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とりかえばや男の娘

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とりかえばや男の娘

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「そこだ!」
 レリウス・アイゼンヴォルフ(れりうす・あいぜんう゛ぉるふ)は【人の心、草の心】で敵を察知して叫んだ。
「ハイラル! アシッドミストを!」
 レリウスは、後方のハイラル・ヘイル(はいらる・へいる)に向かい、振り返りもせずに叫ぶ。
「おらよ!」
 ハイラルはレリウスが示した方向に向かって【アシッドミスト】を展開。酸の霧が木や草に降り注ぎ、潜んでいた忍び達がうめきながら姿を現す。
 動きの鈍った忍び達をレリウスは幻槍モノケロスで次々と突き刺して行った。
「こしゃくな……」
 毒を逃れた忍び達が、くないを投げかけてくる。レリウスは幻槍モノケロスでそれを次々に薙ぎ払って行った。しかし、数が多すぎる。
「あつ……っ!」
 一本のくないが、レリウスの腕をかすめていった。真っ赤な血がほとばしる。しかし、ハイラルは立ったまま槍をふるい続ける。
「大丈夫か? レリウス」
 ハイラルはレリウスに駆け寄ると【ヒール】を唱えた。
「俺は、大丈夫。それより、奴らに攻撃を……」
「分かった」
 ハイラルはうなずいて呪文を唱えた。
「氷術!」
 ハイラルの手から氷がほとばしり、忍び達に襲いかかる。
「うわ!」
 忍び達にわずかな隙がうまれる。そこをレリウスは見逃さなかった。再び槍を構えると、忍び達を次々に刺し貫いて行った。

「ああ……」
 目の前で次々と倒れて行く忍び達を見て、竜胆が小さく悲鳴を上げる。しかし、レリウスは顔色一つかえずに、次々と忍び達を倒して行った。
 その有様を見て、ハイラルは肩をすくめた。

「エグいなあ、おい。傭兵モード容赦ねえ! あいつ、最近学校生活にも慣れたし、他校のダチもできたし、結構”遊べる”ようになってきたのになあ。傭兵モードは相変わらずか……”ごく普通の幸せな人生”への道のりは、まだまだ遠いぜ。頑張ろう俺。俺が妥協したらあいつ絶対軍人街道まっしぐらだ……」
 そして、心の中で『あんま無茶すんなよ』とレリウスに語りかける。


「大丈夫? 姫様」
 目の前で繰り広げられる戦闘を見て、青ざめている竜胆を、西表 アリカ(いりおもて・ありか)は心配そうに見上げた。
「だ……大丈夫。ありがとう……」
 竜胆は、必死で心を落ちつかせようとしている。その姿を見上げて、アリカはつくづく思った。
……それにしても、本当に奇麗な人だなあ……これで、男で……しかもボクと同い年!?…なんだろう、女として何だが凄く負けた気分だよ……

 がっくりとうなだれるアリカ。しかし、落ち込んでいる場合ではなかった。彼女の鋭敏な超感覚が至近距離に迫る敵を捕らえたからだ。
「来たよ! 大吾!」
 アリカは後ろにいる無限 大吾(むげん・だいご)に向かって叫んだ。
「まかせろ! 俺が最終防衛ラインだ!」
 そう叫ぶと、大吾は竜胆を護るように立ちはだかった。
 頭上から忍者達が次々に気配を現す。そして、あちこちに枝を飛び移り、こちらの動きをを攪乱しようとしているのが分かる。
 アリカは見上げると、両手に刀を構えて叫んだ。
「獣の身体能力、甘く見ないでよね!」
 そして、大地を蹴り自らも木の枝に飛び乗る。
「生意気な!」
 忍者達がアリカめがけて襲いかかって来た。アリカは超感覚を生かしスウェーで敵の攻撃を受け流しつつ、相手の懐に飛び込んで行く。そして、二刀の構えから、乱撃ソニックブレードで攻撃!
 一方、地上では大吾がしっかりと竜胆を守っていた。
 自分の足では、忍者の素早い動きには追い付けないという事を自覚している大吾は、『なら動かなければいい。ただ、忍者の攻撃を全て防いで、銃撃を当てればいいだけさ』と、竜胆の盾に徹する事を心に決めている。
 その大吾の前方にも、忍び達が迫ってきていた。くないや、手裏剣が大吾達めがけて飛んでくる。大吾はインフィニットヴァリスタを構え、引き金を引いた。

 ダン! ダーン!

 銃口が火を吹き、投擲物が次々に迎撃してされて行く。
 しかし、忍び達もさるもの。獲物をおさめると、大吾と竜胆を中心に円陣を組み、猛スピードで走りながら少しずつ輪を縮めて行く。
「くそ、攪乱する気だな。しかし、こちらにも考えがあるぞ」
 そうつぶやくと、大吾は大量の弾をばら撒き弾幕をはった。円陣の一角が崩れる。すかさず、大吾は竜胆を連れてそこから円陣の外へと逃げ出した。
「逃がすか!」
 追いすがってくる忍びに向かい、今度はインフィニットヴァリスタを構える。そして、スナイプで、敵の頭部を狙い射撃を行う。忍びの頭が次々に破裂していく。
 そこにアリカが両手に剣を持って舞い降りて来た。そして、舞いでも踊るかのごとく、次々に敵を倒して行った。
「音速の剣舞。キミに見切る術はあるかな?なかったら…膾切りだよ!」

「退け、退けー!」
 道元が叫んだ。コントラクター達の反撃は道元の予想をはるかに超えていたらしい。
「だが、このままで済むと思うな。何を企んでおるのか知らぬが、必ず尻尾を掴んでくれるわ!」
 捨て台詞を残すと、道元は馬を駆り去って行く。その後を、生き残った忍びの者達が追って行く。
 皆、一様に胸を撫で下ろした。とりあえず、危機は去ったようだ……