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リアクション
第4章 “黒髭”
甲板を奥へと進んで行き、一段高くなった場所まで上がると、そこには美緒の姿があった。
「美緒ちゃん、こんな不祥事おこしたら、百合園退学になっちゃうわよ! うちの学校校則厳しいんだから!」
彼女に向かって、舞香が声を上げる。
「美緒、か。話しには聞いてたが会っちまうとはな……ま、仕方ない。少し手荒に脱がすが許してくれよ」
唯斗が告げながら、拳を繰り出した。
「面倒故な、纏めて薙ぎ払う」
美緒の周りに集った空賊たちを見回して、エクスは戦女神の威光を用いた光の刃を放つ。
「私も兄さん、姉さんを手伝います!」
睡蓮が構えた蒼弓ヴェイパートレイルから矢が放たれる。
「そんなの避けてやる!」
避けようとする空賊に、矢があり得ない角度で曲がり、襲い掛かった。
「なぁっ!?」
驚く空賊に矢は容赦なく突き刺さる。
「ごてごてした装備や服は、このメテオブレイカーで斬り刻んで美しい身体を見て差し上げますわ」
そう告げる魅華星の手には、斬馬刀型の光条兵器が構えられている。
彼女は美緒に向かって踏み込むと、纏う衣服や装備品のみを斬るよう選択し、刃を振り下ろした。
けれども美緒も甘んじてそれを受けるわけがなく、手にした細身剣で受け止め、流しながら交わす。
「これなら、どうです? 黒死斬!」
声を上げ、魅華星が放つのは闇黒だ。魔法による痛みが美緒の身体へ襲い掛かり、動きを鈍らせる。
「力を貸せ……ブラックブランド!!」
「貴方達に同じ『黒』を名乗る資格は無いわ! 黒印家の名の元に散りなさい!」
大助の腕に装着された魔拳ブラックブランドの甲に描かれた家紋が光り輝き、グリムゲーテは聖剣バゼラスを構える。
美緒と彼女を取り巻く空賊に向けて、大助の拳が繰り出され、大きな痛みを与えて怯ませる。
グリムゲーテが一番近い空賊へと踏み込んで、その腕へと斬りつけた後、武器から放たれた光輝が他の空賊へと襲い掛かった。
痛みを受けた空賊たちに向かって、陽太が構えた曙光銃エルドリッジから一撃、銃弾を放つ。その一撃は、空賊たちの急所を穿ち、彼らを眠らせる。
甲板の敵をあらかた片付けた鴉たちもまた、一段高くなった場所へと上がってきた。
体に刻印が現れ、黒き炎の如く禍々しいオーラを纏い、手にした刀へも炎を纏わせた信長が奥に構える美緒へと向かった。
その周りを守る空賊たちが壁を作るように踏み出すけれど、鴉と忍、和輝の3人が向かい合った。
香奈が信長へと祝福を贈る。
「そのコートやハットが怪しく見えるのじゃ!」
信長は美緒の纏うそれらを指して、声を上げた。
そして、そのコートやハットを燃やし尽くそうと、刀を振るう。
やや遅れてやってきた雅羅も、空賊のコートとハットに身を包み、学生たちへと刃を向ける美緒を目の当たりにして、彼女を止めようとバントラインスペシャルを構えた。
「お待ちください!」
メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)が声を上げる。
彼女としては、パートナーたちと共に、美緒と雅羅の2人が戦わないよう、止めに来たのだ。
ここで戦わせてはならない、と雅羅の前に立つ。
「でも、皆がっ!」
既に刃を交えている学生たちの姿を指しながら、雅羅はバントラインスペシャルを構えた腕を下ろさない。
「僕としても雅羅ちゃんと美緒ちゃんが戦って欲しくないんだよ……」
セシリア・ライト(せしりあ・らいと)も声を上げる。
(人が良いから何らかの事情により手助けをするようになった、と思っていたのですが……)
美緒の様子を察するに、そのような感じではない、メイベルとは思う。
「美緒ちゃんにもきっと理由有ってのことだろうから、その点は本人から聞きたいし、そのために戦闘は避けないと……!」
「でも、相手は戦わないつもりはないと思うのよ」
セシリアの言葉に、雅羅が美緒たちを指す。
「まずは周りの空賊たちを倒して、美緒さん1人にして、捕らえるチャンスを狙うですぅ!」
メイベルの提案に、迷いながらも雅羅は銃口を美緒でなく、周りの空賊へと向けた。
接舷して飛行船へと乗り込んできた空賊たちの中に美緒の姿を見つけられなかった健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)は、最初に見つけた甲板に居るのだろう、とパートナーと共に空賊船へと乗り込んできた。
「確か甲板に……って、広すぎ!」
船内を抜け、甲板へと出てきた勇刃はその広さに驚きながらも美緒を探して、段差を上がっていく。
「見つけた……美緒さん! 助けに来たぜ!」
声を上げた勇刃に、“黒髭”美緒は、一瞬視線を送るが、すぐに目の前の、美羽や正悟へと視線を戻した。
「美緒さん、早く目を覚ましてください!」
天鐘 咲夜(あまがね・さきや)が声を掛け、パラミタバゲットという名の、一見パンにも見える槍を構える。
「美緒様、どうかお目を覚ましてくださいませ!」
「とにかく何とかしないと!」
セレア・ファリンクス(せれあ・ふぁりんくす)と枸橘 茨(からたち・いばら)も声を掛けてから、それぞれ構えの姿勢を取る。
「すまみせんが、これも美緒さんのためです! ゆ、許してください!」
歴戦の必殺術で強化した力で、咲夜は、美緒の周りの空賊へと続けざまに槍を繰り出し、攻撃して、美緒への道を作り出した。
美緒へと近付いた茨が奈落の鉄鎖を作り出し、美緒の身体へと巻きつかせて、動きを封じる。
「健闘君、今のうちに攻撃して!」
振り返り、勇刃へと声を掛けた後、美緒の方を再び向いた茨はハッと目を見開いた。
「こ、これは!!!」
彼女は片手で己の口元を覆う。
「ん、どうした茨? 顔が青いぞ?」
帽子目掛けて、古王国時代に失われたという必殺の剣技で斬りかかった勇刃は、手を止め、青ざめた様子の茨へと訊ね掛けた。
「わ、私のより……ずっと大きいじゃない……負けたわ……」
茨の視線は、鎖により縛り上げられた美緒の胸に注目している。
「茨様、そんなこと仰っている場合ではございませんわ」
言葉もない勇刃に代わり、セレアがトゥーハンディッドソードから爆炎を放つ。
炎熱は美緒へと当たって、彼女に痛みを与えた。
「ルルール!」
小型飛空艇オイレを操縦しつつも久はルルールを呼ぶと、彼女の身体を怪力の籠手で力を増した腕を使って、持ち上げた。
「ちょ、久!? 美緒ちゃん助けるのは良いし脱がせるのは大歓迎だけど投げられるのはちょっと私嫌かなーってキャー!?」
「あのあっからさまに怪しい帽子を脱がせ! 後宝石と海賊服もだ! 脱がせんのはお手の物だろ!」
ルルールを美緒に向かって投げながら、久は声を掛ける。
「相変わらず滅茶苦茶よー! 戦闘なら兎も角、服を剥ぐなんて言うエロい事なら負けられない! 封印される前のとは言え、『最低の魔女』のアダ名は伊達はじゃないわよー!」
久に言い返した後、手を妖しく動かしながら、ルルールは美緒へと向かった。
彼女へと近付いたルルールは、念力で彼女の帽子や宝石、コートを脱がせようと試みる。
雑魚を蹴散らしながら、雅羅を追いかけてきたエヴァルトもやってくる。
そして、まずは美緒の様子を窺うことにした。
(あの帽子とコートが、着た者の肉体を乗っ取るのだろうか)
日ごろの彼女とは異なった様子を見せる美緒に、前のときの“黒髭”同様、性格が全く違う、という面を見て、エヴァルトは思う。
「こういう失礼は働きたくないんだがな……友のためだ、やむを得まい」
ぽつと呟き、腕時計型の加速装置へと触れた彼は、瞬時に美緒へと近付いて、背後に回り込むと、帽子を弾き飛ばした。
コートも脱がそうとするけれど、美緒に抵抗され、脱がすことが出来ない。
「泉さんっ!」
帽子だけでも、と彼女の反応を見るために、大声を発するものの怪訝な顔をされた上に、細身剣を振るってきた。
「コートの方か……!」
当てが外れ、エヴァルトは一度数歩下がって距離をとると、再び、コートを奪うべく、彼女に対峙する。
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