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第八章 水被って絆深まる


三者三様に集客を競い合って数時間後、瑛菜、リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)サフラン・ポインセチア(さふらん・ぽいんせちあ)ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)ジョン・ポール・ジョーンズ(じょんぽーる・じょーんず)エリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァ(えりしゅかるつぃあ・にーなはしぇこう゛ぁ)シルヴィア・セレーネ・マキャヴェリ(しるう゛ぃあせれーね・まきゃう゛ぇり)が水棲生物ショーをするということで、一時休戦となった。
「みなさん、ようこそ〜!」
「最後まで楽しんでいってくれよー!」
海岸に集まった面々に進行のローザマリアと瑛菜がお辞儀をすると、周りは拍手に包まれた。
「まずはショーの主役、サフラン君とシルヴィアちゃんの登場です!」
クルクル回りながらあいさつのダンスを披露するサフランの背には、ウェットスーツの上から水兵用のセーラー服を着たジョンが跨り、シルヴィアの背にはフリル付の衣装を身につけたエリシュカが跨っており、息ピッタリのダンスに観客は拍手を送った。
「まずは……ジャンプだよな!」
「ええ。みなさん、水がかかるの覚悟でご覧下さいねー!」
リアトリスが右手を下ろして高く上げたとたん、サフランとシルヴィアはクロスして高くジャンプした。
水しぶきが容赦なく列の前にいた観客にかかり、そこかしこに悲鳴が上がる。
それでもジョンとエリシュカの二人がにこやかに手を振ると、つい振り返えしてしまう客も何人かいた。
「よーし、盛り上がってきたなー!」
「次は輪くぐりよ。リアトリス、準備はいい?」
「はい!」
輪の準備をしたリアトリスが指笛を長く吹いてゴーサインを出すと、まずはサフランが輪の中へと飛び込んでいった。ついでシルヴィアが飛び込む。
それを何回か繰り返した後、ローザマリアがサイコキネシスで宙に浮かせた輪へと大きくジャンプして潜った。
「わっ! ジャンプに続いてみんな水浸しだな!」
「これがショーの醍醐味というものよ。さあっ、次はテールフォーク!」
リアトリスが短く指笛を吹くと、サフランとシルヴィアは前や後ろにとテールフォークをして見せた。
「おおっ、器用だな!」
「サフラン君とシルヴィアちゃん、ここで集まった皆さんと遊びたいみたいね」
「客席チラチラ見てる……。よしっ、あんたと……そこの……そう、あんた! こっちに来な!」
瑛菜に指名された男の子と女の子が前まで来ると、リアトリスが優しくボールを手渡した。
「君はサフラン君に、君はシルヴィアちゃんに、弧を描くようにボールを投げてあげてね。大丈夫、怖くないよ」
リアトリスに誘導され、子どもたちが所定の場所に立つと、リアトリスは手を二回叩いた。
緊張した面持ちでボールを投げた子どもに、固唾を呑んで見守る観客。
すると、口でボールをキャッチしたサフランが、尾びれでボールを突付いて返した。
シルヴィアは口でボールをキャッチすると真上に投げ上げ、自らジャンプしてヘディングのパスをして子どもに返した。
最初は表情が固かった子どもも、ジョンやエリシュカが手拍子をしだし、それに呼応するように観客も手拍子をしだしたのを聞いて表情を緩めていった。
「二人とも上手じゃん! 息ピッタリだったよな?」
「本当にね。応援してくれた皆もありがとう。感謝をこめて、協力してくれた二人にはサフラン君とシルヴィアちゃんがプレゼントをお贈りするわね」
男の子にはヨーヨー、女の子にはロケットが渡され、はぐされた子どもたちは嬉しそうに笑い声を上げた。
「みんな、楽しんでくれたかー?」
「鑑賞してくださった皆さん、ショーに協力してくれた子どもたち、ありがとうございました!」
「最後に、サフラン君とシルヴィアちゃんに盛大な拍手をお願いします!」
リアトリスがお辞儀をすると、サフランはひれを使ったバイバイのダンスをし、シルヴィアは立ち泳ぎをしつつ胸びれを振って会場のみんなに別れを示した。
海岸全体は拍手に包まれ、最初に企画したリアトリスは、
(ローザマリアさん達と水泳の訓練した甲斐があったよ……! 嬉しい!)
「キュイキュイ〜♪」
「キュイッ♪」
サフランとシルヴィアも喜び合い、ショーは閉幕したのだった。



ショーが終わると一緒に盛り上がった余韻からか、対立してた三組は海辺に互いの料理を持ち出し、宴会を始めた。
「ビール、うま〜っなのだ!」
「飲みすぎないようにしてくださいよ、屋良さん。花音は飲んじゃダメです!」
「だって……おいしそうだったんだもんっ!」
黎明華の隣でこっそりジョッキに手を出そうとしてた花音を注意したリュートがため息を吐く向かいでは、
「ミルディアちゃんのハーブメンソール、おいしいです。ずっと外にいたからスーッとして爽快な気分になります」
「それは良かった♪」
貴仁がミルディアが作ったかき氷をすくっては口に運んでいた。
「う〜ん、ZZZ……」
お腹がいっぱいになったのか、眠っている伏見明子(ふしみ・めいこ)の傍らでは、
「この狼、ビーフジャーキーが好きみたいですわ!」
「イコナちゃん、気をつけてね」
ティーに心配されながら、イコナに餌付けされてる獣人のサーシャ・ブランカ(さーしゃ・ぶらんか)の姿があった。
「お疲れ様、常闇。立ちっぱなしで疲れたんじゃないか? 足氷水借りてきたから」
「……あ、ありがとうございます、佐野様」
「そこの二人も……、それに兵学舎以外の海の家で調理してた者も、良かったら浸かるといい」
「……む。かたじけない」
夜月にティーにイコナ、そこに逢が加わり、和輝と談笑する様を見たアッシュとナナはお互い向き合った。
「まあ、せっかくの海開きだしな」
「これも青春の一ページ、ということですわね?」
アッシュの前にそば飯、ナナの前に焼きそばを互いに差出し、二人は笑った。
フロッギーさんがギターを奏でだすと、それに便乗したローザマリアと瑛菜も加わり、賑やかな音楽とともに夕日が海のかなたへと姿を消していった。
「俺たち……すっかり忘れられてるー!」
と、どこからか檻に入れられた夏の勇者たちの、そんな悲壮な声がしたとか……しなかったとか。

担当マスターより

▼担当マスター

有野 幸

▼マスターコメント

 ここまで読んでくださってありがとうございました。有野幸と申します。
 皆さんのアクション、楽しく読まさせていただきました。
 個人的に夏の勇者に立候補する方々が多いのでは……と思いきや、なんとご覧の通りの結果になりました。
 逆に防止隊立候補者の多さに驚いてしまいましたよ。
 しかしながら、夏の勇者の方々がいなければタイトルの「ご注意を」にならないわけですから! 
 参加してくださった方々を代表して、勇者の方々に敬礼をしつつ……、ありがとうございましたッ!

▼マスター個別コメント