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囚われの君を助けろ!

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囚われの君を助けろ!

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The 捜査!

 
 ここはとあるキャバクラ。
 一件、普通に見えるキャバクラでは有ったが――。
 表立って云えぬような事が行われていた。
 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)は防音され鉄格子によって閉ざされた部屋‥‥別名『特別室』で男たち――このキャバクラの上客達に囲まれていた。
 鎖につながれぐったりとした様子のアリア――数日に渡る辱めにより体力と精神を消耗しきり、体はすえた臭がしている。
 数日前――偶々、街を歩いている所にぶつけられ、因縁を付けられて膨大な借金を背負わされ此処へ無理矢理連れてこられていた。
「いやあぁぁぁん!」
 連れてこられたアリアの絶叫が反響するが、それは客である男達の興奮を高める結果になっただけだった。
「もうやめて……い、やあぁああん!」
 着ていた服を無理矢理に引き千切り、四肢を拘束され、辱めを受けていた。
 これは序の口であった。手足に枷を付けられ、『接客』させられていた。
「ん、ああぁぁん!」
 『営業』が終わると、地下でスクール水着やコスプレさせられて『撮影』が行われていた。
 気が失うと、地下の寝床へと置かれる日々であった。
 そして今――。
「おい、起きろ!」
「あ…う……」
 虚ろな目で、男を見上げるアリアは何時の間にか印が増え、模様のように文字がマジックで書かれていた。
 そしてまた、男達への『接客』が始まった。
 
 一方、表向きの店内では――
「ちょっと抵抗があったけど……意外にキャバクラ嬢、向いてるかも」
 『シャンバラ教導団中尉』の水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)とパートナーのマリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)は団長の命をうけてキャバクラへとここ数日ほど潜入捜査――内調をしていた。
 キャバクラ嬢というのに抵抗は有ったものの、普段は着る事がないセクシーな服を着て、ソレっぽいメイクをすると普段の自分とは違う姿に新鮮さに感心した水原であった。
「ゆかりさーん、ご指名だヨー」
「はーい……ふふっ」
 不法就業しているボーイのジャンが水原を呼ぶ。
 人気が出て、機嫌がいい水原。そう、セクシーさと清楚な雰囲気というので引っ張りだこであった。
 呼び出されたお客さんの方へと向かいつつ、全体の構造はもとより、隠しの監視カメラやボーイの配置、用心棒のいる場所を確認しながら進む。
「マリちゃーん、ご指名だヨー」
 マリエッタも女子高生の様な軽くてノリの良い陽気な接客で人気を博していた。
「極度の疲労……それによる思考の低下……逃亡防止の為でしょうか……」
 マリエッタはその軽いノリを生かして、同僚に話しかけたり、手相占いといってさり気なく健康状態をチェックしていた。
 もちろん、それだけではなかった。
「ゆかりさん」
 接客を終え、控え場に戻ろうとする水原を捕まえたのはボーイのジャンであった。
「ふふ……どうしました?」
 頬を染めているジャンに妖しく首に垂れかかる水原。
 個室へと移動する二人の影――。それを悲しそうに見つめるマリエッタ。
そして、一時の後。
「これ、リチャードの事ネ……ミーはこれからまた仕事ネ」
「ふふ……ありがとう」
 ジャンはリチャードや周りのことについてまとめたレポートをベッドサイドに置くと、名残惜しそう部屋を出ていった。
「……なにもそこまでやらなくても」
 入れ替わりで入ってきたマリエッタが身支度をしている水原に辛そうに話しかける。
「……任務ですから……」
「……無理はしないで」
 任務と、言う水原に願うように無理を諌めるように言うマリエッタであった。
 
サラリーマンに扮して多少ぎこちない大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)源 鉄心(みなもと・てっしん)は客としてこの店に潜入捜査を行うことにした。
 大洞はパートナーである鮎川 望美(あゆかわ・のぞみ)と同伴と言う形でお店にやってきた。
 前の店からの常連だというと、疑われることもなく二人は店の中へ入ることに成功した。
 そのまま、大洞と望美はそこで別れ、大洞はボックス席へ移動した。
「よろしくー♪」
「よろしくであ……よろしくっ」
「お客さん、おかしー♪ キャハハ♪」
 あります口調が抜けない大洞と、それを可笑しそうにしているそのふくよかな胸を強調するようなドレスを着た嬢。
「お客さん♪」
 嬢はそう言うと、積極的に大洞の手を掴むと大胆にも胸元へ滑りこませた。
「おっ……」
「ふふっ……」
 妖艶な表情をさせる積極的な嬢に面食らいながらも、焼酎を入れつつ、嬢といちゃつきながらもお店ことや、他の客や嬢の情報を聞き出していた。
「ばいばいーい」
二セット目突入、新しい嬢とチェンジとなった。
「……よろしくです」
「よろしくっ!」
 打って変わって少しおとなしそうな嬢にチェンジしたが、違和感を感じた大洞は冷静に嬢を分析する。
 よく見てみると、どうやら、打ち身らしき痣がドレスの長袖からちらりと見えた。
「ハハッ、君は――」
「!?……ッ」
 そう言うと、ビクッと怯え身構えたようにも見えた。
「――大丈夫か?」
「……あ、はい」
 どうやら――話を聞いてみると、病気の弟のために借金を背負い法外な利子を返せるまで『住み込み』で働いているとの事だった。
 そういった境遇の嬢が少ないことと言う情報を手に入れることが出来た。
 三セット目――
 どうやら、集められるだけの情報は手に入れられたようだった。

 一方、望美の方は――
 メイド衣装――と言っても、胸元開けていて強調されミニスカートなスタイルで客を接待していた。
「いつもはどんな感じなのですか?」
「フヒヒッ……色々、とだよ。フヒッ」
 脂ぎった中年オヤジが徐ろに望美の胸元へ腕を差し入れる。
「いやぁん、おいたはダメよ♪」
「……」
 スタンガンで眠らせ、寄りかかるような格好をさせ偽装する。
 時間が来て、他の客へと移動する事となった。
 その後、客から店の実態――碌でもなかった悪虐非道な実態を聞き出し――精神感応で外に待機していた教導団へ情報を送るのであった。

 一方、『シャンバラ教導団上級曹長』の源 鉄心(みなもと・てっしん)はパートナーであるティー・ティー(てぃー・てぃー)が既に嬢として潜入している為、単独での来店となった。
 ちらっと、パネルを一瞥すると――。
「ティーと言う子を頼む」
「アイヤー、ワカッタねー」
 源氏名に思えない、名前の源氏名だったので源氏名と口元を隠したパネルでティーだったことを確認して指名した。
 席で待つこと数分、現われたティーの姿――何時もとは違う装いに驚きながら店の様子を聞く――。
 
 辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)泉 椿(いずみ・つばき)ハンス・ベルンハルト(はんす・べるんはると)は用心棒として店に雇われていた。
 辿楼院は裏稼業の一環として、店長のリチャードから依頼を請けて用心棒として店の――地下への入り口を守っていた。
 スキル『隠形の術』を使って身を隠し、許可無く地下へ行く人間がないか監視を怠らず行なっていた。

 一方、泉は用心棒という形では雇われていたものの同じパラ実の悪事を放っておけず、地下にいるだろう嬢の救出をする――潜入捜査側であった。
 既に地下入り口は辿楼院が守っている為、泉は店内での用心棒の役割と行うこととなっていた。

「ミナ、嬢になるっておまえ13……」
 泉が用心棒として売り込みをかける時、パートナーであるミナ・エロマ(みな・えろま)は嬢として応募をしようとしていたが、泉に突っ込まれていた。
「大丈夫ですわ。多少、小柄なだけですわ」
 あっさりと嬢として潜入出来たミナであった。リチャードにしてみれば金になれば問題無いようであった。
「子供じゃありませんわ、18ですのよ? 疑うならあんなことやこんなことについての知識を披露しますけど?」
 バニースーツに小柄なことから一部から人気があり、指名もそれなりにあった。
「嬢をいたぶりながら荒稼ぎとはいい趣味ですわね……やめられなくなるのも無理ありませんわ」
 休憩時間の合間や営業終了後に『撮影』の様子を盗撮していた。

ハンス・ベルンハルト(はんす・べるんはると)はマシンピストルを懐に隠し、辺りを警戒している。こちらを伺うような動きもあったが事に及んでいないので警戒するのにとどめておいた。
 店員として潜入しているのは佐野 和輝(さの・かずき)瀬山 裕輝(せやま・ひろき)だった、
佐野 和輝(さの・かずき)は表向き捜査側で有ったが、別の依頼を受けて、参加していた。
「大方、火遊びをして痛い目を見てしまったということか……そして、醜態を晒す前に極秘裏に回収したいと……、」
 それは、とある組織の幹部の娘がリチャードの店に借金のカタ――ホスト遊びのツケで連れてこられというものだった。
 今でも佐野の脳裏には慌てていた幹部の様子が鮮明に思い出させる。
 こうして、佐野は店員――ボーイとしてリチャードの店へと潜入するのであった。

 「はいはい、お客様、必要以上のセクシャルなハラスメントはお止めくださいっちゅー事くらいわかるやんなぁ……?」
眠るように崩れ落ちる客、客を極めたのは瀬山 裕輝(せやま・ひろき)、ボーイとして潜入、と言うよりもその用心棒っぽい武闘派っぷりはある意味、店の治安を維持していた。
 流石にいかがわしいキャバクラ云えども『特別室』の様なVIPルームでも無い限りある程度の制限はつきものだ。
 瀬山は一般の嬢に対する極度に嫌がる場合、客を抑制する立場であった。
 
 様々な生徒が客や嬢――もしくは用心棒や店員として潜入していた。
 さて、そんな大人数の潜入を取りまとめている場所があった。
「情報、ありがとうございます」
「こちら対策室――」
 とある一室――壁に掲げられているのは『摘発本部』と書かれており、そこで潜入した生徒達と情報の交換と連携を行なっていたのは『金鋭峰の剣』のルカルカ・ルー(るかるか・るー)
『シャンバラ教導団大尉』のクレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)が中心となって動いていた。教導団の生徒を中心に潜入した各生徒たちの情報が入ってくる。
 クレアは思案していた――手紙の差出人の置かれた立場と、差し出された意図について。
 (誰でもいいから道ゆく人に拾ってもらおうという意図で書かれたなら,暗号にはせずもっとシンプルに「たすけて」とかいうようなものになるはずだ)
 手紙を持ち込んだのは差出人の友人からだったのが、調査によって判明した。
「しかし検閲があったとすれば,さすがにこの内容で気がつかんとも思えん。とすれば,捜査が入ることを見越して対策済み,か?」
 クレアはそう考えると、パートナーたちの展開についても再度、練り直すのだった。
 皆の調査の裏付けと持ち込んだ友人の情報から――失踪者名簿に載っていた少女だった。
「ふむ‥‥となると、最近、失踪した人間もいるかも知れないな」
「後は――潜入組と踏み込みによる証拠確保ですね」
 念のために、ルカは警察に人員を要請しておく。
 ガサ入れ組が動く――捜査まで後わずか。