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美緒が空賊!?

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美緒が空賊!?
美緒が空賊!? 美緒が空賊!?

リアクション

(どうしたらいいかなぁ……お客さんの安全を考えると、従っとくのが無難なんだろうけどなぁ……)
 商談の帰り道、空賊の襲撃を目の当たりにしたミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)は、どうしたものかと首を傾げる。
(あれが最近幅を効かせてる『“黒髭”空賊団』かぁ……)
 窓から外を見ると、空賊船には旗が掲げられていて、それが“黒髭”だということを表していた。
(まぁ、下手に歯向かって他のお客さんに迷惑をかけるわけにもいかないし、ここは一旦相手に従って、他のお客さんを解放する様に話を向けた方がいいのかな?)
 そう思いながら、彼女は辺りを見回す。
 船頭側の展望室に居たミルディンと幾人かの乗客たちは、小型艇で早々に近付いてきていた空賊たちに逃げ場を奪われていたのだ。
「大人しくしてないと、命の保証はねえぞ!」
 乗客たちへと銃口や短剣の刃を向けながら空賊が声を上げる。
「とりあえず、そこのお前! この縄で、皆の手足を縛っとけ!」
「は、は〜い」
 指名されて、一瞬、肩を震わせながら、ミルディンは空賊から縄を受け取った。
(って、何でここまで従っちゃってるんだろ?)
 疑問に思いつつも逆転できるチャンスを待って、彼女は乗客たちの手足を縛っていく。

「あーちゃん!」
「アンネリーゼ!」
 展望室内で、笹野 朔夜(ささの・さくや)に憑依した笹野 桜(ささの・さくら)と、彼のパートナーの笹野 冬月(ささの・ふゆつき)が声を上げる。
 空賊の襲撃により起こった乗客たちの騒ぎで、アンネリーゼ・イェーガー(あんねりーぜ・いぇーがー)と逸れてしまったのだ。
 逃げ惑う乗客たちで溢れ返る出入り口の中に居るのだろうかと呼びかけるけれど、反応はない。
「やたらと砲撃に慌てている奴が多んだが、戦闘経験の無い奴ばかり乗っているのか? この飛行船は?」
 ぽつ、と冬月が呟いた。
『アンネリーゼさん、聞こえますか?』
 朔夜も精神感応を用いてテレパシーで話しかけてみる。
 アンネリーゼの反応はなく、彼女の実戦経験の少なさから、砲弾で起こる飛行船の揺れに気を取られて、朔夜の声が聞こえていないのだろう、と考えた。
 けれども彼女の反応があるまで、繰り返す。
『アンネリーゼさん!』
『……く、苦しかったですわ……』
 何度か繰り返していると、漸く反応が返ってきた。朔夜に憑依した桜と冬月が顔を見合わせる。
『人の波に押されて……どこかの通路まで来てしまったのですわ』
 アンネリーゼからの言葉に、桜と冬月は出入り口に群がる乗客たちを掻き分けて、通路へと向かった。

「おばあ様、お兄様方……」
 乗客たちの波から抜け出したアンネリーゼは、今居る場所がすっかり分からなくなってしまい、通路をさ迷い歩いていた。
 実戦経験もほとんどなく、逸れたということから、通路の先の気配を気にすることなく歩いていた彼女が、角を曲がると、そこには1人の男が立っていた。乗り込んできた空賊の1人なのだが、アンネリーゼはそれを知らない。
「これは上玉な嬢ちゃんだ」
 上から下まで嘗め回すような視線を向けてきた後、男はアンネリーゼへと手を伸ばす。
「大人しくしろ!」
「きゃああっ!」
 伸ばした手と反対の手で、短剣を握った男の行動に、不安や怖さが込み上げて、アンネリーゼは悲鳴を上げるとその場にうずくまった。
「あーちゃん!」
「アンネリーゼ!」
 通路に、アンネリーゼを探す2人の声が響く。
「折れると行動に支障が出る部分の骨を私の攻撃でブチ折られても文句は言えませんよね?」
 そして今まさに、彼女へと伸びようとしていた空賊は、死角から姿を現した桜の憑依した朔夜から強力な拳を叩き込まれた。
「ぐはっ!」
 2、3の骨の砕ける音と共に、仰け反る空賊に向かって、氷塊が飛んでくると、腹や頭にぶつかる。
 それらの攻撃を受けて、空賊は仰向けに倒れた。
「……切り殺さないだけありがたく思え」
 気絶した空賊に、冬月が声を掛けている間に、うずくまっていたアンネリーゼが顔を上げ、2人の姿を見て駆け寄っていく。
「おばあ様、お兄様方!」
「あーちゃん!」
 桜の憑依した朔夜が、アンネリーゼを抱きとめる。
『良かったです』
 朔夜も内から声を送った。
「また空賊が来るかもしれない。何処か避難しておけそうなところを探すか」
 冬月の言葉に、桜たちは頷いて、通路を歩き出した。

 雅羅と共に空賊船へと向かったパートナーを見送って、フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)は客室へと足を向ける。
 飛行船に残っている者たちで、空賊の襲撃から身を守れる者も居るだろうけれど、念のため、という言葉もある。
「誰かが人質にとられるようなことがないようにしませんといけませんわ」
 呟いて、フィリッパは客室の並ぶ通路を見回した。
 襲撃と共に、非常事態を告げるアラームが鳴り響いたのもあり、通路に出て居るような乗客は見当たらない。
 皆、客室に篭っているのだろう。
 そう考えつつも、空賊が襲撃してきたときに備えて、彼女は通路を見て回った。

 一方、もう1人のパートナー、ステラ・クリフトン(すてら・くりふとん)はというと、襲撃のセオリーの1つ、操縦関係の制圧があると見て、飛行船の機関室へと向かっていた。
「きっと守っていれば応援がくるまで持ちこたえられるでしょう」
 機関室の前まで辿り着き、まだ中まで、空賊がやってきていないことを確認した彼女は、目の前で真澄のマシンガンを構える。
 内部にある所為か、外の様子が分からないため、空賊が乗り込んできたのかも分かりにくかったが、彼女はひたすら、守り続けた。