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【カナン再生記】擾乱のトリーズン(第3回/全3回)

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【カナン再生記】擾乱のトリーズン(第3回/全3回)
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■第35章 漆黒の神殿

「セテカさん、どうするんですか?」
 キシュの外壁に到着して早々、矢野 佑一(やの・ゆういち)が訊いた。
「予定通りだ。彼らの健闘を信じるしかない。急く気持ちは分かるが、最初から神殿の兵まで相手にして戦っている余裕はない。バァルとしてエリヤの元へたどりつくんだ。すみやかにエリヤを確保するのが先か、ネルガルが帰還するのが先か。時間との戦いだ」
 だがおそらくそう時間は稼げないだろう。30人のドラゴンライダーやネルガルに対し、あの人数ではたかがしれている。
 セテカは先に到着していた館の使用人たちから馬を受け取り、全員に手綱を渡す。そしてこのことには一切口をつぐみ、もし危ないと判断すれば時期をみてキシュを脱出することを薦めておいてから、使用人たちを帰した。
「あの人たちは大丈夫なの?」
「分からない。だが彼らは東カナンの者とはいえ、長年キシュで暮らしてきた者だ。こちらには友人も家族もいる。自分たちで判断してもらうしかない」
「そう…」
 しゅん、となったミシェル・シェーンバーグ(みしぇる・しぇーんばーぐ)の背中をぽんぽんと叩き、セテカは笑顔を見せた。
「ある意味、これからの東カナンにいるよりはキシュにいる方が彼らのためかもしれない。物事は悪い面ばかりじゃないさ」
「そうだよ。彼らを信じよう。ね? ミシェル」
「うん」
 気を取り直し、ミシェルはカポッと兜を被った。
「では、騎乗」
 セテカの合図で全員、馬に騎乗する。
 バァル役の緋桜 遙遠を中央に、エリヤの世話女官役に扮したルカルカ・ルー(るかるか・るー)、秘書役のダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)以外は領主の護衛役として鎧装束姿だ。矢野 佑一(やの・ゆういち)ミシェル・シェーンバーグ(みしぇる・しぇーんばーぐ)トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)レン・オズワルド(れん・おずわるど)水心子 緋雨(すいしんし・ひさめ)天津 麻羅(あまつ・まら)不破 勇人(ふわ・ゆうと)榊 孝明(さかき・たかあき)益田 椿(ますだ・つばき)……11人。セテカを入れて12人だ。
 いつもはバァルと10人の護衛でキシュを訪れている。この人数を不審に思われなければいいのだが…。
 今は、迷っている時間も惜しい。
 セテカは南の方角を仰いだ。何かがやって来る様子はない。時間はあまり残されていないというのに。
(――バァル、急げ……早く来い)
「行くぞ」
 馬首を巡らせ、彼らは正門へと向かった。



 ここは北カナン、ネルガルの本拠地だ。そこにわずか十数名で潜入する。しかも銃のない東カナンの者らしく装うため、重火器は一切身につけられない。
 だがキシュの外門は、すんなりとくぐることができた。
 当然といえば当然だが、ここで発覚するほどセテカが前もってしていた準備は稚拙ではない。彼らのまとっている鎧は全て本物だし、滞在理由として提出する書類もサインも本物だ。許可がおりるまでの間、あせりなどこれっぽっちも見せないけろりとした顔でセテカが門番と世間話で花を咲かせている間、彼らは黙して騎乗しているだけでよかった。
 ただひとつ。
「おまえたちちっこいなぁ。ほんとに護衛官か?」
 と、麻羅とミシェルの2人に話しかけてきた門番がいたが、麻羅が目にも止まらぬ抜き手で腰の長剣――セテカより支給されていた武具――を喉元に突きつけてみせただけで、すごすごと元いた場所へ戻っていった。
「すごいなぁ。ありがとう、麻羅さん」
「ふん。わしとしては、こんな貧弱な物よりゴールドマトックの方が扱いやすいんじゃがな」
 やはり中へ持ち込むのはゴールドマトックにしよう、と思う麻羅だった。



 彼らは開けた街の大通りを抜け、一路漆黒の神殿へと馬をギャロップで走らせた。
 街路を噛む蹄鉄の音と馬が躍動するたびにガチャガチャ噛み合う鎧の重い音は、1人でもかなりの音量だというのに、これが12人も連なればうるさいくらい目立つ。それでも行き交う街の人々が彼らを見ても、ちらと視線を走らせるだけで終わらせるのは、これが見慣れた光景だからなのだろう。
 やがてT字路に行き当たり、突き当たりの壁――神殿外壁に沿って馬を進める。
 音を聞きつけた神官装束の初老の男が、彼らがたどり着くより早く門前へと現れた。
「これはこれは。騎士さま方、ようこそおいでくださいました。こちらは北カナン御領主ネルガル様の御所、漆黒の神殿でございます。あなたさま方はいずれよりの御一行様でございましょうか」
「われらは東カナンより参った者。東カナン領主バァル・ハダドとその一行が着いたと、ネルガル殿にお伝え願いたい」
 出迎えた神官は、フードの下から馬上の一行に油断なく視線を走らせた。銀で打ち出された模様の入った馬具は、口輪ひとつとっても安物ではない。そして屈強な護衛たちの体に邪魔をされているせいで顔はよく見えないが、馬をかたどった紋章の入った紫紺の甲冑は、まさしく東カナン領主ハダド家のものだった。
「ネルガル様は現在不在でございます。アガデよりまだお戻りになられておりませんが…?」
「そうか? ネルガル殿からは本日帰来されると聞いていたのだが。
 アガデを発って早10日になる。馬では入れない山岳部の村々をワイバーンで回ってからお戻りになられるおつもりだということだった」
 とは、半ばハッタリだった。
 ネルガルのワイバーン隊は後方、南東の方角から来た。巡察はバァルからの書状にも書かれていたし、おそらくこれで間違いないだろう、という推測だ。ただ、まさか本当にまだ帰り着いていないとは思ってもいなかったが…。
「はい、たしかに。われらもそう承っております」
 神官は、自分の情報と一致する答えが得られたことで、ようやく頭を下げた。
「ふむ。どうやら早く着きすぎたようだな。
 ネルガル殿がアガデに滞在中、われらの手厚い歓待を喜ばれ、わが主君に弟君に会いに来るがいいとおっしゃったのだ。出立する間際、アバドン殿からもぜひキシュへと請われたこともあり、こうして参じたのだが」
「そこの者。わたしはいつまでここで待たされなくてはいけないのだ?」
 遙遠が、実に効果的なタイミングで、少しばかり苛立ちをにじませて言った。
 命じることに慣れた領主らしく、不遜に。
「おお、これはいたらぬ振る舞いを申し訳ありませんでした。わたくしめが迂闊でございました。騎士さま方、どうぞお入りください」
 西・南の情勢が不穏である今、東の領主の怒りを買うのは得策ではない。とっさにそう判断した神官は前をゆずり、彼らを参道へ入れた。
 第一歩だ。
 ここより先は、敵の根城となる。周り中、全てが敵。偽者と知れたなら――ネルガルに存在を知られてしまっている今、それは「かもしれない」という可能性の話ではなく「いつ知られるか」になっている――ここにいる何千もの神官、神官戦士を相手に戦うことになる。
 彼らはいっそう気を引き締め、先へと進んだ。


 馬を預け、数十段に及ぶ正面階段を上がった彼らは、数百人が一度に往来できそうな、広々とした拝殿へ入った。
 神殿の名にふさわしく、そこには静謐な空間が広がっていた。高い天井。直射日光が届かない内部は、どこかひんやりとした空気に満ちている。
「長旅で、さぞお疲れでございましょう。今お部屋をご用意させておりますので、ぜひそちらでごゆるりとおくつろぎになりましてお待ちください。ネルガル様がお戻りになられましたら、すぐお知らせさせていただきますので」
 神官が心持ち、声をひそめてしゃべるのも無理はない。また、そうしても十分最後尾の勇人まではっきり聞こえる。
「いや、それよりもまず弟君に会わせていただきたい」
「そうでございますか?」
 怪訝そうに眉をひそめ、神官はセテカを振り返った。
 なぜそうも急ぐのか分からないと言いたげだ。
「ネルガル殿からじきじきにいただいた御招待とはいえ、わが主はあまり長く滞在できないのだ。弟君と会える時間を、一刻も無駄にはできないと考えている」
 東カナンの領主が弟を溺愛しているのは周知の事実だ。そして滞在期間がいつも短いのも。
 加えてネルガルが東カナン領主に向かい「いつでも会わせてやろう」とよく言っていることも知っている神官は、そうしても何も問題はないだろうと頷き、柱の影に控えて彼らが通りすぎるのを待っている侍女の1人を呼び寄せた。
「これ、そこの者。保管庫のムンバト神官に石化解除薬を、直会殿の東カナン御領主の部屋まで持ってくるよう伝えなさい。そしてあなたは貴婦人の間の鍵を女神官長から預かってくるように」
「――承りました」
 フードを目深に被ったその侍女は、秋葉 つかさ(あきば・つかさ)だった。
 彼女は遙遠の顔も、その護衛に扮している者たちの顔も、よく知っている。内心の驚きを声に出さないのはさすがだった。
(ここはネルガル様の神殿なのよ? そこに東カナン領主の一行として堂々侵入するなんて、まったく大胆不敵ね)
 しかしここでつかさ1人が騒いでも、神官戦士たちが駆けつける前につかさの方がやられてしまうだろう。分が悪すぎる。そう判断したつかさは黙って頭を下げ、この場を退いた。
(あの侍女の行く先に、石化解除薬があるのか)
 魔鎧告死幻装 ヴィクウェキオール(こくしげんそう・う゛ぃくうぇきおーる)のスキル、隠れ身と隠行の術を用い、救出部隊の後ろにくっついて侵入をはたしていた平等院鳳凰堂 レオ(びょうどういんほうおうどう・れお)は、ここで列を離れた。
 拝殿を反対側へ渡り、抜けて、御饌殿の回廊を渡り、奥神殿へ。
 気づかれないよう、細心の注意を払って、レオはそっとつかさのあとをつけて行った。



 やがてセテカたちは、豪奢な客室へと通された。
 30人は余裕で入りそうなリビングと複数の部屋がつながったスイートルームだ。
「それでは、こちらでおくつろぎください。皆さんさぞお疲れでございましょう。じきに浴室も使用できる状態になるかと思います。それまで何か、疲れのとれるものをご用意――」
「いらぬ心配だ。それより、エリヤとはいつ会えるのか?」
 遙遠は背中越し、神官に問うた。
 冴えた青い目に射竦められ、神官はあわてて頭を下げる。
「……は…はぁ。も、もう少々お待ちください。
 一体ムンバト神官は何をしているのか…」
 ひとりごちたあと。
「やはり人づてにしたのが間違いでした。わたしが呼んでまいりましょう」
 神官はぺこりと戸口でもう一度遙遠に向かって頭を下げ、少々あわて気味に部屋を出て行った。
「――ルカ」
「ええ」
 ルカルカは扉にぴたりと耳をつけた。シャッシャッという、あの神官の歩く音が聞こえる。ある程度遠ざかってから、腕にかけてあった光学モザイクを頭から被って廊下へすべり出た。
 目的は石化解除薬の入手だ。それを持ち帰り、分析・生産することが狙いだった。
(もちろんエリヤくんの分には手を出さないけどね。まさか1個しかないってことはないでしょ。保管分をいただいちゃおっと)



 神官がいなくなり、室内は彼らだけになったが、だれも椅子にかけようとはしなかった。
 いつネルガルが戻り、潜入に気づかれるかしれない。そう思うとそわついて、とてもくつろぐ気持ちにはなれなかった。
「……あれ?」
 ふと緋雨が、あることに気づいて人数を数え始めた。
「1、2……10人? 1人足りなくない?」
「えっ?」
 全員が互いを見合い、不在者を確認する。
 不破 勇人の姿が、どこにもなかった。



 不破 勇人は、拝殿のどこともしれない回廊を小走りに走っていた。
(どこや…)
 きょろきょろと辺りを見回す。
 彼は、ずっと捜していた行方不明の母親の手がかりを求め、カナンにやってきていた。だが東カナンでその情報を得られることはなく、もしかしたらとの思いから、北カナンまで来たのだ。
 そして、ついにそれらしき影を見た気がして、あとを追ったのだが。母か、それとも全くの別人か、見定める前に人影を見失ってしまった。
 あせって追いかけるあまり、どこをどう進んだのかも分からない。今自分がどこにいて、どう進めばみんなと合流できるのかも。
 だれか……神官でもつかまえ、東カナン領主一行の部屋を訊くべきか? そうは思ったが、あの人影がどうにも心にひっかかり、戻る気にもなれかった。
(どこにおるんや、ニグレド…)
 勇人はどこともしれない薄暗い回廊を、母の姿を求めて走った。



 一方、つかさのあとをつけていたレオは、最奥の神殿にある石化解除薬の保管室までたどりついていた。
 セテカが描いた見取り図を思うと、遠回りをしていたようだが、何か理由があってのことだろう。神殿の入り口は神官しか使用できないとか、おそらくはそんな類の。つけている間中、もしかして気づかれているのかと何度か懸念したりもしたが、どうやらそうではなかったらしいと、レオはほっと息をついた。
 つかさから伝言を聞いた神官が、部屋の奥へと戻って行く。つかさはそのまま保管室を通りすぎ、まっすぐ通路を歩いて行った。
 貴婦人の間の鍵とやらを受け取りに行っているのだろう。
 念のため、彼女が曲がり角を曲がるまで待ってから、保管室へすべり込む。
 ムンバト神官は彼の侵入に気づかず、背を向けたままだった。ケースに並んだ石化解除薬の小さな容器――人差し指ほどの大きさの試験管のようなもの――を1つ取り出し、それを横のトレイの上の羅紗張りの赤い箱に大切に寝かせると、ケースカバーを閉め、トレイを両手で捧げるように持ってレオの前を通りすぎ、保管庫を出て行った。
 さらにレオは数分待って、ムンバト神官が絶対に戻ってこないと確信してからケースの前に歩を進めた。
(これが石化解除薬)
 透明のカバー越しに中を見下ろす。
 そこには、さっきムンバト神官が持っていた物と同じ、小さな容器がいくつか並んでいた。左端の1つだけ、くぼみしかない。エリヤ用の石化解除薬があったのだろう。
(鍵はなさそうだな…)
 レオが何気なくケースカバーを開いた、その瞬間。
 警報が、けたたましく鳴り響いた。
「しまった!!」
 部屋へ入るのが遅すぎた。解除するところを見逃してしまっていたのだ。
「あたりまえだ。これを何だと思っていたんだ、愚か者め。秘薬なのだぞ」
 不注意すぎると、ヴィクのあきれ返った叱責が飛ぶ。
 警報を切る暇などない。自動で閉まりかけた二重ドアに気づき、レオは石化解除薬の容器を1つポケットにすべり込ませると、大急ぎドアへ駆け寄った。
 小さな部屋であることが幸いした。間一髪、廊下に出ることに成功したレオは、手薄に見える奥へ逃げることはせず、むしろ前方に集まりだした神官戦士たちに向かって走り出す。その指には、コイン型光条兵器ゾディアック・レイが握られていた。



 警戒警報の音は、かすかではあったが直会殿にある領主の部屋まで響いていた。

「なんだ? ついにばれたのか?」
 まだエリヤと接触できていないのに。
 孝明の言葉に、ダリルがさっと扉を開け、廊下の様子を伺った。来た道の方、奥の広い通路をばたばたと走って行く武装した神官戦士たちの姿があったが、こちらにくる気配はない。
「いや、俺たちじゃないようだ。――ルカ、おまえか?」
 携帯でルカルカを呼び出す。
『ルカじゃないわよ。こっちの方こそ、そっちが何かヘマしたんだと思ったんだけど。
 今、さっきの案内人とムンバト神官が廊下で会ってるところ』
 ネルガルやバァルが到着したわけでもない。もしそうならここに神官戦士が押しかけているはずだ。
 だが…。
「――時間がない。この混乱を利用しよう。石化解除薬を奪って、貴婦人の間へ来てもらってくれ」


「って、奪うのはいいけど、貴婦人の間ってどこー? ここからどう進めばいいわけー?」
 なにしろセテカが描いたのは四角を並べただけの本当に大雑把な見取り図だったため、細かい道順がてんで分からない。
 とりあえずヒプノシスで神官たちを眠らせ、石化解除薬を手に入れはしたが、さてどちらの方角へ向かえばいいのやら?
「うーん……勘に頼るよりは、来た道を戻った方が無難かしら」
 きょろきょろ辺りを見渡したとき。
「こっちだよ! 早く!」
 曲がり角から手を振ったのは、イナンナだった。



 そのころレオは、ゾディアック・レイを四方に放ち、周囲を破壊しながら逃げていた。
 こうなったからにはなるべく派手に、陽動として動くしかない。そう決めて、あえて身を隠さず、引き離すこともなく、一定の距離を保つことを心がけて走っている。並走しているのは、魔鎧化解除したヴィクだ。
 地の利はどうしても向こうにある。横の通路で待ち伏せし、飛び出してくる神官戦士を先制攻撃、ブラインドナイブスで斬り伏せていく。
 そこに、勇人が合流した。
「一体おまえら、何やってるんや!」
 今まさにレオにチェインスマイトを放とうとしていた神官戦士の喉を、背後から女王のソードブレイカーで切り裂き、死体を蹴り飛ばす。
「逃げてる!」
 そう答える間も、レオの足は止まらない。
「くっそぉ!」
 背後を振り返り、その人数に目をむいて、勇人もまたレオの横についた。
「ありえん! こんなんありえんわ!!」
 通路いっぱいに広がっているだけでもすごい数なのに、さらに後ろに何重も。見るだけでゾッとする、おそろしい人数が得物を手に彼らを追っていた。
「たしかにこれは少々集まりすぎだな…。
 レオ、煙幕ファンデーションだ」
「OK」
 手渡されたそれを、後ろに迫った神官戦士に投げる。
 彼らの構えるラウンドシールドにぶつかり、コロコロと床を転がったそれは、プシューッと音を立てて勢いよく白煙を噴き出した。
「なんだ!?」
 神官戦士たちは突然視界を埋め尽くした煙を警戒し、吸い込むまいとするものの、そんなことができるはずもない。
「いまだ」
 ヴィクの合図で、レオは咳き込む彼らの周囲の柱や壁飾りにゾディアック・レイを打ち込み、それらを崩した。
「ぎゃあっっ!」
「うわああああぁぁっ!!」
 押しつぶされる彼らの悲鳴に背を向け、3人は再び走り出す。
「まったく。おまえのドジで、とんだことになった」
「……でもさ、目的の物は手に入ったんだし。敵のまっただなかで追われながらの大脱出なんて、ちょっと熱いシチュエーションだよねっ」
 全然懲りている様子のないレオだった。