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Blutvergeltung…悲しみを与える報復

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Blutvergeltung…悲しみを与える報復

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第5章 自分の死期・・・それは・・・

「やっちゃんと芽美ちゃん発見!お〜い、こっちだよ〜」
 何やらゲソッ・・・とした顔の霧雨 泰宏(きりさめ・やすひろ)と、いつも通りクールな月美 芽美(つきみ・めいみ)を見つけ、緋柱 透乃(ひばしら・とうの)がブンブンと手を振り呼ぶ。
「どうしたのかな・・・やっちゃん。なんか元気ないね?」
 彼と対照的に研究所の近くで休憩したとおのたちは元気いっぱいだ。
「それが・・・。なんか大変なモンを研究所の辺りで見てしまってな」
「え〜、なんかスゴイのでもあったわけ?」
「他の方たちが全部破壊してくれましたから、驚きそうなものはなかったような・・・」
 今にも口からリバースしそうな彼の様子に、緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)は不思議そうに首を傾げる。
「壊されたのには違いないと思うが・・・。しかもかなりめちゃめくちゃに・・・、・・・・・・うぇっ」
 その光景を思い出した泰宏は顔面を蒼白させた。
「う〜ん。なんだかよくわからないけど。とりあえず早く封神台の中にいそごうよ!もう先に入ってる人もいそうだし?」
「入らずにどこかで様子を見てるやつもいそうだけどね」
「ねぇ芽美ちゃん、それって誰のこと?」
「行けば分かるわ」
 “もう黙る時間よ”、と芽美は唇に人差し指を当てて曇天の隠気を纏い、封神台へ忍び寄る。
「(すでに何人か中に行ったかもしれないけど。向こうもいるとは限らないのよね・・・。でも・・・こっちにとっては、探す手間がはぶけていいわ)」
 魔女の注意が縁たちに向いている隙に、4人は八卦型の台に乗り封神台の中へ侵入する。
「ベアトリーチェ、私たちも入るわよ」
「はい、美羽さん!」
「レキ、この隙に突入するアル!」
「よぉし、いっくよーっ」
 2人は敵に気づかれないように小さな声音で言い、光学迷彩で姿を隠しながら駆け込んでいく。
「八卦型の台が光ったわ!?」
「ありゃりゃ〜、また誰か先に入ったようだねぇ?」
「妨害しているようで、全然守れてしないようですね。いい加減退いたらどうです?」
「冗談じゃないわ!ただ失敗に終わっただけじゃ、それこそ不老不死にしてもらえなくなっちゃう!」
 さらりと無自覚に刺すように言い放つレリウスに、ムキになった魔女がブリザードで彼を吹き飛ばそうとする。
「―・・・・・・うぁっ」
「おっと、転んだら集中狙いされるぞ?」
 転びそうになる彼をハイラルが両腕でガシッとキャッチする。
「俺らも行くぜ!待ってろよ・・・董天君。今度こそおまえに勝ってやるっ」
 李 ナタは想い人に挑むため、仲間と共に封神台の中へ突撃していく。
「(何もたついているのよ、見つかっちゃうわよ!)」
 なぜか入ろうとしない高月 玄秀(たかつき・げんしゅう)に、ティアン・メイ(てぃあん・めい)が手招きをする。
 彼は先に行ってよ、と杖を振る。
「(ちょっと一緒に行かなきゃ・・・。あぁもうっ、仕方ないわね!)」
 声には出さないものの、ティアンは口パクで怒鳴ったように言い、先に入っていた。
「(はぁ。やっと先に入ってくれましたね)」
 彼女の姿が見えなくなったのを確認した玄秀は式神 広目天王(しきがみ・こうもくてんおう)を召喚する。
「む・・・玄秀様。なぜ、このようなところに我を?」
「ちょっと手伝って欲しいことがありましてね。それと、ティアンがいるから姿を隠しておいてください」
「―・・・ご命令とあらば・・・」
 主に命じられるがまま隠形の術で姿を隠す。
「なんだかアジトに寄っている隙に、先に行ってる連中が多そうだな」
 森の木々の傍から大石 鍬次郎(おおいし・くわじろう)は封神台の回りの戦況を見る。
「いいじゃねぇか。オレ様たちが研究所を出たのが先だとしても、こうやって寄り道して後から入ることもあるんだしな?」
「そうですよぉ〜、相手と鉢合わせしなくてもいいですしぃ〜?」
 ポジティブに考えればいいじゃん、という態度の王天君と趙天君に、ここで考えても仕方ねぇか・・・と封神台に向かって走る。
「あいつ・・・あのキツネじゃないのか?」
「そんな、もう中にいると思ったんだけど!?」
 天神山 葛葉(てんじんやま・くずは)の姿を発見した真と左之助がぎょっとした顔をする。
「せいぜいそこで遊んでるといいです」
「行かせるか!」
 アルティマ・トゥーレの冷気をチョロチョロと逃げる天神山に放ち、両足を凍結させる。
「これで大人しくして・・・って、そんな・・・気絶しないなんて!?」
 実力行使で彼女の両足を使い物のにならなほど蹴り砕き、首に手刀をくらわしたが・・・。
「まったく痛くありませんね?フフフ・・・・・・」
 彼女は平然とした様子でニタリと笑みを浮かべて真を見上げる。
「ここには僕の生きる源が沢山ありますね。それが、何を意味しているか・・・分かっていますよね?」
 ぐるりと振り返りペタ・・・と彼の片腕に手を当てたかと思うと、爪を突き立て・・・。
「真、そいつから離れろ!」
「―・・・くっ、あぁああ゛!?」
 ザシュウゥウッ。
 深々とめり込ませて引っ掻く。
「俺が負わせた傷まで回復するなんて・・・」
「僕はあの研究所で不老不死の体になったんですよ?不老不死を求めれば、そんな痛い思いをしなくていいのに・・・。どうして否定するのか僕には理解できませんね」
 痛む腕を押さえる彼を眺めてクスクスと笑い、王天君たちが封神台の中へ入ったのを確認すると彼女も侵入した。
「あらあら〜、壁役の子たちが倒れちゃっているわ」
 王天君の傍に居るドルイドの魔女たちが、傷ついた仲間たちを命の息吹で癒す。
「うわっ、大佐さんまで回復させちゃったわけ!?」
「えぇ・・・私たちからのサービスなの♪じゃあねぇ〜」
 投げキスをしてやると、ウキウキとスキップをしながら天神山の後に八卦型の台に乗り、中へと転送されていった。
「―・・・あっ!!あの男・・・っ。こら、待ちなさい!」
「待てと言われて、本当に待つバカがどこにいるんだ?ばいばーい、カティヤちゃん。今度は病原体にまみれて不幸になりたいのか?あははは!!」
 大佐に阻まれリベンジ出来ない彼女に、ゲドーがわざとらしく手を振る。
「くぅ〜っ、今度会ったらただじゃおかないんだからーーー!」
 封神台に入ってしまった彼に焼かれたお返しなんて出来ず、悔しそうに足を踏み鳴らす。



 草むらの影でじっと息を潜めていた芽美たちは十天君たちの行く手を阻み、不老不死の法を教えてくれる主を守っている魔女に襲いかかる。
「―・・・わざわざ後からのこのこ来るなんてね」
「こいつら、私たちの仲間を殺したヤツだわ!」
 腕を圧し折られ悲鳴を上げる仲間の声に気づき、迫り来る死を鉄のフラワシでガードする。
「殺して何が悪いの?そんなヤツに協力して犬死にするほうがいけないんじゃないの」
「あいつ激ムカツク〜っ。あの女から始末しやろうよ」
 さも当然のように言い放つ芽美を、コンジュラーの魔女がビッと指差す。
「そうね。そのつもりできてくれないと、こっちもつまらないわ」
ダッシュローラーのスピードに神速を乗せ、蹴り砕こうと魔女の頭部を狙う。
「ちっ・・・」
 またもや鉄のボティーに防がれた彼女は舌打をする。
「私を殺すんじゃなかったの?燃え尽きちゃなさいよ、ばぁ〜か♪」
 焔のフラワシを降霊した魔女は芽美の周りを囲ませ、火炎の竜巻のようにぐるぐると回らせる。
「速さが自慢のようだけど。囲んじゃえば終わりねぇ〜?」
「ここはおまえらに任せたぜ!」
「私たちは妖精を探しにまいりましょう」
 十天君はハツネたちを連れて、妖精アウラネルクの記憶が再現された森の奥深くへ侵入する。
「あぁ〜、こいつら!秦天君を逃がしたやつらだよ」
 グレンたちの姿を発見した透乃が声を上げる。
「透乃ちゃん、今はそっちにかまっている場合じゃないですよ」
「うん・・・」
 3人をひと睨みすると、魔女の方へ視線を戻す。
「久々にこいつでやっちゃおう♪」
 斧の光条兵器でパートナーをいじめる魔女の胴体を薙ぐ。
「えぇー!?なんで生きているの!」
「フン、光条兵器は魔法攻撃なのよ?そう簡単に切れるはずないじゃないの。でも、ちょっと痛かったから、お仕置きしてあげる♪」
 小ばかにしたように笑い飛ばし、氷像のフラワシを透乃に抱きつかせる。
「はなしてよ、ばかぁあ!!―・・・うぅ、ちべたいよぉ〜っ」
「私の透乃ちゃんから離れてっ」
 キレた陽子は、フラワシを使役している者を切り刻もうと鎖を振る。
 ジャララララッ。
「離さないなら優しく殺してあげません」
「やれるものならやってみればぁ〜?」
「死んでください!」
 仲間が放ったアシッドミストの霧に隠れた魔女を簀巻きにし、鎖を引き原型が分からないほどミンチにしてやった。
「―・・・ハズレよ♪」
 ・・・はずだったが、それは鉄のフラワシだった。
 霧の中で盾にして鎖から逃れたのだ。
「そっちの小娘ももうすぐ、ミディアムにでも焼きあがるかしら?」
「この高飛車女・・・。調子こいてんじゃないわよ」
 ドドドガガッ。
 コンジュラーの身体を殴り、骨を徹底的に粉砕する。
「透乃ちゃんと芽美さんの美肌が!?って、そんなこといってる場合じゃないな」
 フラワシどもがぴたりと止ったのを見た泰宏は、リカバリーで2人を治してやる。
「なんだ?魔女たちがいきなり苦しみだしたぞ。陽子さんのアボミネーションのせいか?」
「いえ、私はそこまで畏怖を放っていませんが・・・」
「じゃあ・・・どうして。・・・ぁっ、なんだこれ・・・急に体が痛みだしたんだが。もしかして封神台に入った影響か!?」
 立てないほどの激痛が身体に走り、泰宏は草の上へ倒れこんでしまった。
「(―・・・どこだここは。私は封神台の中にいたはずだ・・・)」
 彼がやっと目を開くと、信号機の前に佇んでいる。
 チカチカと青信号が点滅し赤に変わった。
「(なっ!?赤信号なのに、じーさんが独りで歩いてるぞ!)」
 よくありがちな光景だが、驚いた彼は老人を助けようとするが、道路を走り始めた車に阻まれる。
 老人はよたよたと歩きながら横断歩道を渡ろうとしている。
 自分の家が分からないのか、車が傍を通り過ぎているのにも関わらず、ぴたりと足を止めてしまった。
 プップーッ!!と鳴り響くクラクションの音にも気がつかずにトラックに轢かれ、そのまま何メートルも引き摺られる。
 何事かと車を止めた人々が老人を囲む。
 人々の間をかきわけて泰宏が覗くとそこには・・・。
「このじーさん・・・わ、私なのか!?」
 老いた彼の姿が道路にぐったりと横たわっている。
「私の最後はこんな死に方か・・・?こんなボケたヤツになって轢かれて死ぬなんて・・・うぐぁああっ」
 ガリガリとアスファルトを引っ掻き、苦しみもがく。
「しっかりしてください、やっちゃん。これは本当の死期でなく、偽りの死期なんですよ!」
 しかし彼はどこかへ飛ばされたわけではなく、陽子たちからは草の上でもがいているように見えている。
「私もなんだか苦し・・・・・・うぐっ・・・」
「透乃ちゃんまで!?」
「―・・・私、どうして布団の中にいるの?陽子ちゃん・・・陽子ちゃん・・・どこにいったの?」
「私はここにいますよ!ただの幻影で、現実じゃないんですからっ」
「どこいったのかな・・・、イタッ」
 頬をぽりぽりと掻いたとたん傷をつけてしまい、ツー・・・ッと血が流れる。
「消毒しておけば止るかな。えーっと、救急箱は・・・あっ」
 つるりと足を滑らせ膝を擦りむき、じわりと血が滲み出る。
「むー・・・もういいや。ティッシュで止血しよっと。―・・・あれっ、全然止らない・・・。どうして・・・」
 たが血は止る気配はなく、なかなか止らない。
「テーブルの上にご飯がある!私のために陽子ちゃんがつくってくれたのかな?いっただきまーす」
 傷なんてご飯食べてれば治っちゃうかも、と頬張ると口の中がぬるりとした。
「夏だから腐っちゃったのかな・・・。ん・・・」
 口の中に指を入れてご飯粒を取り出すと、真っ赤に染まっている。
「何・・・これ。え・・・口から血が!?えぇ〜ん止らないよ陽子ちゃん!助けてぇえ、やだぁあ!こんな死に方いやだよぉお!!」
 戦場で死ぬなら本望なのだが、白血病を発症して独りぼっちで死ぬなんて嫌だよぉおっと泣き叫ぶ。
「そんな・・・幻影に負けないで2人とも!―・・・うぅ。私もなんだか、目がちくちく痛み出してきました・・・」
 陽子は息を荒くして胸元に手を当てて俯く。
「―・・・透乃ちゃん、誰ですかその人・・・」
 顔を上げるとそこには愛する人が、見知らぬ誰かが抱き締めあっている。
「後数日で目が見えなくなって死ぬ陽子ちゃんといるよりも。もっと長生きしてくれる人といたいんだよね」
「でもまだ私はまだ生きています!お願いです、私を捨てないで・・・」
「やっちゃんと芽美ちゃんが、陽子ちゃんの面倒みてくれるってさ。じゃあ、残りの余生を楽しんでね♪」
「あぁああぁあ!!いやぁああ、私を見捨てないでー!私の透乃ちゃんを奪わないで、取り上げないでっ。そんなやつ殺してやります・・・私が殺してやりますからぁああ!!だから・・・戻ってきて・・・・・・」
 視界も命も失い、大切な人を横取りされた最後・・・。
 心臓が引き裂かれてしまいそうなほど、酷い死期を見せつけられた陽子は鎖を振り回して暴れる。
「ちょっと皆、偽りの死期に惑わされないでよ」
 軽く叩けば正気に戻るかしら?と3人に近づいた芽美だったが、背後から突然腕を引っ張られる。
「まさか、魔女の方が先に復活しちゃったの?―・・・あなたは・・・!?」
 そいつらではなく何者かに腕を引っ張られ、殺気看破でも探知出来なかったのに違和感を感じて相手をじっと見つめると・・・。
「昔の私っ!?」
「なんだかあなた・・・とても幸せそうね?英霊となった私だけ幸せなんて許せないわ・・・」
「あぁ・・・、いやっ。そこはもういや・・・。連れて行かないで・・・やめてぇええ!!」
 いつも冷静なはずの芽美が突然叫び声を上げた。
 幽閉されていたチェイテ城に連れて行かれ、窓も扉も全て漆喰で塗り固められた小部屋へ放り込まれる。
 そこは僅かな光も届きそうにないほど真っ暗な、エリザベート・バートリーとして死んだあの場所だ。
 トイレすらもなく、不自由な最低な空間・・・。
 虐めるターゲットはもちろん1人もいない。
「今はパートナーと暮らしていても、その若い血を欲して浴びたくなるはずよ。アイアンメイデンの中へ閉じ込めてね」
「いやいやいやっ。私は2人にそんなことしたくないわ!」
「どうかしら?また罪人として幽閉されて死ぬのがあなたの運命だと思うわ。英霊になろうとも、同じ死に方しか出来ないんじゃないかしら?」
「私・・・皆ともっと一緒にいたいのよ。こんな死に方はもういや・・・。ここから出して・・・」
 自分が幽閉された日のループを見せられ、がっくんと冷たい床に膝をつき動けなくなってしまった。
「―・・・・・・っ。ここは封神台の中のはずです、しっかり自分を保たなければ・・・」
 生きる気力と大切な人が裏切るはずなんてないという気持ちのおかげか、他の者たちよりも早く陽子は正気を取り戻した。
「透乃ちゃん芽美ちゃん、やっちゃん!早く正気に戻ってください、魔女が起き上がる前に倒しましょう!」
「誰が、誰をですって?」
 芽美が仕留め損ねたドルイドが命の息吹で傷を癒そうとしている。
「あら、今私に何かしようとしたら。その前にあんたの仲間の体に、穴が空くことになるわよ。声も出さないでね?苦しむ姿を眺めるのも面白いし♪」
「(これじゃ手が出せません・・・。皆・・・早く正気を取り戻してください!)」
 崩落する空をくらわしちゃうから、と脅す魔女のせいで3人の傍にいって声をかけることすら出来ない。
 ドルイドが魔女たちを治してしまうのが先か、透乃たちが正気を取り戻すのが先か・・・。
 陽子に出来ることといえば、相手に隙が出来る瞬間を待つことだけしかなく、今すぐにでも引き裂いてやりいという眼光でドルイドを睨んだ。