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手の届く果て

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手の届く果て

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――迷宮内・第三階層――



「あれは、もしかしてレオンさん達の物ではぁ?」
 第三階層に入り、1つ目の角を左に折れ、目の前に十字路が見える丁度その交差点に、深緑のリュックが落ちていた。
 救出隊に同行し、ダークビジョンで目を凝らしていたルーシェリア・クレセント(るーしぇりあ・くれせんと)は、真っ先に駆けた。
 それは救出隊にとっても願ってもないことで――なぜなら第三階層に入った途端、式神から送られてくる途切れ途切れの画像が黒一色になり始めて焦っていたから――彼らも周囲を十分に警戒したのち、ルーシェリアに近づいて行った。
 式神は口の開いたリュックに、狭いところが好きなような猫のようにすっぽりと入って、身動きがとれなくなっていたのだ。
 ルーシェリアは地面をコンコンと叩いて叫んでみた。
「もしもぉし、レオンさん達はいらっしゃいますかぁ〜?」
 ――おおッ!? 救出にきてくれたか!?
 ホッとフィリップが胸を撫で下ろした。
 ようやく見つけることができたのだ。
 ルーシェリアはサイコキネシスで落とし穴の閉じた蓋を強引に開けると、ロープを垂らした。
 辺りにロープを固定できる物も場所もなかったので、総掛かりでロープを持っての救出である。
「それにしても……ッ、んん〜〜ッ、レオンさん達を罠に嵌め、たッ……んッ、女の子ッはッ……、気になりますッ、ねぇぇ〜ッ」
 うんしょ、うんしょ、と最前列でロープを支えるルーシェリアは、必死に支えながら言った。
「ああッ……へへッ、会ったら……、お仕置き、だなッ!」
 ロープを登りながら喋るレオンは、救出間近の安堵感からか声に張りが出ていた。
 レオンの上半身が丁度穴から出たとき、通路の影から何かが伸びた。
「――ッ!」
 振り返ったレオンは――救出に当たっていた全てのメンバーも――ぎょっと目を見開いた。
 ――ゴーレムだッ!

「構えぇッ!」
 そのゴーレムと対する通路の先――護達が辿り着いてきた。
 護の号令で聖は自前のハンドガンを構えた。
「……敵勢力の排除支援を開始します」
 スプレーショットでの一掃射撃がゴーレムの巨大な石の身体とぶつかり、削れた部分が煙のように燻った。
 グラリ――ッ。
 ゴーレムの巨体が揺らいだ。
「今だッ!」
「レオンには指一本触れさせやしねぇ!」
 北斗がブレードを手に、ゴーレムに向かって駆けた。
 ブオンッ――!
 風斬り音が凄まじいラリアット気味のパンチを dい潜り、北斗は飛びあがった。
「足腰鍛えて……出直してこいッ!」
 大きく振りかぶって二度クロスさせるように袈裟斬り、そして、勢いに任せて突いた。
 軸がブレたゴーレムは言葉通り立っていることができず、そのまま天井を仰ぐように音をたてて倒れた。
「後方支援部総合支援課、天海護、北斗、聖、只今指定のポイントに到着であります!」
 3人が並んで敬礼し、ようやく救出に関わる全ては終わりを迎えたのだ。
「お怪我は……?」
 担ぎあげられ、ようやくまともな地面に腰を落ち着けたレオンに護が声をかけた。
「平気だ。助かったよ」
 差し出されたその手を固く握った。
「レオンッ!? 大丈夫だったか!?」
 その2人の握手を離したのが北斗の熱い抱擁であり、拍子に尻もちをついた護は――愛は偉大だね――と心の中で微笑んだ。

「こちら救出隊の島津。無事レオン様を保護しましたわ。どうか皆様、お気をつけて探索を」
 この迷宮は広い。
 それは幾年もの長い年月をかけても、全てを解き明かせないほどに、
 ――広いのだ。