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手の届く果て

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手の届く果て

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★エピローグ



 熱病は収束に向かった――。
 迷宮に参加した契約者――知識を得たがっていた者全て――が手にした特効薬の調合により、それぞれが元に開発を行えた。
 それは1人が開発するよりも競うようなスピーディさがあり、時間も予想よりも早く上回っていた。



「ねえ、ベル。私達の居場所は日のあたるとことなってしまったわ」
 膝枕したベルの髪の毛を梳きながら、リーシャは呟くように言った。
「逃げて逃げて逃げて、ようやく辿り着いた果てで、また、晒してしまったわ。私を、ベルを、2人だけの世界を――」
「大丈夫、大丈夫だよ、リーシャ。その優しさが、暖かいから――。太陽の光なんて、比べ物にならないほど、暖かいから――」

 ――わたしのお父さんはね、お金がなくてここに逃げ込んだんだって。
 ――昔、聞いた話。
 ――何日も追われ、逃げて、逃げて、追手の恐怖を背中で感じながら。
 ――疲れ果てて、それでも恐怖が足を動かしていたある日。
 ――人の手によって傷付けられた犬を見つけたの。
 ――この期に及んで、神もいないのに、犬なんか信じるに値しない。
 ――それでも、お父さんは犬を治療してあげたわ。
 ――唯一持ちだした救急箱から出来る限りの手当をして、犬を動ける様にしてから、また逃げた。
 ――逃げて、逃げて、逃げて。
 ――大雨の日、視界も悪くぬかるんだ地で足を滑らせ、洞窟で休めていたお父さんは、雨水を啜って、空腹をまぎらわしていたの。
 ――そこに、

「……ワンちゃんが?」

 ――ウン。
 ――このお家にある絵本のような、出来すぎたお話。
 ――わたし達には手の届かない、明るいお話。
 ――そして、わたしの手が触れるところにいるリーシャは、そんな優しくて暖かいお友達。
 ――だから、そんな出来すぎたお話の中心にリーシャがいたのが、凄く、嬉しい。

「ベルもいたわ」

 ――うん。わたし達ならどこまでもいける。そしてわたし達も、



 ――見捨てない。



(お終い)




担当マスターより

▼担当マスター

せく

▼マスターコメント

皆様、お疲れ様でした。
今回で復帰2作目、通算6作目と相成りました、せくです。

6作も手掛け、そろそろ私というGM像をお見せできるのか、そんな不安に駆られることもしばしばですが、
皆様に楽しんでいただけますよう願い、これをマスターコメントとし、この項を埋めさせていただきます。

また会える日を心からお待ちしています。
それでは、失礼します。