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美緒が空賊!?

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美緒が空賊!?
美緒が空賊!? 美緒が空賊!?

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第2章 飛行船へ急げ

 “黒髭”の手配書付ポスターや飛行船襲撃の知らせを聞き、チャーター便がラズィーヤによって手配される。
「あの空賊たち、性懲りもなくまた……! もう許せない! 一人残らずやっつけて壊滅させてやるわ!」
 それに乗り込んだ桜月 舞香(さくらづき・まいか)が意気込みを見せた。
「狙うは美緒ちゃんのみ、事件解決にはボスを退治しないとね!」
 葦原 めい(あしわら・めい)も意気込んで、そう告げて、パートナーの八薙 かりん(やなぎ・かりん)と共に、手配された船に乗り込んだ。
「心根が優しい美緒が本意で海賊家業をしているとは信じられませんわ。恐らくは黒ヒゲの催眠術か暗示の類、もしくは黒いコートやドクロハットなどが呪的なアイテムが原因と予想するのが妥当だと思われます」
 キュべリエ・ハイドン(きゅべりえ・はいどん)が告げる。
 出かける前に彼女は、“黒髭”を私掠船のような国家が後ろ盾に付いた空賊として有象無象の空賊達をまとめてタシガンの治安を維持する役に就けてはどうだろうか、自由気質な空賊達をまとめるには同じ空賊こそが相応しい。
 ……そう、ラズィーヤに進言する。
 更に、“黒髭”ほどの空賊は、使い方によっては百合園やシャンバラの国益に叶う者であること、タシガン空峡というポイントはキマクの恐竜騎士団の横っ腹を叩ける位置でもあり、空賊との繋がりを持つ事は将来的に悪い話ではないことも告げた。
 タシガンの新エネルギーの絡みでタシガン空峡の治安を維持することも必要だと、キュべリエは見ている。
 残念ながら、ラズィーヤの管轄は、ヴァイシャリーであり、タシガンの政に口を挟むことが出来ないのだが、自分の管轄内で出来ることであれば、と応えてくれた。

 仲間の乗り込んだチャーター便を見送った七瀬 歩(ななせ・あゆむ)は、先日のことも踏まえて、モナミへと話を聞きに足を向けた。
「モナミちゃん、体調大丈夫? これお見舞いの花ね」
 数週間というときが流れているとはいえ、トラウマになってしまっていてはいけないと、歩は話を切り出すのに、慎重になる。
「ありがとう」
 見舞いの花を受け取ったモナミは、歩から話が切り出されるのを待っていた。
「……えっと、モナミちゃん、美緒ちゃんのことって聞いてるかな?」
 噂では、と頷きながら応えるモナミに、彼女は更に踏み込んだ話を切り出す。
「前に空賊の船に乗ってた時に何か覚えてることないかな? 美緒ちゃんが同じコートを着てたみたいなんだけど、コートに心当たりない?」
 訊ねる歩に、モナミは眉を寄せた。
「コートを着せられたと思ったら意識を失って、それ以降の記憶が全くないの。気付いたら、ベッドの上だったわ」
 残念ながら、話せることがない、と首を横に振る。
「そう。ありがとう、お大事にね」
 歩はそれだけ質問すると、モナミの病室を出た。そして、仲間へと電話をかける。


 刻は少し遡る――。
“黒髭”の名前に、英霊が関わっているのではないだろうかと考え、生前の犯罪者に今でも通じることを示したくないと考えた安芸宮 和輝(あきみや・かずき)は、パートナーと共に聞き込みをして回った結果、近くの空域を小型飛空艇に乗り、見回っていた。。
「黒髭って……記録が無いが為に本当に居たかどうかわからない稔とは違って、そのような二の名を待つ英霊がいましたわね」
 小型飛空艇を操縦しながらクレア・シルフィアミッド(くれあ・しるふぃあみっど)がぽつりと呟く。
「そうですね……本当に英霊なら、私のように名乗っても良いものですが……」
 ぐさり、と何かが突き刺さるように感じながら、安芸宮 稔(あきみや・みのる)が苦笑いを浮かべて頷く。
「まあ、本物の黒髭とかになると……生前の力からすると、運良く3人がかりで当たっても木端微塵になるのが見えてますし、取り巻きもそれなりに強力でしょうから……」
「見つけても、まずは様子見ですね」
 稔の言葉を受けて、和輝が頷いた。

 そして、彼らは今まさに、飛空船へと砲撃しようと接近する空賊船に出会う。

 飛空船に雅羅を始め、学生たちが多く乗っていることを知らない和輝は、空賊船の規模の大きさに、3人で挑むのは無謀だと見定め、一度上空に退避することにした。
 その間に、無線で飛行船に向けてアラートを送るけれど、それに反応があるより早く、砲弾が飛行船を襲う轟音が辺りに響く。
「シルフィー!」
「はい!」
 その音を聞きながら、空賊船の上空まで辿り着いた和輝たちは、増援が来るまでの足止めにかかった。
 少しばかり高度を下げ、空賊船の船先に向かって、クレアが酸の霧を発生させる。
 甲板に出ていた空賊たちが突然発生した霧、更にそれに当たると服が溶け、痛いということに驚き声を上げた。
 そこに和輝たちが一気に突っ込んで、甲板に用意していた大量のねずみ花火を撒き散らした。
「何だっ!?」
 突然現れた小型飛空艇に驚きながらも空賊たちは拳銃等から発砲する。
 稔の防御の力で多少の痛みは防ぎながら、クレアが氷と炎を一度に放つと、和輝たちの乗った小型飛空艇は再び上昇した。
 氷の飛礫は空賊たちへと当たって痛みを与え、炎は花火へと点火して、甲板を勢い良く跳ね回り始める。


 十田島 つぐむ(とだじま・つぐむ)は、パワードスーツ用外部空戦オプション『スカイユニット アエロー』を完成させ、パートナーのミゼ・モセダロァ(みぜ・もせだろぁ)ガラン・ドゥロスト(がらん・どぅろすと)を仮想の敵として性能テストをしようとしていた。
「真珠は〜?」
 もう1人のパートナー、竹野夜 真珠(たけのや・しんじゅ)が何をすればいいか訊ねる。
「デジタルビデオカメラで、映像を記録してくれ」
 2人と場所を考えたりする合間に、つぐむが答える。
「ぶ〜! つぐむちゃん、真珠だってもう少しつぐむちゃんの役に立つんだよ?」
 自分だけ退け者にされているようで、真珠は頬を膨らませるけれど、つぐむは彼女が何故膨れているか分からないまま、テストする場所へと向かう。
 ガランは六連ミサイルポッドを装着し、ミゼも構えて、準備完了、というところで、アラートがなった。
「つぐむちゃん、近くを飛行中の飛行船からSOSだよ〜!」
 真珠が声を上げる。
「ふむ。どうせなら実践テストと行こうか」
 丁度いい機会だ、とつぐむは『スカイユニット アエロー』の性能テストの場を飛行船へと移すことにした。


「ふふっ、ふふふ、あれだけやったのにまだ懲りない輩がいるみたいね。それともやっぱり船を沈めるくらいじゃ足りないのかしら?」
 飛行船襲撃のニュースを聞き、シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)が笑みを零す。
「そうよね、人様の物奪ってるんだからちょっとやそっと奪われたからって怯みはしないってことね。じゃ……1つしかないもの奪ってあげる。今度は一人も生きて帰さないから覚悟しなさい!」
 そう意気込むと、アストライト・グロリアフル(あすとらいと・ぐろりあふる)に空賊を襲撃してくる旨を告げ、彼女は家を出た。
 それより少しばかり時間が経過してから、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)がアストライトの元を訪れる。
「空賊なんて聞いたらフィス姉さんが黙ってるわけないし、ツァンダ方面だからあんたも動いてるだろうと思って来てみたけど予想以上に出遅れたみたいね。姿が見当たらないってことはフィス姉さんはもう行ってるんでしょ?」
 ニュースを聞き、既に出立準備の整ったアストライトに、シルフィスティが出向いたことを聞くと、リカインは一息吐き出す。
「またあんなことにならない内に何とか納めないと……」
 呟くリカインが思い出すのは、飛空艇内で散々暴れまわった挙句、共に落ちかけたことだ。
「俺もあの時の二の舞はゴメンだ」
 苦笑を漏らしながら応えるアストライトと共に、リカインは出発する。
 目指すは、空賊船に襲われた飛行船だ。

(鬱陶しい黒髭どもをぶっ飛ばして、何か貰って行ってやる。食費で家のほうやべぇし。美緒も助けないとだしな)
 そう考えた夜月 鴉(やづき・からす)は、桜葉 忍(さくらば・しのぶ)佐野 和輝(さの・かずき)へと声を掛け、【黒衣の義賊】の名の下に、“黒髭”の空賊船へと向かうことにした。
「義賊の真似事をするのもたまには良いかな」
 向かいながら、忍が呟く。
 義賊といえ、やることは犯罪に近いことに違いはない。
 面が割れないように、と彼らはそれぞれダッフルコートを目深に被ったり、仮面を付けるなどして顔を隠してした。
 出撃前に魔鎧であるパートナーのスノー・クライム(すのー・くらいむ)が和輝へと纏いながら、その姿を変えていく。
 手首と腰にベルトのついたロングコートは、口元が隠れるほど襟が長い。
 彼の顔の下方を隠すには充分な長さであった。
「この前は、私が黒髭を従えていた百合園生を倒したと思ったら、今度は美緒が黒髭の空賊を束ねておるとはな」
 ミルキーウェイを駆りながら織田 信長(おだ・のぶなが)は、先日のことを思い出した。
「香奈は無茶をせずに俺の後ろで回復と補助魔法をやってもらって、信長は何をしでかすか判らないからな〜」
 その傍らで、オーロラハーフに乗る忍がどう襲撃するかを考える。
「忍、香奈よお前達は鴉や和輝達が無茶をせぬようにサポートをするのじゃぞ!」
 考えている忍の言葉を待たず、そう告げる信長に、
「よし、信長の好きにさせてあげるのが良いな」
 忍は考えるのを止めて、そう答えた。
「私はしーちゃんや信長さん達と違って戦うのが苦手だから、足手まといになるかもしれないけど、後ろから回復や補助を使って一生懸命頑張るからね」
 2人の様子に笑みを浮かべつつ、東峰院 香奈(とうほういん・かな)が言う。
 高度を取り、一行は“黒髭”の空賊船の上空までやって来た。
 パートナーのアニス・パラス(あにす・ぱらす)と共に、小型飛空艇に乗った和輝は、鴉へと視線を送る。
 パートナーの伊達 正宗(だて・まさむね)が駆るフクロウの名を持つ小型飛空艇オイレに同乗していた鴉は、視線を送ってきた彼に頷き返すと、もう1人のパートナー、アルティナ・ヴァンス(あるてぃな・う゛ぁんす)と共に魔法的な力場を用いて、高速ダッシュで空賊船へと向かう。
 忍や和輝たちもその後へと続いた。