムチムの足元から離れず、ついていく意思を示した。
「よ〜し、それではしゅっぱ〜つ!」
音頭をとるレキとそれについていくチムチムにくっついて回る形で、5匹の猫は屋敷へと誘導されていった。
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