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Blutvergeltung…悲しみを与える報復

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Blutvergeltung…悲しみを与える報復

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第8章 和解などありえない・・・報復の殺し合い story1

 チムチムが十天君が来たことを知らせ、出口を目指している頃・・・。
「また魔女さんを盾にする気ですか?」
 壁ように守らせている王天君を真言が睨む。
「フン、悪いか?おい、魔女ども鬱陶しいあいつを片付けろ」
「がってん了解♪」
「あれが十天君か・・・うぅっ」
「どうしたグラキエス!?」
 駆けつけたとたんに苦しみ出す彼の傍に、誰よりも早くベルテハイトが駆け寄る。
「動けないならおんぶしてやろうか?」
 魂を抜かれてしまいそうな激痛に動けない彼の背をさする。
「俺の体が・・・あぁっ・・・あぁああぁあ!!」
 魔力が暴走しそうしてしまい、原型を留めないほど裂かれる死期を見せられ、地面を転がりながら苦しみもがく。
 そこに指や足があるような感覚も薄れ、気を失ってしまいそうな痛みだ。
「立つのだ主。敵前で膝をついては、まっさきに狙われてしまうぞ?」
「おいアウレウス、こんなに苦しんでいるのに、無理やり闘いの中に引き摺ろうというのか!」
 気休めにでもなるかと思い、ヒールや悪魔の妙薬を使ってみても正気に戻らない彼を心配しているのに、貴公は鬼か!というふうに怒鳴る。
「何を言っているベルテハイト。俺たちは遠足に来て具合悪くなった者を看病しているわけじゃないのだぞ」
 これも主のため・・・と厳しい態度で言う。
「ウフフ、情けないですねぇ?そのかわいそーな子から、ぶっ叩いてあげますぅ〜♪」
 ビシィイッ、ピシャァアッ。
 グラキエスを守ろうとベルテハイトが盾となり彼を守る。
「かわいいー毒虫ちゃんたちー。あのお兄さんをいじめてあげるですよぉ」
 ブビビビビィンッ。
「虫なら燃えやしてしまえばいいか」
「そんなことをしたら相手の思う壺だ、アウレウス!グラキエスに飛んできたらどうしてくれるっ。かわいそうなグラキエス、早く元気になってくれ」
 人目を気にせずぎゅっとハグをしてやり、パートナーを優しく撫でてやる。
「フフッ、僕たちのことは眼中にないって感じですね?」
 天神山は擲弾銃バルバロスで追い討ちをかけるように、彼らを銃弾の雨をプレゼントする。
「不老不死になった獣人か!」
 2人を守るためディフェンスシフトでガードし、レッドラインシールドで弾く。
「邪魔な盾の人ですね。でも・・・これは防いであげられませんよね」
 その身を蝕む妄執で死の幻影に落ちたグラキエスをさらに苦しめる。
「うぐぁああぁっ」
「私のグラキエスになんて仕打ちをっ!卑怯なやつめ」
 大切な弟をいじめれたと思いブチキレたベルテハイトは、こっちにこい!と怒る。
「その人が心配なら連れて来ればいいんじゃないですか?わざわざ僕が行ってやる必要ありませんし」
「くぅ〜っ、グラキエスを起こせないのを知ってて言ってるのか」
「だったら捨ててきてください」
「ふざけるな!捨てるどころか常に傍にいるのだからな」
「(敵の数が足りないな、どこかに潜んでいるのか?)」
 熱くなりすぎている彼とは対象的に、敵が死角に隠れているのではとアウレウスは回りを警戒する。
「(子供を狙う者は・・・全て排除する・・・)」
 東郷 新兵衛(とうごう・しんべえ)は対物ライフルの銃口を、外道の獣人に気を取られているアウレウスに向ける。
「アウレウスさん、木の上の辺りに誰かいます!」
 ディテクトエビルでスナイパーの気配に気づいたベアトリーチェが声を上げる。
「木だと・・・どこだ?」
 見つける間もなく、ズガァンッと銃声が轟く。
「(―・・・・・・仕留め損ねたか)」
 盾で防がれてしまうものの相手を吹っ飛ばすほどの凄まじい威力だ。
「やれやれ、グラキエスが正気に戻るまで時間稼ぎをしなければな」
 ゆらりと立ち上がった彼はベルテハイトの方を見て、主を守るので手一杯か・・・と森の中に潜んでいる新兵衛を探す。



「隠れていても殺気でわかりますよ」
 ベアトリーチェは王天君を守ろうとするハツネをちらりと見る。
「向こうはまだ動けそうにありませんね」
 その間に趙天君だけでも仕留めることが出来れば、とブリザードの吹雪で敵を凍らせようとする。
「ハツネ、こいつらは足止めかもしれねぇ。妖精を探しにいくぜ」
「うん・・・」
「今、おまえに動かれると面倒なんでな・・・」
「(十天君が行けば、魔女がついて行ってしまう・・・。大人しくしていろ・・・)」
 葛葉はメモ帳に書き彼女たちに見せる。
「ハツネ、やれ」
「わかった・・・王天君お姉ちゃんを困らせるヤツは壊すの・・・」
 ブラインドナイブスを黒龍に仕掛けようと背後を狙う。
「(光学迷彩で姿を隠しているようだが・・・)」
「なっ、何だと・・・」
 脳天を狙おうとするキリングドールの殺気に気づき、槍で防ごうとするが・・・。
「私の槍が・・・こんな幼い娘に落とされるとはっ」
 ダガー・タランチュラの刃に槍を弾き飛ばされる。
「(ヒロイックアサルトの力が効いたみたいなの)」
 少女は愉快そうにニタリと笑う。
「葛葉・・・私の光条兵器を!」
「(受け取れ・・・黒龍っ)」
「闇に生きる者相手に・・・、素手で戦うわけにはいかないからな」
「頭悪い・・・」
「―・・・だが、力だけの剣ならそっちのフリだろう・・・?」
 ぽそっと呟いたハツネの言葉に苛立ちながらも、相手の得物を落としてやろうと猛毒の刃を突く。
「ハツネが勝つの。負けるの・・・いや」
 悪疫のフラワシでふわりと病原体を撒き散らす。
「うっ・・・、空気を吸い込むと感染してしまうぞ」
 いくら先の先を読もうとも、病原体までは防ぎきれない。
「マーリン・・・私の治療はいいですから、弥十郎さんたちを治してあげてください」
「(向こうは無限にSPあるわけじゃないが、こっちも節約戦でいかねぇとな)」
 清浄化で毒に侵食された彼を治療してやる。
「これ以上、盾代わりにさせるわけにはっ」
 自分の苦しみなんて捨て駒扱いされている者の痛みに比べれば、と真言はタイムウォーカーに乗り込む。
「へっ、魔法が得意なのはおまえらだけじゃねぇんだよ」
 氷像のフラワシを炎の聖霊にガードさせ、歴戦の魔術で魔女たちを吹き飛ばす。
「やったわねぇ、この英霊!皆で仕返ししてやろうっ」
「あなた方がこれ以上傷つかないように、少し乱暴な手を使います。けれどこれ以上あなた方を傷つける者はわたしが許しません」
 きぃいいっと怒る魔女の身体に糸を絡ませた真言が縛り上げる。
「研究がしたいだけならば、ここじゃなくても良いでしょう・・・なぜそんなに彼らに協力したがるのですか。あなたたちにとってそんなにも魅力的な研究なのですか?」
「魔科学で住みやすい世界にしたくても、どーせ否定するやつばかりだもの。だったら自分たちでやったほうがいいし♪」
「それは・・・今のパラミタが好きだから変えられたくないっていう人もいるかもしれませんけど・・・」
「でしょ!?そんなやつら説得する時間があったら、勝手にやるほうが時間の節約よ♪それにー、今のパラミタってなんか戦争ばっかでいやなんだもの。そんなやつら、私たちの力でぶっつぶしてやりたいの」
「感情があれば衝突もありますし・・・。なくなることはないでしょうね。私も争いごとはあまり好みません・・・」
 良いことに力を使おうとしているのか、と真言は魔女の話を聞きながら考える。
「十天君もそうだったから、そっちについたのよ。金光聖母の知恵を借りて不老不死にもなりたいし♪」
「不老不死になるとしたら・・・他の命を犠牲にしてしまうものですか?」
「えぇそうよ。その辺りの死体でもいいしー。どうせ死んでるなら、好きに使ってもいいでしょ?研究所で使ってたやつなんてさ、森に迷ったバカの死体よ」
「バカって・・・死んだ者に鞭打つような、言い方ってないじゃないですか!好き好んで命を落としたわけじゃない人だっているはずです」
「はぁ〜?だって森に入らなきゃいいのに。勝手に入ったほうがバカじゃん。ばーかばぁーか♪きゃはははっ」
「―・・・・・・っ。(ここで怒っては私の負けですね)」
 怒りを爆発させそうになりながらも真言は必死に堪える。
「あれだよ、真言さん。悪い友達が出来たら、その人も悪くなっちゃうみたいな感じかも?」
「そう・・・ですよね。魔女さんたちを十天君から引き離して・・・それから・・・・・・」
「おっ、さすがの真言も怒ったか?ビンタでもするか?」
 マーリンが横から口を挟むように、冗談混じりに言いへらっと笑う。
「いえ・・・・・・少しお説教はすると思います」
「そのほうがドギツイかもな」
 半日は確実に永遠と説教していそうだ、と彼はご愁傷様と魔女を見る。
「(うーん、術を使う気配がないね。あのお侍さんがいるから必要ないって思われてるかな?)」
 十天君の2人を護衛している鍬次郎を見つめ、どうしたもんかと弥十郎は考え込む。
「ねぇ、おっさん。どうすれば発動させてくれるかな」
「うーむ・・・・・・。どうするべきか」
「つまり、分からないんだね?」
 どうやって紅水陣を発動させようか弥十郎は策を練る。



 弥十郎が対策を練っている一方では、ガードラインで2人の十天君を守っている鍬次郎が、ベアトリーチェのブリザードのせいで苦戦を強いられている。
「何もしないままだと凍結してしまいますよ?」
「ちっ、いい気になりやがって。おい、何をしている葛葉。さっさとあの女を片付けろ」
「やっぱりこういう人は、僕が相手をしなきゃいけませんね」
 擲弾銃を撃ち鳴らしながら、痛覚すらも無くなった天神山がベアトリーチェを仕留めようと狙う。
「そんな・・・私の魔法が効かないなんて!?」
「効いていますよ?でも、痛覚も死もない僕相手には無意味なんですよ」
「―・・・っ。(このままじゃ美羽さんが!)」
 吹雪を止められてしまい、たった1人で趙天君と戦っている美羽を守ろうとするが、不老不死となった獣に阻まれる。
「ブリザードが止った・・・?ベアトリーチェはっ!?」
「人の心配するより、自分の心配をしたらどうだ?その女なら、葛葉が遊んでやってるぜ」
「皆さんはその方々のお相手をしてさしあげてください。妖精を逃すわけにはいきませんから」
 そう言うと金光聖母は横倉 右天(よこくら・うてん)たちを連れて獲物を追いかける。
「いったい何人殺せば気が済むの!?」
「ハッ!その言葉、そのままおまえらに返すぜ?」
 ガガガ・・・ッガリガリガガガッ。
 黒刀の先を岩に滑らせ、赤々と刀身に炎を纏わせる。
「―・・・爆炎波?」
「ちげぇよ・・・」
「炎が消えない・・・何なの、その刀は!?」
 2メートルの大剣で間髪防ぐものの、刀身を刃先で撫でられところが突然燃えだす。
「魔女たちが作ったやつだ・・・俺専用のなっ」
「そのノコギリみたいな刃の摩擦で着火させているのね・・・」
 バーストダッシュで彼との間合いを取り、光条兵器を振り炎を消した。
「タネが分かろうとも、戦況は変わらねぇぜ。―・・・くっ、まだ他のやつがいるのか」
 足元に発砲されてしまったが、殺気看破のおかげでギリギリかわせた。
「はぁ・・・いっそ、足を撃ってしまいたいですね。何で足元だけなんですか?」
「リボンのお嬢はんが、このお人の盆踊りを見たいからちゃう?もうそんな季節やし」
 不満そうに言う雪吾に礼青がボケで思考を瞬間冷却させる。
「おまえから撃ちたい気分だな」
「えー、うちは遠慮させてもらいます〜」
「十天君を殺したいなら、回りのやつを動けなくしたほうが面倒はなさそうだけどな。手足折ってそのへん吊るしておけば、殺しじゃないな?」
 無論食事だとかは知らない、と放置する気満々で言う。
「そこの黒髪のおまえ・・・殺すよりもひでーこと考えやがるな」
「殺人は好みませんけど・・・。生かしておくだけならそれでもいいんじゃないんですかってことです。特にこいつとか」
「うちがターゲットなんか?」
「こいつと契約してから、ろくでもないことばかり遭遇するしな。このろくでなし」
「おもろい景色見れるからえぇないの〜」
「家に帰ったら覚えておけ。的にしてやる・・・」
「どっちかっていうと、おまえってこっち側な気もするがな?」
 どうしてそんなやつらに協力してんだか、と鍬次郎はクククッと可笑しそうに言う。
「争い事も面倒なんでキライなんですよね」
「そいつは残念だな。俺の仕事の邪魔するならそのメガネの女同様、どうなってもしらねぇぜ」
 天神山に追い回されてこっちに来れないベアトリーチェを愉快そうに眺める。
「へぇ〜・・・ほな、ちょいお手合わせお願いしまひょか」
「(こいつ、美羽くらい速くねぇか!?)」
 礼青に一瞬で間合いを詰められ、長剣の刃を受け流す。
「(だが・・・・・・っ)」
 シュッ。
「二刀流なんて怖いどすなぁ〜」
「ちっ、何が怖いだ・・・」
 簡単に鞘で防がれてしまった鍬次郎は不快な顔をする。
 ザザザァアアッ。
 飛び退いた彼は趙天君の元へ行こうとするが・・・。
「しつけぇ野郎だっ」
「うちも殺しはキライなんやけど、うちのパートナーみたいなエグイ感じちゃいますよ?」
 深く沈んだ礼青は長剣で黒刀ごと彼を森の方へ押し飛ばす。
「殺しを見て見ぬフリをするのは同罪だと思うが?」
「いや〜研究所の魔女はんたちはちょいと可哀想やったけどなぁ。せやけど、十天君は別や・・・」
「ほぅ、なぜだ?」
「何度しばいても、自己中で妙な実験をやめへんからなぁ」
「不老不死や魔科学のことか・・・。だが、契約者の名において、やらせねぇぜ」
 ジュボ・・・ッ。
 腰の鞘で着火させ、片手平突きをくらわそうと腕を狙う。
「日本の剣術ってやつどすか〜?突きで確実に相手を刺し殺す感じやねぇ〜」
「あぁ、幕末の乱世で生まれた技だからな。おまえのほうもそうだろ?」
 紙一重で炎すらもかわし、すぐさま仕掛けるカウンターのような剣技も、殺傷するためのものじゃないかと言う。
「さぁ〜どうやろうなぁ?」
「こっちのことは聞いておいて言わねぇ気か。フンッ、まぁいい・・・」
 戦いもいいが・・・。
 美羽とまだサシの状態の趙天君が、他のヤツに狙われない保証はねぇな。
 こいつと遠くから狙っている黒髪のガキを、どう引き離してやろうか・・・。